※暴力的表現(拷問)あり。ご注意を…!

 

 

『弦月の烙印2』


どれ程の刻が経ったのか、定かではない。
相変わらず地下牢の中は一定した松明の灯かりのみで
今、日が昇っているのか、或いは沈んでいるのか、またそれを幾度繰り返したのか、知る事は叶わず
手枷に吊るされた幸村は、そうして漫然と流れる時の中
胸の内を襲い来る焦燥と絶望とに、交互に心身を苛まれていた。
と云うのも、捕まったあの日以来、内情を吐かせる為の新たな拷問に掛けられるでもなく
国に生かして還す代わりと称して、何ぞ無体な要求をされるでもなく、ただ伊達に犯されていたからだ。
最初に拷問人から受けたような、情報を引き出す為の拷問ならば、どんなに惨いものだろうとも
死人に口なし、ただ命果てるまで黙すれば良いだけのことなのだが
何を訊こうともせず、無理矢理にこちらを手篭めにする陵辱は、堪えようもなく苦しい。
情報が欲しいのでなければ、一体何の目的があっての事なのか、想像もつかぬが
もしかすると、こうしている間に、つまりは己の与り知らぬ処で
国に居るお館様に直接、交渉状などを送りつけられているやも知れぬ。
だとすれば、とんだ迷惑が掛かっている筈だ。
なれば、すぐにでも自害をと、既に腹は括ってあるのに
両の腕を吊られ、口に猿轡を咬まされては、どうする事もできず
多大な時間を鬱屈した気分で送る、無為。
それが今、もっとも幸村の心胆を寒からしめていた。

「……ふ…、ぅ……っ」

そして一番残酷なのは、強制的に食事と水が与えられることであった。
要するに、殺すつもりはないという事で、それは即ち、そう云う事だ。
こんな屈辱があってなるかと、悔し涙を流したのは、半刻と前でない。
もう暫く辛抱をすれば、佐助あたりが助けに来るのだろうかという希望も捨てきれず
されど、いつになるかも判らぬそれを、ただ待つだけの身という情けのなさは、やはり慙死に値した。

「……っ、…く」

差し当り、例の格子戸を抜け、目の前に悠然と歩み寄って来た隻眼の男に
幸村は「殺せ」と、睨み上げる眸に覚悟の光りを湛え、訴える。
口に出さずとも、その気迫は壮絶と云え、伊達が察するのも容易であった。

「Hey、折角逢いに来てやったってのに、そんなツレねぇ顔すんなよ」

いつもみたいに、仲良くしようぜ?と厭らしく口端を上げる男に
ゆったりと頬を撫でられ、幸村は総毛立った。
顔を合わせれば必ず強いられる行為が、嫌でも思い浮かぶ。

「…や、め…!ッ…っ」

馬にする轡に似た細い木製の猿轡に歯を立てながら、なんとか言葉になった非難の声を上げるものの
意に介さぬ伊達に着物の共衿を割り開かれ、粟立つ肌に唇が吸い付く。
奔った悪寒に堪らず身を捻ろうとするが、宙吊りの躯は思うように動かない。
恐怖で戦慄く幸村を、明け透けに嘲る含み笑いが、小さく石畳に木霊した。

「怖いか?」
「っ…、!」
「いいねェ…アンタのそういう顔が見たかったンだ…」
「…!っひ、あ…ッ!」

悦に浸る伊達に乳先を齧られつつ、縮こまる股間を手加減なく握り込まれ、幸村は悲鳴を上げた。
仰け反った拍子に鎖の触れ合う耳障りな音が響く。
恐ろしかった。
ただ、目の前の男が。
常闇の隻眼が、己の全身に纏わりつき、そのままズルズルと影に引き摺り込まれる感覚さえ覚えた。
生まれて初めての恐怖。
戦場で感じる死の匂いよりも、遥かに悍ましかった。

「ッぅう…!っぐ…、、」
「…嗚呼…もう…本当にアンタは完璧だ…」

くぐもった呻き声を上げる幸村の股座から手を離し、今度は至高の宝玉に触れるようにそっと躯を抱き寄せると
愛でるように滑らかな肌と精美に隆起した筋肉を隈なく撫で廻して
うっとりと吐息を零し、恍惚と囁いた伊達は、続けて片手を彷徨わせ、幸村の長い髪房を弄ぶ。
顔に浮かんだ狂喜は、くっきりと唇を弧に歪ませていた。

「オレはずっと、アンタが欲しかったンだ…」


―――幸村を、たった一度、いつぞや偶然に見たのは、何処であったか
血みどろの戦場で、累々たる屍の上に凜と仁王立つ鬼神が如く、紅蓮の後姿だった。
美しい、と目を奪われたのは数瞬か、それとも数刻か
先にある目的も忘れて足を止め、ただ物陰から、穴が開くのではなかろうかと云う程に見詰め
目の前で繰り広げられる他所の陣中に、割って入る無粋をしたいと願い
まだ名も知らぬその男と死闘する相手が己だったならと、あらぬ妄想をした。
その場で掻っ攫おうと動いた躯を家臣に止められなければ、間違いなく拐かしていただろう。
惜しむべきは其処だ。
城に帰っても政務を仕切る時も満たされず、指を咥える日々が続き、寝ても覚めても頭に浮かぶのは紅蓮の男である。
すぐにも手を尽くして調べさせ、それが敵対する武田の将にて
しかも日本一の兵と名高い真田幸村だと云う事が知れた。
その途端、臣達から「諦められよ」と進言を受け、何故だと問えば
愚問にて候、敵将というのは然もあらん、あの信玄公が溺愛する愛弟子を奪うなど
出来得る筈がございません、と首を揃えて云うのだ。
そもそも、そんな事をすれば戦になる、と。

しかし、それが一体何だと云う?

