※異物挿入、性描写あり。ご注意を


 


『一八』 -#9-

 

外に出られるのは、墨を入れに行く時だけだった。
日々、刻々と、苦痛屈辱を刻み積み重ねるは地獄であったが
同時に、堅牢な檻から解放される貴重な機会でもある。
(時折政宗に賭博長屋に引き摺られて行く時もあるが、彼奴が傍に居ると居ないでは大違いだ)
政宗の目が無い処で、羽を伸ばすとまでは云わぬが、束の間の小さな自由を味わう。
見張り役の小十郎が必ずついて廻ったけれど、最近ではそれもあまり気にならなくなっていた。
大人しくしていれば、干渉どころか口すら開かぬからだ。
ゆえに、今日も今日とて幸村は、喜憂せめぎ合う複雑な心境ながら彫師の元へと赴き
彫り物を施される時間はまさに苦行であるものの、其れを我慢して乗り越え
疲れきった心身ながら、屋敷へ戻るまでに、道端の出店から漂う何やら香ばしい匂いを楽しみ
行き交う人々の喧騒に揺られ、軟禁暮らしの鬱結を暫しのあいだ癒す。
屋敷と彫屋との通い路はもはや慣れたもので
今では帰り道すがら、小十郎に小銭をせびって菓子を買い食いしたりする事もある。
(いつであったか、腹が減って、物欲しげに眺めていたら、無言で買い与えてくれたのが切っ掛けだ)
思っていたほど悪人ではないのかもと、己の先入観を改めて幾日か経った、今日この日


「…!」


其れは呆気なく覆された。


「っ、うげ…ぇ!げほっ」
「政宗様の御物だ、勝手に触るんじゃねぇテメェら」


甘い飴がたくさん詰まってこんもりと膨れた袋を抱えた幸村が
「ちょっと其処の」と声を掛けられ、見知らぬ男達に囲まれ肩を掴まれた瞬間、小十郎の拳が素早く翻った。
どれだけ場数を踏んでいるのか、それこそ、あっという間に三人の男達を叩きのめし
ザワザワとどよめき集りだした野次馬の事など気にも留めず、
地に伏せ躯をくの字に折り曲げて苦しむ男の腹をしこたま蹴り上げ
あるいは、よろよろと覚束無い足取りで逃げようとする男の襟首を引っ掴んで張り倒し
鼻血を噴きながら欠けた歯で助けを請う男の顔面に有無を云わせず肘を埋める。
みな重傷だ、動く者は居ない。


「、なん…て、ことを…!小十郎殿…ッ!」


息を呑んで惨状に愕然としていた幸村であったが
円を描いて周りを囲っていた人垣の中から、「よー!あんちゃん強いねェ!!」
と無責任な野次が飛んで来た処でハッとし、慌てて批難の声を上げた。
一体全体、こやつらが何をしたのだと云うのか。
そもそも、息も乱さず振り返った小十郎が先程云い放った科白が、どうにも気に食わない。


「それに…っ、某が、誰の物だと…?!」
「…やかましい、さっさと帰るぞ」


政宗様がお待ちだと、素気無く踵を返す小十郎に促され
幸村は納得出来ぬ面持ちで暫くその場に踏み留まっていたが
勝手に盛り上がっている人波と、早くしろとでも云いたげな小十郎の鋭い眸に気圧され、渋々歩き出す。


「…………」


互いに言葉を発しないまま、黙々と進んで行く内にいつの間にか人々の騒ぎは聞こえなくなり
幸村は傍に居る小十郎に判らないよう小さく溜息をついて、すっかり気落ちした気分で視線を泳がせた。
少しでも「本当は良い御仁なのやも知れぬ」と考えた自分が莫迦だったと自責し
勝手な云い分で一方的な暴力を振るうなど、此奴も政宗と同じでやはり碌でもない輩なのだと痛感する。


「……っ…」


そして何故か、ほんのちょっとの動揺と、寂しさを覚えた。
こんなことなら、菓子を買い与えるなんて
優しいと錯覚してしまうような行為など、して欲しくなかった。 最初から最後まで…。
心が掻き乱される。
口に含んでいた飴玉を転がしてみても、まったく味気なくなっていた。


「…、っ!……あ、面目ござらぬ!お怪我は、…ッ?!」


そうやって物思いに耽って下ばかり向いて歩いていた幸村は
不意に真正面から人にぶつかってしまい、焦って謝るも、気遣う科白を云いきる前にギョッとし口を噤んだ。


「おいおい、ボーっと歩いてンなよ。うっかりこけて怪我でもしたら、コトだぜ?」


厭味に口角を上げて幸村の顎を掬い上げたのは、誰あろう、政宗である。
此奴の口から吐き出された言葉は、何でも揶揄しているように聞こえてしまうので
幸村は居心地悪そうに視線を逸らした。
それにしても、どうしてこんな処にこの男が居るのだろう…
という幸村の疑問を、そのまま小十郎が代弁した。


