※筆頭お一人様による、ぬるい自慰行為がありますので、ご注意を!


 

 

『愛想もこそも尽き果てぬ』

 


「…幸村が居ねェ」


幸村が座敷に居ないと、伊達が気付いたのは早かった。
殆ど寝間と化した室内には乱れた褥と微かな残り香だけがある。


「…Report…、Report Now!」


急降下した機嫌を取り繕う気もないのか、張り上げた怒声は凄まじく
すぐさま城中の者達が飛んで来て、伊達は適当に一番近くの者の衿首をひっ掴まえると
手加減なく絞め吊り上げながら、
「ハァー… 意味わかんねェ、居ねぇとかありえねーだろ…なァ?」
轟くような低音で唸り、再び異国語で問いただす。
しかしその者は伊達の言葉の意味が理解できなかったか、それとも幸村の行方など知る由もなかったか
どちらにせよ、首が絞まってどうにもならず、報告どころではない。泡すら吹いている。
周囲の者達がオロオロと手を拱いていると、少し遅れて片倉が到着し
ホッと安堵するのも束の間、ドン!と鈍い音が響き、何事かと見遣れば
片倉の腹に伊達の右脚が埋まっており、滅多に崩れない筈の強面の眉が深く顰められていた。
それだけで余程な衝撃の蹴りであった事が知れるのだが
手出しなど出来る筈もなく、固唾を呑んで見守っていると
伊達が絞め上げていた者を無造作に落とし(其奴は白目を剥き失禁していた)
「…遅ェ。テメェが一番に来ねェでどうする、Idiot」と吐き捨て脚を下ろす。


「申し開きもなく、政宗様…」
「Well?見張り番はどこ行きやがった?」
「それが、姿を消しておりまして、行方が判りませぬ」


然り、そもそも其の見張り番を座敷から退けたのは片倉であるからして
よもやそれが明るみになろうものなら、片倉に追求の矢が飛んで来るのは当然であり
まず不審に思わない筈がない伊達に詰問されれば、全てを芋蔓式に白状せねばならなくなる。
そんな愚にもつかぬ事態にならぬよう、「二度と戻って来るな」と
すぐに見張り番も逃がしていたのだ、此処に居てもらっては困る。


「Ha、そーかよ。見張りもまともに出来ねぇクズの目玉をくりぬいてやりたかったンだが
 Hmm…急に故郷でも恋しくなったか?クク…それとも…」


俄か、何もかもを見通した鋭い隻眼がこちらを射抜くのではなかろうかと、片倉は思わず身構えたが


「まぁ、ンなこたァどうでもいい。問題は幸村だ」
「…はっ!」
「オレぁもう半日もアイツの可愛い顔を見てねェんだ…狂っちまいそうだぜ…
 Shit、こんな事なら治水の視察なんぞテメェに行かせりゃ良かった。そうだろ?
 …で?アイツは今どこに居る?まさかこんな夜中に山へお散歩って訳じゃねェよな?
 もし怪我でもしてたらオレぁ発狂するぜ?」
「……恐れながら、真田は我らの裏をかき、まだ城内に潜伏しているものかと…」
「Ahh−なるほどな、それじゃ隠れんぼって訳だ。安心したぜ。OKOK、興じてやろうじゃあねェか」


片倉の進言に納得したのか、鬼気せまる様相が一転、いやに気侭に宣うと、更に続けて


「Hey guys、家捜しすんぞー」


まるで城のどこかにある骨董品を探し当てるぞと云わんばかりに
意気揚々とした声を掛け、手近な襖を次々と開け放ちだした。
ビクビクと様子を窺いうろたえていた者達は、自分達にお咎めがないのだと知るや否や
我も我もと、そこかしこの引戸や障子を開けて廻り
ほんの小さな物陰や押入れの中まで悉く検め始める。
片倉はほんの小さく息をつき、まずは第一関門を突破できた事に胸を撫で下ろしつつ
次はどれだけこの茶番劇で時間を稼げるかが肝要だと気を引き締め直し
さしあたって、主から怪しまれぬよう夜中の隠れん坊大会に参加すべく、襷で袖を紮げた。

