『須らく肝胆を相照らすべし』



幸村の機嫌は、すこぶる悪かった。
と云うのも、「雨があがったら逢いに来い」と、大変横柄な文が伊達から届き
梅雨入り前の小雨模様が、見事な青空に晴れあがるのを辛抱して待つこと三日
上田の城より遠路遥々奥州へ訪ねて行ったにもかかわらず
なんと文を送りつけて来た張本人が不在だったのである。
それも一度ではない、二度もだ。
最初は大人しく引き下がった幸村も、さすがに二度目は食い下がり
留守を預かっていた片倉に、何故だと理由を問い質せば、

「怒るな、急の所用で奥州北端くんだりまで遠出だ」

どうする、待つか?城の空き座敷ならいくらでもあるぜ? と勧められ
しかし、いつ戻ってくるとも判らぬ男を、一途に待っている暇はない。
そもそも、幸村だとて一城を預かる身だ、信頼できる家臣に代理を任せてあるとはいえ
こう度々城を空けていては示しがつかぬし、まして他所の国で長居など、もってのほかだ。
折角此処まで来て、一目も逢えず言葉も交わせぬのは残念だが、急用ならばと文句も云えず
まして大の男がおなごのように恋しがっていては、立つ瀬が無い。
もしや明日には戻られるやも知れぬ…と云う未練も山々ながら懸命に押し殺し、幸村は信州へとトンボ返りした。
それが夏も半ば、皐月の芒種の頃の事である。

それから幾日か経って、幸村が約束を二度もすっぽかされたのを忘れかけた時分
まるで見計らったかのように、伊達から再び文が届いた。
内容は云わずもがな、先の詫びと次の誘いだ。

「…『悪かった、今度は梅雨明けの半夏生に来い。』とは…」

此度もまた、何とも不遜な物云いである。
この男、本当に悪いと思っているのかどうか、甚だ怪しいのだけれど
一応謝ってはくれたのだし、最後の一行には
「この間逢えなかった分まで、たっぷり可愛がってやる」、とあり
よくもまぁこんな恥ずかしい事をと頬を赤らめる幸村とて、まんざらではない、自然に顔が綻ぶ。
心落ち着きなく夏至を過ごし、漸く鬱陶しい梅雨の季節が明けて
水無月の小暑を迎えた頃、再び奥州の地へと向かった。

…が、

「また…でござるか?」

米沢城の門扉を叩いて待つこと暫し、出迎えに来た片倉が
「すまん、真田。政宗様は二日前から留守だ」 と、開口一番に宣った。
一時、幸村は馬の手綱を握ったまま、唖然と呆ける。
間が悪かったにしても、前回に引き続き、それは無いだろう
まさか三度目の無駄足とは、酷すぎる。
思わず「何処へ向かわれたのだ」と追及しそうになり、慌てて首を振った。
訊いてどうする、追いかけるのか?
幸村、自重せよ…と寸での処で己に云い聞かせ

「……判り申した…それでは、また日を改め、出直して来ます故…」

ズキリと疼いて募る恋情には、無理矢理蓋をして誤魔化し、努めて冷静に踵を返して背を向けた。

「あーあ…旦那ってば素直じゃないよねー」
「全くだ」

ただその努力も、沈んだ声と拗ねた顔では意味が無いし
とぼとぼと歩く背中があんまりにも寂しげなので、誰が見ても強がっていると丸判りである。
近くの大木の高い処から、そんな主の姿を見やりつつ、佐助が溜息を零せば、すかさず片倉が同意を示した。

「それにしたって、竜の旦那はホント何してんの?何度も何度も約束すっぽかすなんてさ」
「…実はな、猿飛…その件で折り入って相談があるんだが…」

あの独眼竜の右目とまで云われた男が、折り入った話などと珍しい、一体何事か。
若干胡散臭い気はするものの、好奇心には勝てず
耳を貸せという言葉に従い、佐助は木から飛び降り片耳を寄せ
然らば、幸村に聞こえぬよう、ヒソヒソと耳打ちがある。

「……え〜〜〜…オレ様、全然気乗りしないんだけど…」
「そこを何とか、頼む」

礼は弾むぞ、と云う小声の説得に、勿論否などあろう筈もなく
不満げな様子は何処へやら、満面の笑みを浮かべて首を縦に振り、快諾。
猿飛佐助、雇われ忍。
なにぶん、給料に不満があった。