戦が怖くて一国の主が務まるか。
そうして周りが見えなくなる程には、熱を上げていた。
何としても、欲しい物は手に入れたい。
と、画策に頭を捻っていた所へ、期せずして向こうから手の中へと転がり込んで来たのだ。
これを天の配剤、否、己の強運と云わずして、何と云う。


「是が非でも、オレのモンになってもらう…」

もうこの手に捕らえてしまったのだ、絶対に逃がしはしないと隻眼に淀んだ光を燈し
伊達はするりと幸村の長い髪房を絡めた指を口許に引き寄せ、ジャリとその栗色を食む。
微かに甘いとすら感じ得たのは、果たして己の欲望が成せる技か。
存分に艶を味わいつつ顔を上げると、ワナと震えながら
この世のものではない者を見るような目でこちらを見る幸村と視線が交わる。
その硝子細工のような透き通る眼球さえ、抉り取って舐めしゃぶりたいと劣情を膨らませる己は
気でも違っているのかと、さぞ心中で罵られている事だろう。
別段、構うに及ばない。
狂わせているのは、他ならぬ目の前の幸村自身だ。

「…アンタに、唾つけとかねェとな」
「、、っ?」

一生消えない印をな…と呟きながら、一度幸村から離れた伊達は
予め用意していた細長い木箱を開け、中から何やら鉄の棒のようなものを取り出す。
よく見れば、模様の入った平らな丸い鉄板に、後ろから柄のような棒が引っ付いているのだ。
焼きごて…否、家畜や罪人に押し付ける焼印に、よく似ている。
似ている所か、その物だ。
そんな物を一体どうするつもりだと凝視していると、薄く厭な笑みを浮かべる男が
勿体振った動きで壁際の松明の傍まで移動し、ジリジリとそれを炙り始めた。
ここまで来れば、否が応でもその意図が知れる。
幸村は音を立てて血の気が引いて行くのを感じた。
ぷつぷつと脂汗が浮かぶ。

「Ah〜いい具合になってきたぜ…」
「…ッ!!」
「さァ、幸村…どこがいい? 腕か、腹か、尻か…」

それとも…、と十分に熱し終えた焼印を、肌に付かぬ一寸の間際で、云った各部位にゆっくりと這わせながら
ニィと更に笑みを深くする男を見て、幸村はヒクと息を詰めた。
また、あの筆舌に尽くし難い激痛を味わうのかと思うと、ガタガタと躯が震える。
その怯えに引き攣る幸村の表情を、愉悦を湛え眺める伊達は、次の瞬間
剥き出しだった幸村の右太腿の内側に、容赦なく焼印を押し付けた。

「ッッッグゥ、ア゛!アァアア!!!!」

石畳に凄まじい絶叫が迸る。
同時に、肉が焼け焦げる異臭が充満し、一時、拷問部屋は凄惨な有様となった。
幸村の吊られた全身は激しくもんどり打ち、手枷を繋ぐ鎖がじゃらじゃらと煩く音を立て
死に物狂いに噛み締めた猿轡が無ければ、叫喚の内に舌を噛み切っていたに違いない。
溢れて止まらぬ涙は口の端から伝う唾と混じり、顎先からボタボタと滴になって落ちて行く。
そこで伊達は、漸く押し付けていた焼印を離した。

「っはー…ッ!はー…ッ…!!」
「Wow、我ながら完璧だ」

白い内腿にくっきりと浮かぶ酷い痕は、ただの火傷ではない。
子供が握った拳程度の大きさの、真ん丸い円の中には、伊達の兜の前立てを模したような弦月が浮かぶ。
まるで、自身の所有物だと知らしめるような印を見て、幸村は貶辱にも似た絶望を覚えた。
烙印。
罪人でもない己が、斯様な仕打ちを受けるとは、末代まで祟っても飽き足らぬ。
必ずこの手で百度は殺してやると、荒い呼気を繰り返しながら
殺意をすら込め、目の前の非道極まる男を睨み上げた。

「Oh、ンな恐い顔すんなよ。じきにアンタも、この印の意味を思い知る」

よくもいけしゃあしゃあと、そんな事が云えるものだ
これ程までに人の尊厳を踏み躙る醜悪な所業など受けた事はない
幸村は燃えるような憤怒を身に滾らせ、歯軋りする。
伊達はその様子を鼻で嗤うと、持っていた焼印を足元の水桶に突っ込み
こちらを呪い殺さんとて睨み据える幸村の背後に廻り込むと
初日に剥ぎ取ってそのまま、下帯を着けさせていない下肢を抱え上げ

「アンタの叫び声聴いてたら、勃っちまった…」

と、下劣にも怒張した股間を押し付けながら、幸村の耳朶に歯を立て
ビクと頑なに力の入った腫れの引かぬ菊座に、着物の間隙から取り出した一物を宛がい
ゆっくりと捻じ込んでいった。

 

 

【3へ続く】


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あとがき

拷問が焼印だけなので非常に物足りないです。
指とか、爪だけでなく折るとか詰めるとか
下も、道具で拡張とか(笑)、とにかく幸村を啼かせる為に色々したいので、頑張ります!

2009/12/24  。いた。