※性描写あり。ご注意を

 

 

『竜の日常』長編小説「Half Dragon」番外編。時間軸:天下統一後〜幸村が三成に攫われる前)

 


明障子から射し込む暖かく柔らかな陽の光に照らされる朱燐の間で
しゃんと背筋を伸ばして正坐し、筆を握って文机に向き合う幸村が居る。
戦場でも見せる凜とした落ち着きの所為か、それとも竜の半身としての自覚と風格の為か
静かに筆を滑らせる所作は大人びて、中々様になっていた。
蒼い結紐から項を隠しつつ左の肩口へサラリと一筋流れる髪房すら美しい。
一方その背後には、ほとんど隙間無くぴったりと密着し
抱き込むように左腕を幸村の細腰に廻して右肩に顎を乗せ凭れ掛かり
胡坐を崩した足の片膝を行儀悪く立てて生欠伸を噛み殺さぬ男が一人。


「政宗殿、そろそろ休息にした方が…?」
「…ん?いや、いい。それより、アンタだいぶ字が上手くなったじゃねェか」
「っまことにござるか?!」


真剣な顔をして幸村が筆先を走らせていたのは、支城を預けてある者へと宛てた朱印状である。
利き腕のない政宗の代筆だ。
身の回りの世話は勿論そうだが、こうした政に関わる事でも、幸村が補佐をしており
云わずもがな、家臣達の誰からも異論などあろう筈もなく
寧ろその役目は幸村以外にありえないと、皆首を揃えて頷いた。
昔の頃ならばいざ知らず、魔王を打ち倒し見事日ノ本を統一し
天下人となったのは、政宗とそして幸村、二人の力あってこそ。
今や幸村の立ち位置は政宗と共に最頂点である。
「政には疎いから」と、一歩後ろに引いては居るが、誰もが認める立派な主君だ。


「達筆であられた政宗殿の代書ゆえ、拙筆など度し難きこと…
 政宗殿の為にこの幸村がする事は、何事であれ完璧にと、習練して来た甲斐があり申した」
「Ah−…そういや暇を見付けりゃちょろちょろと、何か書いてやがったな」


なるほど、あれはオレの為だったのか。
と意図して低い声で囁けば、見る間に幸村の耳の端が紅くなる。


「…So cute」


たかが代筆にも努力を惜しまぬ健気さ
そして今この瞬間、それに先程褒めた時、面映げに肌を紅潮させる素直さはもう…


「アンタのそういう処、堪ンねェぜ…?」
「、っ!」


ニヤと片方だけ口角を上げる独特の笑みを浮かべた政宗は
咬んで下さいと云わんばかりに真っ赤に色付く幸村の耳へ
ワザと吐息と唇を触れさせながら掠れた声色を流し込む。
途端、ゾクリと竦むように震えた躯は、この声にめっぽう弱い。
されど幸村は「はっ」とし、慌てて首を振って居住まいを正した。
此の侭流される訳にはいかない。
否、流される事も吝かでないが、仕事が捗らないのは宜しくなかった。
根が実直勤勉な幸村としては、先に全て済ませておきたいし、どうせなら心置きなく睦み合いたい。


「もうすぐ書き終わりますゆえ、…あっ、どうか今少しだけご辛抱を…っ」
「……しゃーねェな…」


正直、その真面目さすら愛おしいと思うている辺り、己も末期だなと政宗は静かに鼻で哂い
名残惜しげに柔らかな耳朶を前歯で食んでからゆるりと舌を這わせ
ちゅると大袈裟な音を立てて吸い付きながら唇を離した。
此処に居ると、例え政の最中であってもついつい幸村にちょっかいを出してしまう。
この間までは、きちんとした執務室で政務に勤めていたのだけれど
どうにも殺風景だし、何やら堅苦しい雰囲気で息が詰まって仕方なく
おまけに多少なりと家臣の出入りもあるので、幸村に悪戯しようにも
当の幸村が異様に恥ずかしがって(普段、人目を憚らず手を繋いでいる癖に、だ)
大人しくしているしかない政宗の心境は無論、面白くない。
「つー訳で、desk workは朱燐の間でやる」と早々に云い出したのは
権力濫用という名の我侭以外の何物でもなかった。
いよいよ引き篭もった儘出て来なくなるのではなかろうか…
という片倉並びに家臣連中の心配も何処吹く風
一日の大半を朱燐の間で幸村と共に過ごして居たかと思ったら
今度はお忍びで城下町へ遊び歩いたりする其の自由奔放さには、まっこと困ったものだ。
まぁそれで国が廻っているのだから、平和である証。
(少なくともやる事はやっているし、とてつもなく強面の有能な重臣も居る)