 


「何だこれは」

米沢城からの帰り道すがら、夏の陽射しにバテかけていた馬を休ませる為に
途中で見つけた川辺の木陰で一息ついていた幸村は
竹筒に入った水と共に目の前に差し出された黒いモノに、目を細めた。

「何って、オレ様特製の秘薬」

小指の爪ほどの大きさの丸い物体が三つ、佐助の掌に転がっている。
その外観からして、いかがわしいにも程がある、まったく近寄り難い。
それに、「薬」と聞いた途端、幸村の顔は心底嫌そうに曇った。

「……何の秘薬か知らぬが、某、薬は好かぬ…」
「好かぬって、子供じゃあるまいし。いい歳した大人が、何云ってンの」
「ぐ…、しかし、そう云う問題ではなかろう!そもそも、何故某に薬が必要なのだ!」

もっともである。
束の間、無言の時が流れ、「あ、ごめん間違えた、夏バテ予防の滋養強壮剤★」
などと後から取って付けたように云って爽やかに哂う佐助の笑顔に
真夏であるにもかかわらず寒気を感じたのは、恐らく気の所為ではない。
幸村は冷や汗を流し、「すまぬが、遠慮致す…っ」と賢く逃げを打とうとするが、素早く腕を掴まれた。

「いいから、これ飲んで、とっとと米沢城の竜の旦那の処へ行ってきなよ」
「政宗殿は留守にしていると、さっき片倉殿が云っておったではないか!
 っ…それに、この薬と、政宗殿が一体何の関係が…!」
「それは行ってからのお楽しみ!あ〜も〜、つべこべ云ってないで早く飲みなってば!」
「ッうぐぐ…!」

痺れを切らした佐助に、半ば強引に薬よろしく滋養強壮剤と称した怪しげな物を飲まされた幸村は
咳き込む背中をグイグイ押しやられ、訳も判らず来た道を戻り、米沢城へ向かった。

 


「…っか、片倉殿…、居られるか?」
「なんだ、真田か。早かったな」
「??、あの、たびたび申し訳ござりませぬが、某…」
「まぁ立ち話も何だ、来いよ」

幸村が全てを云い切らぬ内に、くるりと背を向け歩き出した片倉は、既に城の勝手口の戸へと手を掛けており
信州へと帰った筈の幸村が再び顔を見せた事を訝しがるでもなく、妙に落ち着き払っている。
出鼻を挫かれた幸村は、「早かったな」という科白に疑問を抱きつつ(まるで戻って来る事を知っていたかのような口振りだ)
数回瞬きを繰り返した後、兎にも角にも訊きたい事を訊かねば始まらぬ、片倉の元へと走った。

(…しかし、今日はこんなに暑かっただろうか、いやに汗を掻く…)

額にじんわり浮かぶ汗を拭いながら、戸口に追い付いた幸村は口を開き

「片倉殿…、その…、一つお伺いしたいのだが、、」

政宗殿はもしや、城に居られるのか?
半信半疑で問うてみた。
が、片倉からの答えはなく、またしても幸村を置いてさっさと歩き出してしまう。
ああ、もう、何なんだと慌てて広い背中を追いかけ
入り組んだ城の奥、大きな座敷の襖の前へと辿り着いた時、幸村の全身は汗びっしょりになっていた。
大した距離を走った訳でもないのに、まさに全力疾走した後のように、何やら胸が切迫して喘ぎ、息も荒く切れる。
気分も優れない。下腹の辺りがモヤとして落ち着かぬ。
されど、見苦しい様を見せるのだけは避けたく、平生を装い
立ち止まった片倉に倣って足を止め、すぅっと静かに開かれた襖の中を見た瞬間、目を瞠った。
此処に居ない筈の男が、座敷の真ん中で、どっかりと胡坐をかいていたからだ。

