※性描写あり。ご注意を




『Tranquilizer4』

 

奥州は米沢城へ到着するなり、幸村は謁見の間へと通された。
余程甲斐の返事が遅いことに痺れを切らせていたのだろう
然程待たされることなく、「上様の御成り」と襖が開いたので、幸村は慌てて平伏する。
それから上座に腰を据えたであろう城主から、「面を上げろ」と打切棒に許しが出たので

「…お初に御目にかかる、某、甲斐は武田信玄の使者として参った、真田幸村に御座る」

と、伏せていた顔を上げた瞬間、固まった。

「…遠路遥々ご苦労だったな」

何故か、よく見知った男が、上座で胡坐をかいた片膝に肘をついている。
その一国一城の主らしからぬだらしのなさよりも、一体どうしてあの男が、
町の四つ辻斬りが「上様」として上座に居座っているのか、何かもう根本的な事に愕くあまり
幸村は続きの口上の文句も忘れ、陸の上の魚のように口を開けたまま硬直していた。
同じく、四つ辻斬り、否、奥州筆頭伊達政宗の顔も見事に引き攣っている。

「……政宗様?」

互いに顔を見合わせたきり、動かなくなってしまった二人を怪訝に思い
控えていた片倉が声を掛けると、此処で初めて我に返ったらしい伊達と幸村は
何ともぎこちなく盟約の件を切り出した。

しかし、たかが書状の受け渡しに、ありえない程時間を食ったのは云うまでもない。
(いちいち片倉が水を注さなければ、互いに無言になり話が進まなかったからだ)

「…確かに受け取ったぜ」
「では…」
「ああ、盟約成立だ」

漸く書面を検め終えた伊達が、短く答え、これでやっと終いである。
無事、強国同士が同盟を結び得た事とは別に
ホッと一息吐いたのは、何も伊達と幸村だけではない。

(…この二人、一体どうしたんだ)

片倉含め、その場に居る全員が皆一様に同じ事を思っていた。
しかも、更に愕く事に

「オマエら、オレとコイツ残して、とっとと出て行け」

城主から辛辣な命令を浴びせられ、何が何やら判らぬ内に
謁見の間から追い出された。
口々に何だどうしたと動揺を口走るが、ここの城主の傍若無人ぶりは今に始まったことではないと
皆すぐに納得し、廊下に片倉だけを残してぞろぞろと持ち場へと戻って行く。
その片倉はと云えば、どうにも中の二人が気になって
しっかりと閉まっている襖の前で、不躾ではあると思いつつ、聞き耳を欹てた。
…がしかし、余程小声で話しているのか、それとも何も話していないのか
ちっとも何も聞こえて来ない。
耳が遠くなったか?と小指で耳の穴を掘ってみても、やはり何も聞こえはしなかった。

そんな片倉の奮闘など露知らず、中では伊達と幸村が立った儘しかと抱き合い

「…なんでテメェが此処に居るンだよ…」
「…それは此方の科白に御座る…っ」

とりあえずは、我慢ならぬと互いの唇を貪り合っていた。

 


――――――――――――――――――――

 


「…で?」

一旦落ち着く為にと、幸村を連れ別の座敷に移った伊達は、そう切り出した。
何が「で?」というのだろう、幸村は伊達に圧し掛かられながら
畳の上で「ちょっと待たれよ…っ」と懸命に足掻く。
これでは落ち着いて話もへったくれもない。

「某っ、斯様なことをする為に、奥州へ参ったのではない…!」
「へェ〜?じゃ何の為に来たってンだ」
「っ!それは…、云うまでもなかろう!先程の盟約の為に…!」
「I know、それは判ってる。…で?何の為にここまで付いて来た?」
「…!」

そこまで深く考えていなかったと、幸村は軽く目を見開いた。
盟約の為と云うのなら、それが完了した今、何故目の前の男に付いて来たのか…
決まっている。

「…それを、某に問うので御座るか…?伊達殿は、存外ひどい男に御座る…」
「…!」

今度は伊達の方が瞠目する番だった。
恥ずかしげに頬を染めた幸村から、まさかこんなにも しおらしい反応があるとは思わず
堪らず情火を滾らせ、乱暴に幸村の着物の共衿に手を掛けると
引き千切るように左右に開き、現れた見慣れた白い肌に吸い付く。

「っ、なりませぬ…!伊達殿…っ」

慌てて身を起こそうとする躯を無理矢理畳に組み敷き
すっかり傷跡が残ってしまっている、向かって右の肩口に、ギリッと歯を立てた伊達は
すぐに溢れて来た温かな血を、夢中になって舐める。
十日ぶりに味わったそれは、阿片のような心地良い酩酊をもたらした。