それはさておき、


(……Ah−…つまんね…)


手持ち無沙汰に栗色の長い髪房を梳いては撫で、指に遊ぶ感触を楽しんで居たものの
一ト切りと経たぬ内に、早くも痺れを切らした政宗は、ペロリと口端を舐めると
散々愛でていた髪を手放し、するりと幸村の胸元に手を這わせ
布地を介しているにも関わらず、的確に乳頭を捉え、なぞり上げて抓った。


「、つッ!、あ…?!」


いきなりの不埒に、ビクリと躯が跳ねた拍子に筆が大きく乱れ
折角半ば以上出来あがっていた書状の途中、字がミミズのようにのたくり台無しになる。
何て事を!と泡を食う幸村に構わず、政宗は「待て」の出来ぬ犬さながらに
目の前の肢体へ襲いかかると、まずは慣れた身のこなしで畳の上へと引き倒し
瞠目し見上げて来る視線を余裕の表情でしっかりと受け止めながら
組み敷いた一回り小さい体躯の両膝の間に身を割り込ませた。


「なァ、やっぱbreak timeにしようぜ?」
「…っ、さっきは、いいとおっしゃったではありませぬかっ!
 それに、あともう少しで終わっていたのに…!」
「あん?一息ついたら、っつーか一運動済んだら、書き直せばいいじゃねェか」
「!っあ、ちょ…ッ、、」


したり顔で云ってくれるが、そもそも休息の意味が甚だ違うだろう。
しかも其の一息ならぬ一運動がとてつもなく長くなるのは明白かつ経験済。
別に、其れ自体は厭な訳ではないものの
ただ、誰にも任せられぬ代筆を仕上げるのは
今にも喰われそうな幸村の役目で、そして其処から先は片倉だ。
大切な朱印状の受け渡しを責任もって遣ってくれるのは彼であるから
さっさと書き上げてしまわねば、待っている片倉に託ける事が出来ないではないか。
其れは申し訳なさ過ぎる。


「政宗っ、殿…!こんな調子では、片倉殿に迷惑を…っ」
「ンだよ、オレより小十郎が大事だってか?」
「っ、そう云う訳では…!」


そんな云い方、全くもって卑怯である。
幸村が優先するのは、何があろうと政宗ただ一人。
判っている癖に、わざと左様な事を云って、此方の動きを封じるのだ。
いや寧ろそんな心算ではなく、結構な本気で悋気を起こしている可能性の方が非常に高い。
怜悧淡白に見えて実はこの男、恐ろしいほど心が狭く嫉妬深い。
いつであったか、豊臣との盟約の折に使者として参じた半兵衛が
危うく倒れそうになった幸村を支えて助けた事があるのだが
たったそれだけで激しく不機嫌になり、常軌を逸した仕置きをやらかした過去がある。
此処は観念して身を任せた方が得策やも知れぬと、幸村が悟って諦めるのは早かった。
ついでに、急降下しつつある政宗の機嫌をすぐに直しておくべきだろう。
後はもう野となれ山となれ。


「…判り申した、政宗殿の好きにして下され。この幸村は、政宗殿のモノゆえ」
「Great…誘い文句と受け取るぜ?」
「よしなに…」


途端に喜色を浮かべる男の頬に手を差し伸べ、云う通り、誘うように引き寄せれば
案外貪るようなものではなく、柔らかな口付けが落ちて来て
互いの唇の感触を楽しんでから、どちらともなく薄く口を開き
伸ばした舌先をじんわりと絡め合う。
覆い被さる政宗の前髪が額をくすぐり
閉じていなかった双眸をゆるりと眇めると、視線を交えていた隻眼が細く笑んだ。
どうやらさっきの一言に余程効き目があったらしい。かなりの上機嫌である。
我ながら、三年以上も共に居れば、扱い方が判って来たと
幸村は内心頷いて、次第に卑猥な舌の使い方をする男に合わせ、接吻をより深いものにする。
その合間、片手の政宗がやり易いように、自ら着物の袖から腕を抜いて前を寛げ
下帯を手探りで探し当て解き、同様にと政宗の方へ手を伸ばし
既に着崩れつつある着物の衽の奥、今朝方幸村自身がきっちりと結んだ下帯を解き抜いた。