「…!!これは、一体どういう…!」

己は白昼夢でも見ているのかと動揺する幸村の衿首を掴んだ片倉は
猫の子でも放るが如く、ポイと中に押し込めるなり、ピシャリと襖を閉めて座敷を離れてしまった。
取り残された幸村は、ただただ呆然と突っ立った侭
人を食ったような笑みを向ける男を、伊達政宗を凝視する。
これは、きっと先程佐助に飲まされた妙な薬が見せている幻影に違いないと
己を納得させてみようとしたが、その幻影の筈の男が「此処に来い」と手招きした時点で
これは確かな現実なのだと突きつけられた。
幸村はゴクリと唾を飲み、異常に流れる汗の滴を手の甲で拭って
よろよろと云われた通り伊達の傍に寄って腰を下ろす。
今や心臓は忙しく動悸を打ち、熱でも出始めているのか、頭にぼんやりと霞が掛かっていた。

「よう、久しぶりだな幸村。どうした、調子悪そうだな」
「っ…いえ、大事ありませぬ故…。それより、何故ここに居られるのだ…!片倉殿が、確か留守だと……!」
「Oh、sorry、そりゃ嘘だ。ただし小十郎を責めるなよ?オレが居留守を使えと云ったンだ。前の時もな」
「…なッ…!何故、そのような事を…!」

わざわざ斯様なあくどい真似をして、何の意味がある
某を掌の上で踊らせるのが、そんなに愉しかったのか!と吼えれば
いいや、アンタの反応が見てみたかっただけだ、と悪怯れもせず男が哂う。
口惜しい事に、伊達の言葉一つで右往左往する姿を、完全に遊ばれていたらしい。

「…ふ、不愉快にござる…!某っ、これにてお暇させて頂く…!!」

憤然として勢い良く立ち上がろうとした処、まァ待てよと腕を引かれ
体勢を崩した幸村は、殆ど倒れ込むように伊達の両腕の中に囚われる。

「ッ、は…離して下され!」
「なァ、寂しかったか?」
「…ッッ…!!」
「オレに逢えなくて、どう思った?無駄足踏んで上田に帰った時、アンタは何をしてた??」

しっかりと抱き込まれ、抵抗できぬ幸村の耳に、掠れた低音が滑り込む。
途端、ゾクリとした感覚が背中を舐めるように撫で上がって、幸村は焦った。

(ッ…声一つで、何をそんなに過敏に反応する事がある…!しっかりせよ…っ!)

このままでは、完全に伊達の独擅場になってしまう。
慌てて距離を取るべく腕を突っ張ろうとしたものの、その両腕に力が入らず、ブルブルと情けなく震えて適わない。

「…あ…、っ」

加えて、さっきから、否、もっと前から躯が熱くて仕方なく
気の所為であって欲しいが、下腹部ばかりに感覚が集中し
こんな時に、某は何を考えているのだと頭を振っても、熱は引くどころか昂って行く。
不自然な躯の変調に対する漠然とした不安が、ここで確信に変わり
幸村は苦しげに着物の衿元を掻き毟って、ゼェゼェと不規則に乱れる呼気を繰り返し
救いを求めるように伊達の涼しげな小袖の蒼を掴んだ。

「はっ…、はっ、…あつ、い…ッ…」

仄赤く上気した肌にびっしりと浮かんだ汗は、玉を結んで滑り落ちる。
伊達はそんな幸村の腕を掴んで持ち上げ、唇を寄せてねっとりと舌を這わせ
「オレは寂しかったぜ?アンタはどうなんだ?云えよ」 と、わざと枕席で囁くような声色を出した。
幸村のぬかるむ思考に、それは斯くも妖しく絡みつき、深い処にまで侵蝕。
まるで暗示に掛けられたかのように抗えず
数回、口を開閉させた後、熱に浮かされた時に発する譫言のように

「…さ、寂しゅうござった…」

艶っぽく頬を火照らせ、吐息混じりに明かした。 
色恋事に対してはクソがつくほど奥手な幸村が、斯様に容易く睦言を吐く事はまず無い。
しかも更に続けて、「上田の城に帰ってからは、毎日のように自涜(じとく)に耽って己を慰めておりました」、と
平常であるならば絶対に明かさぬ胸の内どころか、恥ずかしい秘め事までもを吐露し
そこで漸くハッと我に返った幸村は、己は一体何を喋っているのだと
上ずった呼気に喘ぎながら自身を一喝する。

「…い、今のは、忘れて下され…っ!某、今日はおかしい、、ッ」
「もう遅ェよ。聞こえた」

やっぱりそれが本心か、それに、アンタでも手すさびはするんだな。と厭らしく哂う伊達に
何も云い返す事ができなかった幸村は、全身に燻る熱がまた温度を上げた事に身悶えた。
これは、不味い。

