※異物挿入、性描写あり。ご注意を

 


『一八』 -#10-

 

屋敷の離れ屋に放り込まれてすぐ、ズタズタになっていた蘇芳の着物を剥ぎ取られ
奥の部屋に行くのも煩わしいとばかりにその場で政宗に首根を鷲掴まれて引き倒されそうになり
咄嗟に体勢を立て直そうとした幸村は、半ば揉み合う様相で廻りの物をぶつかり散らしながら数歩縺れ込んだ。
近くの床の間の壁に取り縋ろうと幸村が必死に伸ばした腕は、ピンと飾られていた掛軸を掴み
呆気なく皺くちゃになって台無しとなる端麗な水墨画であるが、左様な事を気にかける暇もなく
其処へ押さえ付けられ背後から腰を引かれたかと思えば、男の一物をズグと強引に挿入されて息を呑む。


「っか、…は!」
「Ha!ドロッドロじゃねェか、イイ具合だぜ?」
「、、ぅあッ、あッ、は…、ンんっ」


浅く開いた両膝に中腰の恰好で目の前の壁に懸命に縋り付く幸村の項と腰骨を捕らえたまま
はしたないと云っていい程に様々なもので淫靡に濡れている幸村の柔肉を政宗が激しく貫くと
何とも気持ちの良さそうな声で幸村が啼く。
まして、満足に掻き毟れぬ箇所ゆえ余程に痒かったのか、突き崩す勢いで抽挿を繰り返すだけで
陶然とした面持ちに喜悦の色すら浮かべ、いつもは嫌々ながら快楽に呑まれるというのに
今は甘受する様子で従順に、いや寧ろ自ら欲して貪るかの如く、政宗の牡を咥え込んで放すまいと躍起だ。
すこぶる興が乗って来た政宗は、吊り上げた口角を舌先でチラリと舐め
しかし熱く蠕動する幸村の中からいっそ小気味良く一物を引き抜くと、躯を離してしまう。
唐突に夢心地から放り出された幸村は、暫し、快楽を中断された挙句に放置されてしまった事に呆け
殆ど霞んでいた理性の端に、「嗚呼…いつもの気紛れか…」と思い浮かび
今度は一体どんな底意地の悪い意図があるのかと
戦々恐々としながら政宗の様子を窺った矢先、目を見開いて呼気を止めた。


「コレ、見覚えあんだろ?」


したり顔で政宗がすぐ傍の床脇棚の小箱から取り出したのは、いつぞやの仕置で使用した男根の張形である。
硬い其れに苛まれる苦悶と、同時に、忘れもしない股菱縄の責め苦の凄まじさを思い出した幸村は
「ヒッ…!」と短く悲鳴を上げて竦み上がり、次いで腰が抜けたようにずるずるとへたり込んで、小さく首を振った。


「…う、あ、、どうか、縛らないで下され…!」
「オイオイ、これのどこが縄に見えるってンだテメェは。つか誰が縛るっつったよ」


あの時の躾けが充分に染み付いているのは政宗の思惑とする処であり芳しい事この上ないが
今回使うのは見ての通り、縄ではなくこの卑猥な張形だ。
相変わらず察しの悪い幸村の生っ白い足首を掴み仰向かせ、壁に浅く寄り掛かって座らせるようにしてから
床板より一段下がっている地板へと、その段差を利用して膝を曲げた状態で大きく股を開かせる。
然るに、政宗へと開けっ広げに股座を晒す事となった幸村は、居た堪れぬ有様に羞恥を覚えるも


「そら、遠慮なく使えよ」


と、いきなり張形を手渡され、俄かに混乱した。


「、、あ、…え…?」
「え?、じゃねェ。痒いんだろ?」


云って、此処の事だ、と指摘するかのように、人差し指でトントンと菊座をつつかれた幸村は、居竦んだ。
つまり、この厭らしい道具を使って己で己を突いて掻いて慰めろ、という事だろう。
どうしてそんな恥ずかしい真似ができようか、右手に握らされた物に嫌悪すら覚えるが
やはりここでも大人しく云う通りにしておいた方が政宗を油断させる事に繋がる筈だ。