「政宗様、如何なさいました。供も連れず出歩かれてはなりませんと、あれほど…」
「おう。近所でテメェが一悶着起こしたっつー報告があったンでな」


様子見ついでに幸村を迎えに来たのだと、男は細く隻眼を眇める。
相変わらずの早耳と恐ろしい情報網だ。


「それで?」
「…はっ、申し訳ございません。この小十郎がついていながら、手垢を付かせてしまったので、制裁を…」


具体的な説明を省いたにも関わらず、小十郎がチラリと幸村へ視線を遣っただけで
政宗は全てを理解し、「なるほどな」と呟いた。
それがまるで自分の所為だと云われたような気がして
幸村はまたしても不快な気分になり、一歩政宗から離れようとするも
しっかりと腕と腰を掴んだ男の手が其れを許さない。


「まァいい、過ぎた事だ。 But、次は気をつけろよ」
「承知…!」


畏まって頭を深く下げる小十郎を後目に、政宗は幸村を見下ろしながら
ふと思い出したように言葉を続けた。


「Well、何処に手垢がついたって?」
「は。右の肩のあたり、だったかと…」
「だけか?」
「はい」


その答えに、OKOKと繰り返した政宗は、幸村の腕を掴んだまま唐突に横道へと入る。


「っ政宗様!?どちらへ!」
「Ah−?どっかそのへんだ。 小十郎、適当に見張っとけ」
「!」


不穏な科白を吐く政宗に、奥の物陰へ引きずり込まれた幸村は
何が何やら判らぬ内に、いきなり長屋の壁にドンッと押し付けられ
打った背の痛みに顔を顰める暇もなく、小太刀を取り出した政宗に着物の右側の衿を引っ張られ
何をと思うより先に、ビッ!と小気味良い音を立てて衿元から肩口にかけて着物をバッサリと裁ち切られた。
驚愕に目を瞠る幸村の目前で、まるで其の着物の一部分が腐った芋の皮であるかのように切り取って
それこそ襤褸(ぼろ)切れの如く其処らに打ち捨てる。


「な、ん…!」
「もう要らねェだろ?あんな汚ェの」


ちゃんと新しいの見繕ってやるよという傲慢な囁きの後
政宗は露わになった幸村の滑らかな肩に唇を寄せ、吸い付き、舐め上げ
首筋から続く入墨の竜の紅い鱗を、項からゆっくりと指先で撫で擦った。


「っぅ…!」


ゾクリと奔ったのは恐怖か快楽か。
辛うじて左肩に引っ掛かっていた着物を無造作に肌蹴られると
もう殆ど出来上がっている彫り物が上半身と共に露出する。
二の腕や脇腹を悩ましく這う紅い竜の胴や鉤爪が絶妙で何とも云えず
政宗のような稲妻ではなく、白い肌に炎々と燃え盛る焔は、猛々しいというよりも、どことなく厭らしい。
日毎完成に近付く其れを満足気に愛でながら、政宗は幸村の膝の間に躯を割り込ませ
躊躇なく片足を捕らえて抱え上げる。


「…あ!」


男の云い付けで、幸村は下帯を身に付けていない。
それに最近は、臀や太腿、際どい処にも墨を入れられていた為
股の付け根にまで竜の尻尾のあたりが猥りがわしく巻きついているのが露わになる。
その、普段は決して見えぬ箇所に刻みつけられた、俗に云うなれば隠し彫りの
視覚を犯されるような淫猥さに、幸村は唇を噛んで目を閉じた。
あんなものを斯様な場所にまで彫り込まれた恥辱と悔しさはとてつもなく
消せるものなら消してしまいたいが、肌を侵蝕する鮮やかな色彩は決して無くなる事などないのだろう。
そう思うだけで、気が遠くなるような絶望が襲いかかって来るというのに
政宗はと云えば、それはもう満悦至極という風に片側の口端を吊り上げ、
今にも慙死しそうだという風に恥じ入って震える幸村の内腿に掌を這わせ
頗る煽情的な隠し彫りをゆるゆると撫で上げた次には、無防備な一物を握り込む。