「…っく、政宗殿、本当に、離して下され…っ、でないと、某は……!」
「誰が離すかよ。逢えなかった分まで、たっぷり可愛がってやると云っただろうが」
「…ッ!!」

最後の力を振り絞り、焼き切れそうな正気の糸を手繰り寄せる幸村を
まるで追い詰めるように、伊達は文に綴っていた言葉そのままを囁いて、唇を親指の腹で撫でる。
そんな事をされては、幸村の心の内で静かに鳴りを潜めていたモノが、むくりと起き上がって目覚めてしまう。
否、疾うに伊達の姿を目に留めた時から、閉じ込めておけるものではなかったのだ。
今更、蓋をしようにも、もう遅い。

「…そ、某は…幸村はっ…!政宗殿に、いついかなる時も、恋焦がれております…!!」

逢えなければ寂しい。いつも傍に居たい。その存在を独り占めにしたい。
この幸村だけをその隻眼に映していれば良いのだ…!

散々ひた隠していた積寂の情を、先程いとも簡単に曝け出してしまった事で、箍が外れてしまい
もとより、愛慕の念は人一倍強く、それが伊達に逢えなかったこの長い月日分
積もりに積もり、限界間近だった処へこの暴露である。即ち導火線に火を付けたも同じだ。
堪えて表に出さないようにしていた分、反動も大きく、荒れ狂って暴れる激情は抑えきれず
獣のような咆哮を上げて、とうとう緩んだ鎖を喰い千切り、暗い檻から解き放たれた。
日々押し殺していた其の獣の名は、本音。
それをまさに音を立てて爆発させ、その激しい勢いのまま
幸村は伊達の着物の共衿を掴んで引き寄せ、唇を押し当てた。
常の幸村なら、伊達からの口付けを息も絶え絶えに受け止めるだけで
自分から、まして進んで舌を入れて唾(つばき)を啜るなどということは
天地がひっくり返ってもしない事であり、

「…っん、ん…、、」

されど、自由になった獣は、酷く飢えている。止められない。
喰らいつくように必死に舌を使い、伊達が余裕を持ってそれに応えて絡めてくれると
益々夢中になって吸い付いて、口の端から伝う滴すら逃さないとばかりに、厭らしく濡れた赤い舌先で追って行く。
その見境無い行動に気を良くした伊達は、徐に伸ばした手を幸村の着物の衽に差し入れ
内腿の際どい処をゆっくりとなぞり上げた。

「…ッ!」

弱い点を的確に愛撫され、ぶると身震いして煽られた幸村も
負けずと攻撃的に伊達に組み付いて、勢い余って畳の上に半ば押し倒すように倒れ込み、腹の上に馬乗りになる。
それから、汗で張り付く着物を煩わしげに脱ぎ捨て
陽の光満ちる座敷に、下帯一つのあられもない格好で伊達に跨った幸村は
その下帯すら邪魔だと云いたげに、無造作に解き抜いてしまった。
ヒュ〜と云う下衆な口笛で揶揄されずとも、大胆な事をしている自覚は朧気にある。
しかしそれを遥かに上回り、容赦なく沸き立つ情欲があった。

「……つッ…」
「Hum、物欲しそうなツラしやがって…大したバイアグラだ」
「…っ、、ん、」

伊達が零した意味深な異国語にすら気が廻らないのか、急き立てられるように口付けを交わす幸村は
その合間に、天井を仰ぐ程に勃起して早くも先走りを垂らしている自身の牡に手を絡め
片手で握り込んで夢中になって扱く。
今にも弾けそうに膨らみ切るマラ先を伊達が戯れに指でなじれば、背を撓らせ髪を振り乱し

「っう…、政宗殿…ッ…」

切羽詰った表情で声を荒げると、伊達が見ている目の前で
幸村は自らしゃぶって濡らした指を、己の臀の穴に強引に捻じ込んだ。
もはや理性などと云う邪魔なものは、貪婪な色情を欲する獣の牙に原形なく喰い荒らされ
厄介な見栄や矜持と云った足枷も、届かぬ場所で粉々になっている。