「さ、されど…、何もこんな……っ」


とことん政宗に矜持と反抗心を踏み躙られ粉々にされてきたというのに
まだ更にこんな目に遭わなければならないのかと思う反面
いまだ溶け残っているらしい飴の甘蜜が内壁を滴りジワリと窄まりから滲み出すと
いっそ中の臓物を抉り出して直に掻き毟るか、何でもいいから尻に突っ込んで掻き回したい
という物騒な欲望が全身を焦がし、もうそろそろ我慢できなくなって来たのも確かだった。
おまけにさっき政宗が痒い処を中途に掻き抉ってやめた所為か、ジンジンと疼いて疼いて仕方ない。


「、う、ッぅ…、、」


半泣きになりながら、それでも意を決し、恐る恐る張形の先端を正面から菊座に宛がって
ゆっくりと力を込めると、すっかり解れきり濡れそぼっているお陰で、いとも容易く入っていく。
そのまま勢いに任せて奥まで…と思ったが、終始纏わりつく政宗の視線がどうにも気になって
半端な処で手を止めてしまうと、片眉を跳ね上げた男が、あろうことか
張形の柄の底を足の爪先で小突くように蹴った。


「っい、…ひ!」
「手伝って欲しいならそう云いな」


ズブ!と一気に奥まで押し込まれた衝撃に仰け反るのも束の間で
愉悦を含んだ嘲笑を浮かべる政宗が横柄に云い放ち、グリグリとなじるように張形を足蹴にすると
その些細な、けれどえげつない刺激は、鋭敏になり過ぎている痒肉には過剰な呼び水となり
もっとずっと強い刺激が欲しいと訴え荒れ狂い、幸村は発狂しそうなほど
今すぐ手の中にあるモノを無茶苦茶に動かしたいという抑え難い衝動に駆られ


「Just do it. 見ててやるから好きにしてみろ」
「ッ!」


悪鬼の如き男の毒の一言で、陥落。
しっかりと握った張形を思い切って大きく前後させれば、震え上がるような悦楽染みた感覚を覚え
そこからはもう、無我夢中である。
例えるなら、触ってはならぬと耐え忍んでいた痒疹に
ついに爪を立てて思うさま引っ掻きまわす、そういう具合だった。


「、…あっ、ふ、、んぐっう」


掻いてはいけないと判っていても、よく幼い時に、痒い処があれば血が滲むまで掻き毟り
佐助にこっぴどく怒られた幸村だ、一度放棄された自制はもはや遥か遠く
今は全身をねぶって炙る狂おしいまでの一つの欲求を満たす事だけが全てであり、至福だ。
ぬちゅ、ずちゅ、と酷い音をさせながら張形を突き動かし、己をたっぷり慰めるという
まるきり自涜に耽ると変わらぬ行為に没頭し、しかも、
それを余す事無く政宗に見られているというのに、止められない。


「んっ、ン、…ふ…っうぅ!」
「クク、えらく旨そうに咥え込みやがる」
「ひっ、…ひっ?!、いぃッあ!」


だらしなく左右に広がりきった幸村の下肢の付け根の隠し彫りを撫で
ほの赤く充血し腫れぼったくなって毒々しいまでに艶々とした菊座の縁を指先で擦り上げると
張形を喰い締めていた肉口がくすぐったがるようにキュウと収縮する。
それでもなお手を休めないものだから、張形で得られる摩擦はより強いものとなり
半ばひきつけを起こしたかの如く身悶えた幸村はとうとう
随分と薄い子種をトクトクと噴き出しながら、力尽きたようにガクリと張形から手を離し
あらぬ方を見るともなく見つつ虚脱して、ひゅうひゅうと深く荒い呼気を繰り返す。


「どうした、もうGive upか?」
「…うー、…あ、、」


涎を咽喉まで垂らして朦朧と、否、酩酊している幸村の
返事とも呻きともつかぬものを気にした風もない政宗は
てらてらと濡れ光る張形を無造作に引き抜いてそこらに放り捨てると
ぐったりしている幸村を床の間から引き摺り下ろし、両脚を抱え上げて覆い被さる。


