『着色・保存料は一切使用しておりません』




「染めないのか」

覆い被さってくる逞しい体躯の背に腕を廻しながら、問う。
唐突に切り出した俺を訝しんでか、それとも何が言いたいのか判らなかったのか
恐らく後者だろう、真上から「何が?」と返事がある。

「よく、絡まれてただろ」

あちこちにキスを落とす薄い唇を適度に受けながら、
目の醒めるようなセルリアンブルーの髪を指で弄り、その鮮やかな色を指す。
地毛だ。
昔から鬼柳は、この髪の所為でガラの悪い連中に目を付けられ易く
吹っかけられた喧嘩は数え切れない。

「あ゛〜…。まぁ、ジャックほどじゃねーよ」
「そうだな」

俺の左腕を取り、指先から肘、二の腕へと舌を這わせる鬼柳の、脹脛を足の先で撫で
確かに金髪のジャックの方が、殊更喧嘩の押し売りをされていた事を思い出す。
律儀に全て買っていた奇特さに感心すらした。
けれど目の前で卑猥な笑みを浮かべる男は、一度たりともその手の喧嘩には乗らなかった。
寧ろ憐れみを込めた視線で以って一瞥を送るだけで、相手にもせず
それが尚更向こうの感情を逆撫でし、こっちにまで余計な火の粉が降りかかってきたのは
一度や二度ではない。
だから、聞いたのだ。
染めないのか、と。

「ンだよ?この色まで変わっちまっていいのか?好きなんだろ?」
「……っあ」

無造作に伸ばした手で俺のペニスを掴んだ鬼柳が
暗に瞳の事を指し(要するにダークシグナーになった事を、だ)
加えて、密かに俺がその髪の色を気に入っている事まで指摘してきた。
さすがに内心穏やかでなくなり、咄嗟に何か言い訳しようと考えるが
それを邪魔するように鬼柳の愛撫が激しくなる。

「、んぁっ…、……そ、れはっ…、、」
「あ?何だって?よく聞こえねェなァ」
「ッく、…ン…っ!」

根元から何度も扱かれ、腹まで反り返って嬉しそうに透明な先走りを垂らすペニスの裏筋を
指で強く擦り上げられると、ソレに弱い俺は堪らず腰を揺らし声を出す。
良いように黙らされたのが悔しくて、自分も右手を伸ばして鬼柳の股間をまさぐると
既に脈打つまでに熱くなっている牡に触れた。

お前も、その余裕そうな顔を焦りに歪めればいいんだ。

「ッハ!面白ェことしてンなァ。まぁ精々オレが突っ込むまでにマックスにしといてくれよ」
「っ!、言っ…てろ…ッ、絶対、先にイかせて……やる…!」

そう豪語したものの、俺が頑張っている間に鬼柳が大人しくしている筈も無く
寧ろ気分が乗ってきたのか、利き手での愛撫はそのままに
ネロ…と反対の指を自ら舐めて湿らせると
奥のアナルに塗り付け、太さ的に恐らく中指を捻じ込んでくる。
一瞬の違和感を我慢すれば、慣れた感触は奥まで入り
探るようにグッ、グッと内壁を押し始め、言わずもがな「泣き所」を狙っているのだ。
負けじと俺の方も鬼柳の牡に絡めた指を駆使し、亀頭や鈴口を攻め立て
順調に硬さを増していくのを感触で知る。
…それにしても、

「やっぱり、大きい、な…」
「お褒めに預かり光栄で。これがもうすぐテメェの中に入るンだぜ?」
「…う、、判ってる…、…ッ!」

思わず本音をこぼすと、すかさず意地悪そうな声が返ってきて
慌てて愛撫を再開させようとするが、タイミングよく鬼柳の指が「泣き所」を捉え
完全に不意を突かれた俺は処女のように仰け反って悶える。
同じことを思ったのか、ニヤリと鬼畜な笑みを浮かべた男が
「処女みてェ…スゲェ喰い付き」とか何とか言いながら、グリグリと同じ場所をつついて来る。
そうされると、もう駄目だ、スイッチが入った。

「あっ…ぅ、京・介…!もっと…、強く、、!」
「へーへー、相変わらずの淫乱ぶりだな」
「ッ、お前が、こういう…ふうにっ…したん、…だろッ」
「クク…否定はしねーな」