「Thanks」
「You're welcome、にござる」


少しだけ覚えた異国の言葉を口にすれば、更に男の気褄は良くなって
首筋に吸い付き痕を残し(いつものように、ワザと衿から見える処に。散々諫めたが聞く耳を持たない)
帯紐が辛うじて留めている着物の肌蹴た衽から露わになっていた太腿をいやらしい手付きで撫で上げ
早くも興奮気味に熱を持つ幸村の一物に触れるなり、勿体振らぬ最適な愛撫を施す。
日頃は焦らすように与える快楽を、今日は惜しみなく授けてくれるらしい。
それは嬉しいがしかし、呆気ない程に急速に高められていく躯が何ともゲンキン過ぎて
喘ぐように気息を吐き出し、しきりに溢れ出る唾液を飲み込んでいると
首のあたりを這っていた筈の政宗の舌が唐突に乳頭を捉え
既に凝っていた其処を淫猥に突ついては舐め上げる。


「ん…!、んっ」


途端洩れた声の、何とも猥りがわしい事か。
政宗は口端を吊り上げて徐に上体を起こすと
傍の文机の上にあった筆箱の中、墨の付いていない綺麗な筆を一本取り上げ
整った毛先の方を幸村の半開きの口元へと差し出す。
つまり舐めろと云う事か。
察した幸村は、いつぞやにねぶらされた扇子を記憶に思い出しながらも
否を唱える事なく唇を開き、続けて口内へと入って来た筆に舌を絡める。
瞬く間に唾液を吸い取った其れは、一処に止まらず
然り、政宗が円を描くように動かしたり左右に泳がせたりするので
合わせて幸村の舌や頬の内側、敏感な上顎や舌の付け根も掻き回され
まるで政宗の舌先に蹂躙されているような錯覚すら引き起こさせる。
知らぬ間に荒い吐息で熱心に筆の先を己の舌で追い掛けまわしていると
一つ小さく哂った政宗が不意に筆を引き抜いた。


「…ンぁ、、」
「Ha、その物欲しげな顔、ソソるぜ…?」


ニヤと良からぬ笑みを浮かべた政宗は次いで、幸村自身の唾でじっとりと重く濡れた筆を
あたかも白紙に一筆を下すが如く、幸村の肌に滑らせた。


「ひ…!、くっっ」


筆をしゃぶっている時、きっとこのようにして使われるのであろう事は予測していたが
脇腹を撫で、臍を弄り、腹へ胸へと自由に這い回る毛筆の何たるむず痒さか。
堪らず身を捩って逃れようとするも、胸の尖りに辿り着いた筆の濡れた先端で
器用にクリクリと性感点を甚振られては力が抜けて、「…ふ、…あ、、」と情け無い声が出る。
果たして奔ったのは擽ったさではなく、明らかな過悦。
ゾクと身を震わせつつ、これは不味いと縋るように政宗へと視線を投げれば
明け透けな情火を燈す隻眼に射抜かれ、いよいよ身動き出来なくなった。


「…ぅ…左様な、目……反則に、ござる…っ!…は、ん…ッ」
「アンタこそ其の乱れよう、エロいにも程があるぜ」


云いながら、政宗が尚も筆で攻め立てると
幸村の紅唇から洩れる官能的な呼気は上擦り、薄っすらと泪の膜に濡れる双眸は蕩け
身の内で上がるばかりの熱により、肉付きの良い躯は汗ばみ火照って仄かに上気し
腹に向かって反り返る牡は先走りまで滲ませていた。
この凄艶極まりない愛おしい半身をどうしてやろうかと
政宗はそそけていた筆の毛先を口へと含み、先端を整えてから引き出すと
幸村のふっくらと張った睾丸、それから竿の裏筋を下から上へと思わせ振りに辿った後
あろう事か、透明な雫を滴らせる小さな鈴口へと侵入させた。