「…ふ…っ、、!」


怯えているのかビクと跳ねて短く息を詰めた幸村に構わず
政宗は手にした牡を巧みに手淫し、いくらも経たぬ内、呆気なくそそり立って
はしたなく乱れた着物の裾を割って覗く亀頭に指をかけ、滲む先走りを伸ばしつ絡めつ、些か乱暴に扱く。


「、はっ、…はっ、……う…ッ」


容易く勃起を果たす己の牡を怨めしく思うものの
常から政宗の愛撫に染められきった躯は幸村の意など酌まず勝手に昂っていき
自身を支える片足の膝が小刻みに戦慄く。
絶頂が近いのだと自ずと知れたが、まさか目の前の男に縋りつく訳にも行かぬので
必死に踏ん張っていたというのに、政宗が嘲笑うかの如く鈴口を引っ掻くものだから
堪らず「ヒッ」と悲鳴を吸い込んだ拍子に口内の飴玉を危うく呑み込みそうになり、慌てて咳き込む。


「っうぐ!、げほ…っ!かは、ッ」
「あん?何喰ってンだアンタ」
「?!、んぐっっ、ふ…!」


訝しげに片眉を上げた政宗がやおら指を口の中へ突っ込んで来て中をまさぐり
幸村の右の頬に追い遣られていた飴玉を捉えて容赦なく引っ張り出した。


「Hmm…飴、か」
「、っあ!」


だいぶ小さくなっていた其れを、感慨無く眺めた後、男は何の躊躇もなく己の口へと含み
ガリガリと音を立てて噛み砕くと、幸村が後生大事に掴んでいた飴の袋の中に手を突っ込み
一つ取り出して幸村の唇の隙間へと押し込む。


「…ん!…、う、っむぐ…!」


ついでのように突っ込まれた政宗の二本の指先が飴を弄んで転がすように蠢き
硬い飴玉が時折歯にぶつかってカラコロと音を立て
戯れに動いた指が舌の表や裏をつついたり挟んだりするから、尋常ではない唾液が溢れ出し
閉じられない唇の隙間から滴り落ちて顎やら首筋へ幾筋も伝った。
甘ったるい飴の匂いが俄かに充満する。
息苦しさに眉を寄せた処で、またしても強引に飴が引っ張り出され
今度はどうするつもりなのかと見詰めて居ると
唾液に濡れて少しばかり溶けた飴玉が、あろうことか、臀の穴に宛がわれ、グリと捩じ込まれた。


「…っく、は…!やめ…ッ…、あ!」


ズルリと容易に中へと滑り込んだ飴を、続けて政宗が指で奥へと押しやる。
突然そんな物を突っ込まれた幸村は、嫌悪と恐怖に身をよじって暴れようとしたが
ふと、「逆らわず油断させよう」という佐助の言葉が脳裏に蘇り、
これも日々の政宗との交ぐ合いでの暴力にも似た快楽や
入墨での苦痛をひたすら我慢するのと同じなのだと云い聞かせ
抗いたい気持ちを懸命に抑えつけ、大人しく甘受しようと努める。


「………」


この時、あまりにも一杯一杯で、政宗がスゥと隻眼を眇めた事を、幸村は知らない。
無様に片足を上げたまま、ぜいぜいと乱れた息を整えようとしていると
政宗が先と同様に袋から飴を取り出し、幸村にねぶらせ
続けて数個菊座へと押し込んで来るのを、歯を食い縛って何とか耐えた。


「、は…ッ、…っ、…ぅぐ、、」


こらえようと力み過ぎて紅潮した耳や頬を政宗が唇と舌で掠めるように撫でながら
己の牡を掴み出し、咥え込んだ飴が近くにある所為で半開きになっている菊座へ、無遠慮に突き入れる。


「ッ…!?ひっ、アぁ…ッ!!」


おまけに、雁首が収まった処で、幸村の残った方の片足まで抱え上げてしまったが為
幸村自身の重みでズブズブと奥まで政宗の一物が進み、中でガチ!と飴同士がぶつかり
その飴もどんどん奥に押し込まれて、とんでもない処まで到達する。
腹を壊さぬかと一抹の不安が過ぎるものの、知った事かと云わんばかりに
政宗は根元まできっちり埋めると、荒く幸村を揺さ振り始めた。


「っ、あ、!、ぅっ、…あ!」


背後の板張りに断続的に背が当たり、ガタ、ガタ、といかにもな物音が響く中
乱暴に突き上げられるたびに、腹の奥の方で飴玉が暴れて存在を主張し気が気でない。
顔を歪めて耐え忍び、しかしすぐ傍には往来がある事を今更思い出し
このままあられもない声を出すのは憚られ、口を掌で覆うべく腕を持ち上げようとするも
「声を殺すンじゃねェ」と云う男のにべも無い命令で、敢え無く未遂と終わる。