「…ん…ぐ…」
「あっちぃな、トロけてやがる…ぜ!」
「ッひぁ、い゛!、ふぎッ、あ!!」


さしたる閊えもなく政宗を飲み込む幸村の熟しきった肉を喰い千切るように乱暴に穿てば、
舌を噛みそうになった幸村から、何とも間抜けな喘ぎ声が上がる。
嗜虐の性癖を自覚する政宗だ、大層楽しげに口端を吊り上げ
続けて畳をずり上がるほど強く揺さ振ってやると、ひぃひぃと幸村は泣きじゃくり
怖いモノから逃げ出そうとする幼子のように無心で身を捻って政宗の下から這い出ようとするも
政宗がそれを許す筈がない。
上半身を捩った状態の幸村の両手を纏め重ねて畳に押し付け、勢いを殺さず腰を揺すると
幸村のしなやかな体躯を締め上げている紅い竜も、同じように歪み悶える。
これも一つの入墨の醍醐味だろう、実に目に楽しい。


「クク、やっぱ彫って良かったじゃねェか、幸村」
「、あっ、…うっ、はぁッ、あぁッ」
「男をそそる墨だ」


情欲を孕み掠れた声で囁く政宗が、脇腹を伝う竜の紅い鱗を舐め上げ
幸村はあからさまに躯の奥で爆ぜたのが後ろ暗い情火であると自覚するも、認めたくはなく
奥歯を噛み締め顔を反らし、気付かなかったフリをした、また、政宗に気付かれたくもなかった。
けれど、政宗の炯眼を誤魔化す事がどうして出来るだろうか、いや出来る筈がない。
ましてや髪を掴まれ強引に口付けられて、舌を絡めつ解きつガクガク突き上げられると
吐息混じりの猥りがわしい嬌声が憚りようもなく溢れ出すし、菊座やその奥に至っては
気持ち良うて仕方ないとばかりにヒクヒクとよく痙攣し、政宗がニィとほくそ笑む。


「テメェの悦がり方はクセになるな」
「あっ、はッ、ぁあっ、…あ!」


結局、中の飴がとっくに溶けきって痒疼が治まっても尚、淫湿な交ぐ合いは続いた。

 

――――――――――

 

いいかげん墨を入れる痛みにも耐性がついただろうか
およそ半身を脅迫的に飾り立てる華美な彫り物がいよいよ完成間近となった頃である。


「そろそろ仕込み始めるか」


政宗の其れとはまた異なり、どこか艶冶さすら醸し出す幸村の入墨をいたく気に入っているのか
着物の後ろ衿を大きくひん剥いては朝な夕な頻繁に背中を
あるいは肌蹴た裾から垣間見える脚の付け根の隠し彫りを視線で、指で、舌で愛でる政宗がポツリと呟く。
一体何の話だと、怪訝な表情を浮かべる幸村の前で、徐に立ち上がった政宗が
これ見よがしに懐へ手を入れてから、何かを取り出し、ボトリと畳に落とした。 巾着である。


「…?」
「今までにスられた経験は?Ah−どんくさいアンタの事だ、勿論あるだろうな」
「ッ!!」


最初から答えなど判りきっていたかのようにそう断言され
しかし其れが悔しい事に事実であるから、幸村は何も云い返せなかった。
(あれはいつであったか、そう遠くない前、佐助とともに訪れた近所の縁日で
立ち並ぶ露店に夢中になるあまり、いつの間にか金子の入った大事な巾着を、何者かに抜き盗られたのである。
己の不注意が原因と云ってしまえばそれまでだが、それ以来、巾着は佐助が預かるようになった。)


「……そ、それがどうしたと云うのでござる、貴殿に関係なかろう、、」
「クク、そうつんけんすンなよ。アンタにはこれから、そのスリをやってもらう」
「…は…?」


突然なにを云い出すのだろうか、この男は。
とばかりに不信げな顔をする幸村に構わず、政宗は更に続ける。


「やり方は教える。練習もさせてやる。オレがやれと云ったら、迷わずやれ。いいな」
「そんな…事、某は…っ」
「So?何か質問は?」
「ッ、スリなど…巾着切りなど出来ぬ、出来る筈がない…!
 そもそも、何故某が左様な事をせねばならんのだ…!!」