「…あ…、く…ッ、、」
「こいつはイイ!そこらの女郎より、よっぽどエロいぜェ?幸村ァ」
「ふ…っ、う…ゥ…ッ」

暴走する幸村の様に興が乗ったのか、好きにしろと傍観を決め込む伊達の舐めるような視線の中
幸村は興奮と恍惚の狭間、その無意識の内に
いつも伊達がしているように、臀に突っ込んだ指を激しく前後させたり、ぐるりと円を描いて拡げたりを繰り返した。
くちゅ、と淫猥な音を立てて、己の指に熱い肉襞が纏わりつく。
それを幾度も擦って割り開くと、覚えのある快楽に近いものが拾えるのだが、完全ではなく
いくら指を増やして突き動かしても、物足りない。 もどかしい。
もっともっと、満足できる刺激が欲しい…

「ん…、ン…ッ!」

早い段階で辛抱できなくなった幸村は、もう我慢しきれぬと、解れた菊座から指を引き抜き腰を上げ
片手で手早く扱き上げ硬くさせた伊達の牡を支えて宛がい、焦ったように腰を下ろした。
半熟れの入り口は待ちきれないとばかりに亀頭を迎え入れ、飲み込み
その、肉を穿つ感覚と云ったら、堪らない。
情事の度、一方的に事を進める伊達に馴染むまで待ってくれと懇願する幸村も
此度は詮ない事、全てを咥えきるより先に、腰が性急に動き始める。

「っぅあ、…ッく…!…う、ぅ…っ」
「おいおい、アンタそそっかしいにも程があるぜ。きっちりケツを最後まで下ろしな!」
「…ッヒ、あ…!!」

目先の快楽に目が眩み、浅い所で躯を上下させる幸村の腰を掴んで引き下ろし様
窘めるが如く乱暴に一突きした伊達により、一気に深くまで杭が打ち込まれる。
悲鳴を上げ仰け反った幸村は、不意な質量を奥まで感じた瞬間、

「…あ、あぁ、…ぁ…っ!」

吐精していた。

「HA!漏らすのが早ェな幸村。だらしのねェ……But、」
「、、っあ、ぅ!!」

吐き出したにも関わらず、萎えるどころか再びハチ切れんばかりに膨らむ牡の白く濡れた鈴口を
グリと強く擦った伊達は、濃艶に眸を潤ませ悩ましげに荒い呼気を繰り返す幸村を
もう一度強かに下から揺すり上げる。
そんな事をされては、もう幸村に歯止めは利かない。

「っん!…は…ッ、あぁ!、あっっ」

俄かにビクリと引き締まった菊座に、ツッと子種だか汗だか判らぬものが伝ったのを切っ掛けに
身も蓋もなく、本能が求める侭に身を任せ
寝そべった伊達に猥りがわしく股を大きく開いて跨り、自ら浅ましく上下に揺れ
男の股座をゾクリとさせるような声で啼き、その卑猥さと云ったら凄まじく、手に負えない。
伊達は小さく口端を舐め上げると、幸村の動きに合わせ下から泣き処を狙い澄まして突き上げ
幸村はと云えば、頭の芯まで溶ける熱に血も肉も沸き立ち
勝手に勃起して先走りを垂らす牡と同様、激しく交わりたいという衝動は止まる処を知らず

「あぁッ、あァ…!んっ、ン…ッ!」

日頃は健気に嬌声を噛み殺そうとするのが嘘のように憚りなく喘ぎ散らして
挙句の果てには、もっと激しく突いて下されとか
政宗殿、政宗殿、と狂おし気に名を呼びながら、好きだとかお慕いしておりますとか云々
想った事を躊躇いなく口に出し、一心不乱に伊達を求めて躯を開く。
その淫靡な艶姿は然ることながら、素面では決して云わぬような数々の甘言は、大いに伊達を愉しませた。

真夏の蒸し暑い日の、しかも真昼間に
男二人して汗だくになって絡み合い、情事に耽る乱交ぶりは、もはや度し難いものであったが
淫らな声で啼き止まぬ幸村がとうとう気を失うまで続いた。

 

―――――――――――――

 