「…はっ、はッ、…あ、!っ…ふ、…ぅうっ」


幾度も揺すられていると、中の分泌液か、はたまた男の先走りかが、溶け出した飴と混ざり合って
トロリとした透明な滴が臀穴から溢れて臀を伝い、政宗が臀肉を鷲掴んで揉むと酷くベタついた。
無視できない不快さに眉を寄せるけれど、その実、ドロドロになっている体内を強かに抉られる快感の方が大きく
いつしか声を抑えようなどという気概は消え失せ、まして人目を気にする余裕も無くなり
はぁはぁと荒ぶる呼気で必死に政宗にしがみ付いて、濃紺の着物を掻き毟った。
上等な其れは無残に皺くちゃになり、衿が乱れ、男の肩口と入墨が見え隠れする。
政宗は煩わしいとばかりに片腕ずつ袖から抜いて着物を腰まで肌蹴ると、
だらしなく喘いで唾を垂らす幸村の唇に噛み付き舌を突っ込み
互いの口内に残っていた甘い飴の残り香を貪りながら、しっかりと抱え込んだ臀をしこたま穿つ。
そうすると、喰らい合うように激しく絡めていた舌を無理に振り解いた幸村が
「あッ、は…!ふひっ、い…!」と何とも情けのない嬌声を上げて喜悦の泪を流すのだ。
その様を見て唇を弧に歪めた政宗は、苛虐に眸をギラつかせ、更に幸村を追い上げるべく
二人の腹の間に挟まっていた幸村の牡を掴んで扱く。


「っ!ぅう、あ…!ん、…ンッ!」


もたらされた強い刺激に幸村は呆気なく吐精するも、政宗の律動が止まる訳もなく
辛うじて持っていた飴の袋をいよいよ取り落として逞しい背や肩に腕を廻し
殆ど身を預けて半ば酩酊の心地で揺すられて居ると
不意に、小十郎が見張る往来とは反対の向こう道から
角を曲がって出て来た見知らぬ男と目が合う。


「…!!」


一気に酔いから醒めたような気分で硬直する幸村に対し、その男は
暫し呆然とこちらの様子を凝視していたが、政宗の眼帯と
肌に彫られた蒼い竜の入墨を見た途端、傍目からでも判るほどサァと顔色を変え
見て見ぬフリをしてそそくさと足早に立ち去った。
それだけ、この政宗という男は、まっこと悪い意味でこの町での梟雄なのだと知れる。
だがしかし、そんな男に脚を拡げているのは他でもない自分だ。
とてつもない自己嫌悪に駆られて吐気を催すと同時、深い処を執拗に小突かれ
気持ち悪いやら気持ち良いやらよく判らぬものが一緒くたに押し寄せ
視界が刹那に暗くなり、意識も一寸ばかり飛ぶ。


「…あ…、う、、」
「ッ、」


その時無意識に臀の穴が窄まったか、短く息を詰めた政宗が勢い子種を吐き
びしゃと腹の中が濡れる。
ズルと引き抜かれれば、いまだ長ったらしく零れていた残滓を臀朶に引っ掛けられ
溶け出し滴っていた飴の甘汁と混じって汚くも猥褻であった。


「クク…ひでぇ有様だな」
「…はあ…、はぁっ…、ふ…、は…っ」


自分でやった癖に、わざとそういう風に云って羞恥心を煽る男に何も答えず
無様に凭れかかったまま忙しい呼気を続けていた幸村であったが


「…う…、あ…?」


激しい抽挿でジンジンと火照っていた菊座や中の方で、むず痒いような感覚が奔り
恐らく溶け残っている飴が体温でじわじわと滴り落ちて粘膜を刺激しているのだと、想像に難くなかった。


「は…ッか、痒ぅ、ござ…っ…、う、、ッ…取って…下されぇ…!」


こそばゆうて敵わぬと、ぬかるみベトつきゆるゆるに解れている自身の菊座に
両手の指を食い込ませ、もどかしげに引っ掻きながら
男にしか頼る術がなく、はしたなく哀願すれば、政宗は捕食者の其れで薄っすら唇を舐めると
ゾクリとするような危険な笑みを浮かべ、屋敷へと足を向けた。

 



【10へ続く】


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あとがき

そろそろ進展させなきゃと思いつつ、飴プレイしてしまいました。何番煎じが判りませんが、お許しをorz
次は脱線しないよう気をつけます;

2013/11/17  いた。