従順にしようなどという心構えの事など忘れ、噛み付くように反論すれば
途端に政宗の隻眼がスゥと細められ、冷たい侮蔑の色を帯び、幸村は思わず硬直した。


「テメェ、いつまでボンクラで居るつもりだ?あ?にっちもさっちも行かねェ世間知らずの能無しに
 一つ芸を持たせてやろうってンだ、一丁前に口答えしてンじゃねえ。
 それに、拒否権なんざねェんだよテメェには。そうだろ?可愛い佐助ちゃんが心配だもんなァ?」
「…!」
「判ったら、つべこべ云わず黙ってオレに従ってろ。OK?」


暫し、幸村は物云いたげに口を開閉させたが、佐助を引き合いに出されては、ぐうの音もでない。
渋々頷く事しか、できなかった。


明くる日より、政宗が付きっきりでの指南が始まった。
一口に掏摸(スリ)と云っても、袂さがしだとか腰銭はずしや巾着切りなど
手先だけで抜き取ったり刃物を使って断ち切ったり、その手口は様々である。
ただし一貫して同じなのは、人混みを利用するという点と
云わずもがな、手先の器用さが必要になるという点だろう。


「そう構えるこたァねぇさ。Take it easy、気楽に行こうぜ?
 何せオレが教えるんだ、ちゃんと覚えりゃこの町一のスリ師になれるかもな」


それが冗談に聞こえないのが恐ろしい。
兎にも角にも、広い庭の一角で、まずは手本だと云った政宗が
幸村の懐や袂に予め仕込んだ巾着を、すれ違いざまに、あるいはぶつかりざまに、物の見事に掏ってみせる。
普通は、縁日や市場など人が多い処や、見世物や見世棚などに集中している者達を狙うと云うが
それにしても鮮やかなものである、まったく盗られたという気がしなかった。
そうして、掏り取る際のコツや、掏った後の行動など
政宗が手取り足取り教え込んだのは、手先と度胸さえあればできる、抜取りによるスリである。


「いいか?人前で堂々と金を盗む肝っ玉と、獲物と時機を見定める洞察力と、周囲をうまく躱す所作を身に付けろ」


それが出来れば上等だ、オレはそうやってスリから始めて此処までのし上がって来た。と、
口では軽く云ってくれるが、幸村が政宗と同じように出来るとは到底思えない。
精々下手を打ってその場で捕まるか、挙動不審で取り押さえられるか
いずれにせよ、絶対にうまく行く筈が無い事は、火を見るよりも明らかであり
しかしながら、数回の練習の後、「まァ、実践しなきゃ身に付かねェ」
という政宗のいかにも気軽い、けれど的を射ている一言で、町の活気ある市場へと連れ出された幸村であった。

 


「Well?どうだ?出来そうか?」
「む、む、無理にござる…!」


賑々しい大通りは、買い物客や商人達で溢れ返っていた。
押し合い圧し合いで安い物を手に入れようとする者や
物珍しい物を陳列する見世棚にかじりついて離れない者
人の波を掻き分けて先へ進もうとする者
それらから逃げ隠れるようにして道の端へと立ち竦んで居る幸村は、それはそれは憐れなほど動揺しきっていた。


「やはり斯様な悪事を働くなど、某には…!!」
「おいおいおい、今更怖気づくなよ。やるって決めたから練習したンだろうが?
 それとも、今すぐに屋敷に帰って、目の前で佐助の手足の骨でも折ってやろうか?」
「な?!そんな事はおやめ下されッ!」
「じゃあやるしかねェな」
「、、なれど、某にうまく出来るかどうか……」


眉をハの字にして唇を噛み、いまだ逡巡する素振りを見せる幸村に
政宗は聞こえよがしに溜息をついて見せ、一つ背を押してやる事にする。


「…しょうがねぇ、テメェの後ろからついて行ってやる。
 んで、スるタイミングも合図してやるし、もし下手打っても助けてやる。 それなら行けるだろうが?」
「………判り、申した…」