後日。

「…佐助ェ…、某に一体何を飲ませた…」

信州上田城にて、愛槍朱羅を手にした幸村が
まさに修羅の形相、地を這うような声で佐助に詰め寄っていた。

「や、やだなァ旦那、怒らないでよ〜、ちょっとした媚薬だって…!」
「っび、び、びびッ媚薬だとォ?!?!」
「しょーがないでしょ!だってさぁ…!」

事の始まりは、「幸村を焦らしたらどうなるか知りたい」という伊達の一言からだったらしい。
何を今更そんな事を、と片倉は反論したようだが
唯我独尊を体現しているような、あの城主である、梃でも動かないのは目に見えていた。
そして例の、居留守を使い約束を反故にする、に繋がったという訳で。
まぁ幸村とて、日頃「破廉恥破廉恥」と云う割には、中々恋情深い面も持ち合わせているし
きっと人並ぐらいには、逢えなかった事を嘆くなり何なりするかと見当をつけ、事の成り行きを見守っていたけれども
予想を裏切り、あっさり信州へと引き返したので、さすがの片倉も吃驚した。
無論、伊達にとっては面白い筈がない。
二度目はどうかと試してみれば、片倉に不在の理由を問い詰めただけで
これまた文句も云わずに帰ってしまい、いよいよ伊達の機嫌は悪くなる。
実際のところ、幸村の態度は淡白であり
後になっても怒りや不満の文すら寄越さなかったのだから、伊達の不機嫌も仕方がないだろう。
とは云え、幸村がそうやって言葉に出さずとも、顔や雰囲気で一目瞭然
周りの片倉や佐助から見ても、伊達に逢えない度、大層拗ねて不貞腐れているのは判っていた。
当然、幸村の性格を良く知っている伊達だ、そんな事は十分承知している。
云わずもがな、己に対する恋慕の情が破裂しそうなほど膨れ上がっていた事も。
しかし、どうしても本人の口から直接本音を云わせたい
と三度目の居留守の時、とうとう最終手段に打って出る。
つまり、素直ではない幸村を、強制的に素直にさせるべく、
荒療治を施そう(しかも、よりによって媚薬の力で)と云う事にあい成って、佐助に助力の声が掛かったのだ。

「いや、オレ様だってね、そんなバカな事は断りたかったよ?」

でも、奥州筆頭とその右目の頼みなんて無下にできないでしょ!
だから、やむ無く力を貸したのだ、と佐助は懸命に弁明した。(勿論、報酬に釣られた事は内緒にして)

「……っだからと云って、あんな…、あんなッッ…!!」

それとこれとは話が別。
被害者である幸村の脳裏に蘇るのは
媚薬の所為とはいえ、その場の勢いで口走ってしまった、赤面ものの睦言の数々と
もう思い出したくもない、慙死して当然と云っても過言ではない己の痴態。
それから、事後、目が覚めた時「ようやくアンタの本音が聞けた」と
怖い程上機嫌な伊達に、丸二日に亘って、しこたま可愛がられた臀と云わず何処と云わず、全身の痛みである。

「まぁ旦那もさ、これに懲りて、もうちょっと自分の気持ちに正直に…」
「うううううるさい!!何が正直だ、この…っ」
「ッわわ、危ないって旦那!マジで当たったら死ぬっ…!、あ゛」

本気で槍を振り回す幸村の恐ろしい一撃を、紙一重で避けた佐助の懐から、ボタリと何かが落ちた。

「…ん?…何だこれは」
「あー!ちょっ、待って旦那…!」

屈み込んで確かめてみると、白い紙切れに何かが包んであるようだ。
拾い上げて開いてみれば、見覚えのある小奇麗な字でしたためられた礼状と、大判金が一枚。

「…だ、旦那?落ち着いて?オレ様決して褒美につられたワケじゃ…!」
「、、ぬぁ〜にが『やむ無く』、だァ!!この守銭奴忍め…!ッ烈火ぁあぁああああ!!!!!」

二槍に纏う炎よりも顔を真っ赤にして、逃げ回る佐助を仕留めんばかりに技を繰り出す幸村であった。

 

 

【終】


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あとがき

10000hitキリリク小説になります。
媚薬を用いた襲い受け幸村ということで、幸村に頑張ってもらいましたv
はい、仰るとおり、ありきたりな上に大変甘いですね、、うっかりですorz
お気に召しますか心配ではありますが、奉げさせて頂きます。

2010/04/07  。いた。