そうして一刻も経った頃だろうか、「ぎゃああ!」という凄まじい悲鳴が突如として響き渡り
何事かと顔を上げた片倉は、寸後、まさか…という嫌な予感を覚え、廊下を小走りに急ぐ。
そして視界に飛び込んだのは、六爪が突き刺さり壁に磔となっている家臣だった。
呻き声一つ無いということは、既に絶命しているのだろう
磨き抜かれた廊下の板張りに夥しい量の血溜りが出来上がっている。


「ッ、政宗様!一体これはどういうおつもりか…!」
「あん?どーもこーもねェよ。コイツが幸村はもう城内に居ねェんじゃねーかとか云いだしやがるから
 ちゃんと隅から隅まで捜したかって訊いたンだよ。したらコイツ、なんつったと思う?
 『いいえまだです』、だとよ。オレを莫迦にしてンのか?したよな?だったら死ぬしかねェだろ。
 ってか寧ろ幸村に詫び入れだよな、『ちゃんと捜してあげなくて申し訳ありませんでした』ってよ」


と、伊達は甚だ支離滅裂な返事と共に無造作に刀を引き抜き血糊を払うだけで、何を省みる事もなく
やはりこうなってしまったかと、片倉は苦々しく顔が歪みそうになるのをなんとか堪えた。
伊達の心を掴んで離さない幸村が絡むと、途端に視野が狭まり行動が極端になる事は
最近の様子からして把握していたものの、いささか短絡的過ぎるだろう
否、あれだけ幸村に執心していた伊達である、従来の怜悧さなど疾うにどこかへ消え失せているのだ。
いつもの冷静な伊達ならば斯様な有様に陥る事も
まして、こうして手討ちにした者に指摘されるまでもなく
幸村が何者かの手引きによって城外に逃亡したとすぐさま推断し迅速な対応をしていたに違いない。
つまり今はこの、幸村に対する伊達の病的なまでの盲目さこそが、
まさしく幸村に時間を与えているのである。

(…とっとと逃げ切りやがれ、莫迦野郎が)

遅かれ早かれ急追の手は城の外にも伸びるであろう
そうなる前に、頼むから少しでも遠くへ、あわよくば武田の連中と合流してくれと
内心で舌を打ちながら、今少しの時を稼ぐべく考えを巡らせ片倉は口を開く。


「…時に政宗様、もう時刻も時刻です、一旦お休みに…」
「なれるか。幸村が居ねェと寝れねーっての。You see?」


丑の刻を過ぎても尚、捜索をやめない主を倣って
城内の者達も気張って作業を続けてはいるものの、疲労と眠気が滲み出ており
片倉は伊達に就寝を促すついでに隠れん坊の中断を暗に訴えたが、素気無く一蹴される。
それどころか、


「…んー?あいつら本気で捜してねェな」


と呟くなり、片倉が止める間もなく
うとうとしていた下女のたおやかな首をやおら刎ね飛ばした。
傍に居た別の下女が腰を抜かし悲鳴を上げる。
それをまた「口を動かしてねェで手を動かせ」と無情に斬って棄てる。
愕然とする片倉の目の前には、気付けば途切れる事無い屍が点々と続き
覚悟していた事とはいえ、幸村を逃がした代償があまりにも酷い事に罪悪感を覚えたが、今更である。
苦渋の思いで犠牲となった者達に胸中で頭を下げながら、黙って伊達の後ろ姿を追った。

そしていつしか東の空が白み、とうとう夜通しの捜索が正午を過ぎても尚
ついぞ幸村が見つかる事はなく、これでほぼ丸一日分の足止めが出来たのだと
片倉が僅かばかりの安堵に身を委ねているその横で、伊達は一人、着実に狂いつつあった。

 


 

「…………」


城中をひっくり返す勢いで捜したにも関わらず、幸村は見つからなかった。
となれば、誰にも目撃される事なく門以外の処から城の外へ逃げた事になる。
それには抜け路を使うしかない。
つまり、身内が手引きしたという結論に至るには容易かった。