それで漸く踏ん切りがついたのか、幸村は歯切れ悪く答えると
ギクシャクとした不自然さで歩き出し、人混みの中へと紛れ込んで行く。
まことに浮いていた。
だが最初は誰でもそんなものだ、と背後からその様子を眺めつつ
人の流れに巻き込まれ揉みくちゃにされている幸村が必死に荒波を掻き分け道を作ってくれる後ろを
政宗が難なく悠々とついて行く事しばらく、少し先で多くの人だかりが出来ているのが見えて来る。
どうやら何か見世物をしているらしい。
絶好の機会だ。
同じ事を考えたのか、ピタリと幸村が立ち止まるので
政宗はフッと笑みを浮かべると、半歩進み、幸村の背に密着して左肩に顎を乗せ
「今がチャンスだぜ、アイツなんかどうだ?」と耳元へ囁いた。


「ッ!」


ビクリと大袈裟に跳ねた幸村は、拳を固く握り締め佇立していたが
政宗が発破をかける前に、自ら足を踏み出すと、密集している人だかりの中
政宗が指した、いかにも警戒心が無さそうな町人といった風体の中年の男に近寄って行く。
両手は小刻みに震えていた。
その心境たるや察するまでもなかろう、口から心臓でも飛び出ようかと云う緊張に呑まれているのだ。
標的の男は、こちらの事など見向きもせずに見世物を見物している。
丁度大きな歓声が上がった処だった。
そこで政宗がそれとなく幸村の長い後ろ髪を引いて合図を送ってやると
幸村は列に割り込む客のふりをして、男を躯で押しやると同時
政宗が教えた通りの手口で懐へと手を滑らせる。
そして、


「…God job、よくやった」


素早く手を引いた幸村の手中には、小さな巾着がしっかりと握られていた。


「OK、帰るぞ。ゆっくりな」


やり遂げたという思いと、やってしまったという思いが鬩ぎあい
地に足がついているかどうかすら定かでない幸村は、気付かなかった。
今しがた巾着を掏った男の傍を離れざま、其奴に政宗が小さく笑みを向け
男が心得たように頷いてみせた事を。

さもありなん、その男、偽客(さくら)である。

ここら一体の賭場だけでなく、露天商や的屋といった類いは政宗の私物と云っても過言ではない組合であり
商売の趣向や客寄せの手段など好きに口出しできる。
然るに、先程のこれみよがしな見世物とて端から知っていた政宗は
予め幾人かの偽客を仕込ませ、客を煽り上げて売上を伸ばすついでに
幸村のスリを成功させる為(正しくは成功したと思わせる為)、もう一役演じてもらったという訳だ。
何故左様な面倒をしてまで手を廻したかと云えば、単純である

(…物事は最初が肝心だからな。特にコイツは)

賭博長屋での丁半勝負の時と同様、初めにうまくいって味を占めれば、後はとことん嵌っていくというのが幸村だ
故に、初っ端でしくじられては困る。
だから態々今回も撒き餌を用意してやったのだ。
小十郎あたりは「また手の込んだ事を」とボヤいていたが、
手間を惜しめば何事も中途半端になり、挙句失敗に終わってしまうという事を、政宗はよく理解していた。


「さて、ちゃんと出来たアンタには、たっぷりご褒美をやらねェとな…?」


誰かに見つかってはいまいか追っては来ないかと身を緊張させる幸村の肩を抱き寄せ、思わせ振りに囁くと
幸村の耳があからさまに上気したように赤くなり、政宗は気分良く咽喉で笑い屋敷へと足を向ける。
順調に事が運んでいるのも楽しい。
もう何度かスリに付き添ってやれば、あとは小十郎の見張りだけで事足りるだろう。そうなれば次の段階だ。

そんな目論見に気付きもしない幸村は、而してその後
政宗の思惑通り、罪悪感に揉まれながらもスリをこなし
何度も繰り返す頃には「一度やってしまえば何度やろうが同じ事である」と悟ったようで
とうとう入墨が仕上がった時には、見て呉れで済ませるには過ぎた箔と
不本意ながらもそれなりの度胸と一芸を備えるに至っていた。

 


【11へ続く】


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あとがき

調子に乗った勢いで書いたお道具プレイが存外長引いてしまいましたが
何とか幸村に新たなミッションこなしてもらえたので、漸くの進展かと^^;
…えーと、察しの良い方は既に今後の展開が読めてしまったかと思いますが、今暫くお付き合い下さい^^;

2014/11/24  いた。