「…ッ!ヤ…っ、…ぅあ! んぅ…ぅ…!!」


前回ミミズに嬲られた時に比べれば、受ける衝撃は比較にならないが
尿道を巧みに擽られると、強過ぎる刺激が幸村を十二分に翻弄する。
無意識の内に、政宗の手を止めようと伸ばしかけた両手は
されど「大人しくしてな」という言葉によって、畳に縫いとめられた。
身悶え我を失いつつも、従順に政宗に従い
悩ましげに眉を寄せて切なげに畳に爪を立てる様は
的確に政宗の胸を、否、男の劣情を打った。


「幸村…テメェどんだけオレを煽るつもりだ?」
「、…あ!っひ…ぁあッッ」


あまりのいじらしさに辛抱堪らなくなった政宗は筆を放り捨てると
己の牡を掴んで幸村の菊座へと押し当て、早急に埋め込む。
細く幸村の先走りの糸を引かせつつ転がっていった筆の事など、もうどうでもいい。
昨日も散々可愛がった其処は慣らさずとも容易く政宗を受け入れ
その何度味わっても飽く事ない、熟れた肉襞の柔らかさたるや、まさに筆舌に尽くし難い程心地良い。
最初から手加減なく腰を突き込むと、幸村の上体が小気味よく仰け反った。


「はっ、あ! ッん、…ん…!」


幸村も幸村で、漸く筆攻めが終わったのと、昂る処まで昂った躯に
欲していた決定打を打ち込まれ、安堵にも似た充足感に満たされていた。
もっと政宗を奥まで感じようと、浅ましく腰が揺れてしまうのも、最早いつもの事で
まして泣き処を遠慮なく突かれてビクビクと勝手に跳ねてしまう躯はどうしようもない。
抉るように貫かれるたび、自重する事のない嬌声が
派手な衣擦れの音と共に、湿気た熱気が充満する座敷に篭もる。
こうなればもう、幸村の頭からは綺麗さっぱり代書の事など吹き飛んで
政宗との時間に耽溺。


「あぁっ、…あっ!、ンッ、あ…っ!」


そんな艶めく朱燐の間の、襖一枚隔てた向こう側で、眉間に皺を寄せ単座して居る男が一人。
云わずもがな、片倉である。
とっくに出来上がっているべき筈の朱印状を取りに来たのだが
案の定というべきか、激しく脱線している二人に(十中八九、政宗の所為だという片倉の判断は正しい)
とてもではないが声を掛けられる状況ではなく
もう少しすれば一区切りつくだろうという思惟のもと
途中で窘めもせずに待っているのは、どうせ何を云っても政宗に一蹴されると判っているからだ。
引っ切り無しに洩れ聞こえて来る幸村のあられもない声を聞きながら
ずっと待ち続けるというのは相当の、そして色んな意味での忍耐を要するのだけれど
だからと云って此の場から離れてしまっては、話を切り出す時機を逸し
(放っておけば若い二人はいつまででも行為に没頭する)
更に仕事が滞ってしまうだろう。それだけは避けたい。


(……もし胃に穴が開いたら、政宗様の所為ですぞ…)


恐らく此方の気配に気付いていながら、堂々の無視を決め込んでいる確信犯に
ありったけの恨み言を心の中で訴え
最近キリキリとよく痛むようになった胃を押さえる片倉であった。


―――因みに無事に朱印状を受け取ったのは、それから半刻も後の事。
朱燐の間に、政宗の技に負けず劣らずの凄まじい雷が落ちたのは、云うまでも無い。

 

 


【終】


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あとがき

素敵な絵を描いて下さった、くろすけ様への御礼小説ですv
「半竜で三成に幸村がさらわれる前の日常でベタ甘な話」という事で
引き篭もりイチャイチャ夫婦(笑)を目指しました^^…ベタ甘になって……ますか?(不安)
相変わらずの必殺8O1クオリティ&エ口は拙宅の標準装備ですすみませんorz

2011/10/01  いた。