「…小十郎か」


伊達は確信をもってニィと口角を吊り上げ嗤いながら、独りごちる。


「クク…どいつもこいつもそんなにオレらを引き裂きてェか…
 OK、よーく判った。まったく、酷ェ話だよなァ?幸村…
 やっとアンタを手に入れたと思ったらコレだぜ?」


オレ達の愛の道は険しいなァ?まぁ、その分燃え上がるってもんだが
と、ケタケタ軽薄に哂いながら、幸村の体臭が染み付いた褥を腕に抱き取り鼻面を埋め
一向に眠くならず冴えるばかりの目を閉じ座り込んで壁に凭れかかり
幾度も幸村の匂いを吸い込みつつ目蓋の裏に幸村を思い浮かべる。
あどけないくせに凛々しい顔が可愛い。
恐怖や怒りに歪んだ顔もいい。
強気な眸がじっと睨み据えて来るのも堪らない。
組み敷いた時の悔しそうな表情も煽られる。
反抗されれば興奮する。
いちいち愚直なところが愛おしい。
どんなに奥を暴こうと生気を失わない芯の強さが好きだ。
よく泣く癖に媚びて来ない処がイジらしい。
名も知らぬ傍仕えの為に泣いたり、自身を犠牲にしてまで他の者を守ろうという健気さは最高だ。
犯している時、それで一杯一杯ですと云わんばかりの窮した顔を見ると心から満たされる。


「Ahh…あの柔らけェ肉も堪ンねぇな…」


そうやって幸村の事を色々と思い出すだけで、気分が恐ろしく昂揚して来て
躊躇わず利き手を股座に伸ばし、下帯を解いて一物を握り込んで扱き始める。


「…、は、クク…、幸村ァ…」


すぐにも先走りが滲むほど硬く反り返った牡を小刻みに扱き上げながら
幸村の汗に湿った肌や端整で無駄のない筋肉を脳裏に描き
それを思う様まさぐって、しなやかな下肢を割り拡げ慎ましい菊座を貫いて
熱くうねくる体内を幾度も突き上げる感覚を妄想し、思わず含み笑いながら、更に手を激しく動かす。


「っ、…ッ、Ah―、いっつもアンタん中はあっちぃよな、HAHA」


泣くまで可愛がった菊座が仄赤く腫れて程よく解け切る頃には
四肢を投げ出した幸村は呆然とも陶然とも云える表情で
しかし時折快楽を拾うと、認めたくないとばかりに必死に眉を寄せ顔を背ける。
それがまた可愛くて、散々その後も愛でてやる訳だが
その時に、中に吐き出していた子種をわざとぐちゃぐちゃと音をさせて掻き混ぜてやると
この世の終わりを迎えたような顔で耳を塞ぎたがるので
両手を押さえつけて耳朶を食み、耳の穴へ舌先を突っ込むと、面白いほど悶え上がる。


「はぁッ、は…、イイぜ、、So cute…!……くッ、、あ、」


嫌がる…いや、恥ずかしがる幸村に囁き、括れた腰を掴んでしこたま揺さ振って
常は気持ちの良い絶頂で終われる筈だが…
短く呻き、子種を吐き出し、瞑っていた目を開けるとたちまち幸村は消え
自身の掌と、其処に引っ掛かった白濁とした体液が視界に入り、途端、急激に醒めた。
何故、幸村が此処に居ない。
今すぐ直に触れて、声を聞いて、顔を見たい。
どうして其れが出来ない、我慢しなければならない。

―――伊達の中の何かがジリジリと磨り切れて行く。


「……気分悪ィな」


虚ろに呟いてから徐に立ち上がり、小太刀で幸村の匂いを纏った褥を四角く切り取って
片手で鼻先を覆うように宛がうと、スゥと深く吸い込んだ次には反対の手に抜き身の刀を携え
迷いなく廊下へ出て最初に出くわした御付きをバッサリと一刀両断し
続け現れた端女の細い咽喉笛を一突きに貫いて
止めに来た家臣を数人叩っ斬った処で、何事かと飛んで来た片倉の顔色が見事に青褪めた。
一緒に駆けつけた者達の誰かが「お気を確かに…!」と叫ぶ。
其奴らのその云い草と引き攣った顔がなんとも滑稽で愉快だった為
伊達はけたたましいまでの哄笑のあと、とても正気とは思えぬ様相でこう云い放った。