「…ッ、あ…!く…っ」

幸村の方も、逢えば必ずと云っていい程には血を啜られていたので
毎度のことながら、激痛を伴う伊達の儀式めいた行為に
最近は痛みだけではなく、ジンとした快楽をも感じるようになり
伊達の真っ赤に染まった舌がゆっくりと下におりて乳先を弄る頃には
すっかりその気になってしまっていた。

「っふ…、ン…ッ…!、ぁう…、、」
「しっかり濡らせよ」
「…ん、…ん…っ」

喘ぐ口元に二本の指を差し込まれ、普段しているように躊躇わず自ら舌を絡め
爪の先から始まり、長い指の腹、深い叉にまで
赤子が乳をしゃぶるように、ちゅるっと音を立てて丹念に舐め終えると
すぐにそれは引き抜かれ、いつの間にか下帯を剥ぎ取られ剥き出しになっていた菊座に、加減なく捩じり込まれる。
仰け反ってそれを遣り過ごせば、後は早い。
簡単に慣らしを済ませた伊達が指を引き抜き、脈打つ牡をピタリと宛がう。

「…力抜いとけよ」
「…っく、ぅ…!」

そんな事は云われなくとも判っているのだが、そのあまりの大きさと熱さに
幸村はいつも息絶え絶えになる。
苦労して全てを咥え込んだ時には、汗が玉のように浮かんでいた。

「…動くぜ」

一方の伊達も、強い幸村の締め付けにより、切羽詰っているのか
余裕なく呟くと、いきなり深く腰を動かす。

「…ッヒ!、あ…っ…!、ぅ…う…ッ、、」

短く悲鳴を上げた幸村だったが、すぐに良くなる事を判っているので
肉と粘膜が伊達のモノに馴染むのを只管待ち、
その牡が先走りを滲ませながら前後する数が十を越えたあたりで、やっと慣れてきた。
ここまでくれば、後はもう迫り来るのは快楽のみ。
準備が整ったと報せる為に、伊達の腰に足を絡ませれば
ニヤリと男の口角が上がり、堰を切ったように律動が激しくなる。
幸村も器用に腰を浮かせると、いい具合に泣き所に当たった。

「っあぁ…!あ…ッ!、ンッ…、んんっ!」

堪らず伊達の逞しい背中に爪を立て、声も抑えず喘ぎ散らすと
獰猛な光を湛えた隻眼が細まり、尚一層幸村を穿つ強さが増す。

(…嗚呼ッ、この眸が、堪らぬ…!)

幸村の全てを喰らい尽くさんとするのと同時に
心地良さそうに満たされていく様を見るのが、本当に好きだった。
だから幸村は、いつも行為の間中、特にこのような瞬間は
決して目を逸らした事などない。

「はっ、あぁ…っ、政宗…殿…!」
「っツ…、」

もう限界だと、絶頂を迎えながら、力いっぱい伊達を締め上げた幸村は
同じく子種を吐き出した伊達の牡を中に収めたまま、くたりと満足気に弛緩した。

 

 


「……ところで、アンタちょくちょく奥州まで来てたが…」

激しい情事が終わり、座敷の中に気怠い熱気が残る中
畳の上で荒く息を吐く幸村を背後から抱き込みつつ、伊達はその耳元に囁きかける。
まさか間諜まがいの事をしてたんじゃないだろうな、と
妙な勘ぐりをされ、それは違うと幸村は慌てて首を振った。

「っ某は、お館様の命により、ある物を取りに参っていただけの事!」
「へぇ…? で、そのある物って?」
「…そ、それは云えぬ…!」

度々甲斐と奥州を行き来し、使いとして届けていたのは、何を隠そう「薬」だ。
なんでも、普通の町医者では手に入れられぬ、遠い南蛮より渡来した、かなり高価なものらしい。
中身を知れば、幸村や他の者たちに要らぬ心配をかけてしまうからと
信玄はずっと黙っていたのだ。
幸村とて、知ったのは信玄が病に臥せってからである。
それをおいそれと、同盟国とは云え他国の者に喋る訳にはいかない。
信玄が弱っているという内情を知られれば、此度の盟約が破棄されるやも知れぬ。
それだけは避けねばならなかった。

「…ま、そんな事はどうでもいい」

されど伊達は、あっさりと話を切り上げ、本当にどうでも良さそうに呟くと
幸村の左の太腿をゆっくりと撫で、浅く持ち上げ
再び熱を持った牡を、解れ切った心地良い肉に、ゆるゆると埋めて行った。


 


【5へ続く】


BASARA小説一覧へ戻る




あとがき

やっと筆頭のお名前が書けました…!
今暫く、ヌルイ感じが続きます。

2009/11/06  。いた。