しれっと涼しい顔で言いのける鬼柳に夢中で縋り付いて腰を擦り寄せ
早くもっとデカいものを突っ込んでくれと急かすと、咽喉で哂われ指を引き抜かれる。
途端に物欲しげにヒクヒクと収縮を繰り返すアナルが自分でも判り
それを見せ付けるように両脚をM字に開いて
鬼柳が挿れやすいよう、両手を使って穴を左右に広げる。
いつだったか鬼柳に言われてやり始めた事だ。
誘う仕草をすると、鬼柳は悦ぶ。

「良ク出来マシタ。…望み通り、ご褒美をやるよ」
「、、ひっ…ああァ!」

したり、満足気に口端を吊り上げ、俺の太腿を掴み一気に貫いて来た鬼柳の腰に肢を絡め
齎された圧迫と痛みと充足感に身震いする。
息もつかせず腰を動かし始める鬼柳に揺さ振られると、ベッドがギシギシと軋み
眩暈がする程欲情した俺は、一気にブワリと汗をかいた。

「っあ、っあ、っあ…!んぅッ」
「で、話戻すけどよ。染めていいのか?」
「ひっ、ン…!あッあっ、ダメ…ッだ…!」
「あっそう。テメェはつくづく、我侭なヤツだな」

脱線していた話題を態々連れ戻した鬼柳に
自分から提案したことを即座に却下すると、心底呆れた顔が見下ろしてくる。
アア、その通り、俺は我侭だ。身勝手だ。別にいいだろ。
けど俺の我侭は今に始まったことじゃない。
それを知らない鬼柳ではないから、既に気にした風もなく
激しい律動で俺を突き上げながら、髪を掴んでキスしてくる。
興味はもう他の所に移ったらしい。
これだから鬼柳は助かる。
合わせて俺も舌を絡め、唾液を飲み
後ろのイイ所に鬼柳の硬い先が当たるよう腰を揺らす。
獣染みた息遣いでセックスの快楽を堪能しながら
この時間が永久ではない事を知っている理性で
ならばもっと仮初であれ本能的な絶頂を迎えたいと、過激に喘ぎ声を出し
自らの勃起した性器を無心に自慰した。

「ふっ、は…ッ…イイ!京介っ、あっ、キモチ、…イッ!」
「っ、まだ、イクなよ?我慢してろ…イイ感じに、締めてきやがる…っ」
「んぁッあ、んっんっ…!」

言われたとおり、扱いていた手を止め、鈴口に蓋をするように親指を宛がい
射精しないようにと腹に力を入れると、それが程好く鬼柳を悦ばせているらしく
僅かばかり膨張した熱が速いリズムで出入りする。
いつのまにか片足を担ぎ上げられ、奥まで小刻みに揺すられると
ガクガクと躯の力も思考力も崩れ落ち、覆い被さる鬼柳から
汗の滴が落ちてきた感覚にすら興奮を覚えた。
寧ろそれを舐めたい。
自分がこんな変態的な性癖だと判ったのは、鬼柳と最初に交わった時からだ。
汗だけでなく、四つん這いで足を舐めたり
その足で頭や股間を踏まれて射精した事もある。
そこで漸く、どうやらマゾっ気があるのだと自覚すれば、「今更気付いたのか」と鼻で哂われた。
そこらへんがもう、鬼柳の掌で転がされているのを証明している。
別に構わないが。

「うっあ…!も、ダメ…だ!イク、、ッ」
「っく…!」

弱い所を何度も突かれ続け、耐え切れず射精すると
そのタイミングを待っていたかのように、鬼柳は奥まで腰を進め
勢い良く中出しした。
微温い感覚が奥で広がる。
飲み込むように引き絞ると、ズルリと音を立てて鬼柳が性器を引き抜く。
その感覚に身震いしながら、誘うように上目で見上げれば
ニヤリと厭らしい笑みを作った鬼柳に「四つん這いでケツを向けろ」と命令され
躊躇いなくノロノロと四つ足で這い尻を高く上げた。
鬼柳とのセックスが一回で終わった例はない。
今回も例外なく、第二ラウンド突入だ。

「…、早く、挿れろよ…」
「あぁ。そうだ遊星、これ終わったら、染めるからな」
「!!」

待ち侘びる俺のアナルに熱いペニスを捻じ込みながら
同時に鬼柳が囁いた嫌がらせにも似た科白。
他でもない、鬼柳が相当天邪鬼なことを、すっかり忘れていた…

 

 

【終】


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あとがき

意味不明。ラブラブ過ぎた…
何色に染めよう…やっぱり黒かな?

。いた。

2009/04/11