「だーかーらー、オレぁアイツの顔見ないと狂うっつったろーが?
 それをオマエ、お気を確かにだと?確かな訳ねェだろ。ちったァ空気読め」
「…っ」
「アレはオレのもんだ、手放すなんざ有り得ねェ。地の果てでも捜し出す。いいな?」


間違いなく歪み淀んだ狂気を帯びた隻眼に暗く射抜かれ、片倉達は異を唱える事さえできず佇立する。
主の豹変乱心ぶりを心のどこかでまだ否定していたかったが、もう、認めざるをえない。
片倉はいよいよ頭痛と胃痛をキリキリと覚え
やはり今の政宗様から真田を取り上げるのは浅はかだったかと
己の判断を後悔したが既に手遅れである。
多少の衰えはあろうとも、紅蓮の鬼とまで謳われたあの幸村だ、人一倍はある健脚で
そろそろ山を越え街道に出た頃の筈だ、早々追いつけまい。
このまま何事も無ければ武田とも落ち合えるだろう、そうなれば容易には手出し出来なくなる。
されど、何事も無い筈がなかった。


「So、黒臑巾とウチで一番速い騎馬隊を仕度させろ。ちゃんとオレについて来れるヤツを頼むぜ?
 迷子の幸村が今か今かと待ってるだろうからな、早く見つけてやンねーと」
「しかし政宗様…!」
「テメェは此処に残って周辺国の動向を見張ってろ。お留守番ぐらい出来るな?」
「……御意」


忍と騎馬隊だけを連れた国主の遠出などとても容認できない
まして斯様な有様の主の傍を離れる事は尚更に避けたいのだが
片倉が反論するより先に、もっともな命令が飛んで来て、片倉は渋々と引き下がった。
こうと決めた主は絶対に意思を曲げない、故に誰にも止められぬ
となれば、主が城を空けている間、誰が此処をしっかりと守るのか
それが判りきっているからこそ、片倉も他の者も、何も云う事ができなかったのである。
なにより、殆どの者が伊達の暴走を止めるには幸村を差し出すしかないと
暗黙の内に了解していた。
たった一人の人間の事を想い詰め道を踏み外した主を
何とか食い止めるつもりで幸村を逃がした片倉であったというのに
それがとことん裏目に出てしまうという、なんとも皮肉な話であり
ならばあのまま不憫な幸村を見殺しにすべきだったのかと苦悶する片倉の胸中など素知らぬ顔で
「あぁ、それとな」と思い出したように振り返った伊達が


「幸村が無傷でオレの手元に戻れば、テメェへの罰は軽くしてやる。なるべくな」


何食わぬ顔で云い継ぎ、ギョッとした。
全て見抜かれている。
いつまでも隠し通せる気など微塵も無かったが、一体どの段階で勘付かれたのか
否、そんな事は正直どうでも良い
狂気の道を突き進む伊達が昨晩のように激情に駆られる事なく片倉を生かしている事実
つまり、有用な者とそうでない者を取捨選択するだけの強かさは健在であると云う事に、ゾッとした。
決して侮っていた訳ではないのに、こうして不意に意表をつかれただけで
ドッと冷や汗が吹き出て止まらない。

(…真田、てめぇの人生詰んだかもな…。俺も覚悟が必要か)

この畏怖すべき伊達政宗という男に追われるとなっては、幸村の先行きも自ずと知れるというもので
片倉は幸村の身を憂慮すると共に自身の向後にも腹を括りつつ、深く主へ頭を垂れた。

 

 

【終】


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あとがき

21万hitキリリクにて、『咽喉元〜シリーズの続きで筆頭side、筆頭の発狂&一人変態行為』という事で
筆頭をジワジワ発狂させて(いや元から手遅れかw)、G行為してもらいました★
たぶん幸村がオカズだと何回でも抜ry(←おいコラ)
とりあえず、苦労人な片倉氏にお疲れ様ですと言いたいですww^^

いた。  2015/04/18