※ぬるい性描写あり。ご注意を




『Tranquilizer7』



「遅ェ…何してた」
「も、申し訳ござらん…!」

伊達が居る座敷へと小走りに急いだ幸村は
襖を開けた途端に飛んできた剣呑な声に、ビクと首を竦めて詫びた。
それから「此処に来い」と胡坐を掻いた男に命ぜられる儘、傍に寄ると
すぐに腕を取られて畳の上に転がされ、その場で強く抱き込まれては、完全に身動きできなくなった。

「…テメェ、ついて早々このオレに挨拶もしに来ねェとは、いい度胸してンじゃねェか…」
「…あ、その…、少しばかり片倉殿に呼び止められ、話を…」

城に幸村が着いたという報告を伊達が耳にしてから、もう随分と経っていた。
すぐにでも顔を見せると思い、此処でこうして待っていたというのに一向にやって来ないので
もとより短い痺れを切らし、それはもう見て判るように大層立腹しているという訳である。

「……そ、某とて…!一刻も早く政宗殿にお逢いしとうござった…!」
「…へぇ?中々可愛いこと云うじゃねェか…」

機嫌取りか?と意地悪く口端を上げる男に、「本心にござる…!」と吼えた幸村は
覆い被さるように唇を重ねて来る伊達の共衿を掴み
自ら身を寄せ、挑むように応える。

「っ…、ふ…、」
「……どうした、今日は随分とaggressiveじゃねーか…」

何かあったのかと、淫猥に舌を絡めた後に唇を離すと、透明な唾液がいやらしく糸を引いた。
幸村は答えず、熱っぽい吐息を溢しながら
続きを促すように伊達の股座を膝先でまさぐった。

「…上等」

途端に興が乗った伊達は低く囁くと、組み敷いた幸村の帯紐を解くのもまだるっこしいと
右手で着物の共衿を剥きながら、左手で裾を大きく肌蹴させ
現れた肉付きの良いしなやかな太腿に手を這わせた後、邪魔だとばかりに下帯を毟り取る。
幸村の方も伊達の着物の衿に手を掛け掻き開き
覗いた鎖骨に辛抱出来ぬと噛み付くように舌を這わせた。
まるで競うように互いを求め合う。

「…っ…はぁ、…は、ぁッ……、……んっ…!」
「………」

とその時、肩口に鋭い痛みを感じた幸村は、常のように歯を立てられている事に気付いたが
小さく皮膚を裂き浅く肉を抉られると、溢れた血と共に狂おしい程の情と快楽が湧き
荒い吐息を繰り返しながら身悶えた。
この行為が特別である事を理解したが故、尚更だ。
否、寧ろそれ以前より、自分だけに許された絶対不可侵な儀式なのだと、心の何処かで知っていた幸村は
己でも良く判らぬ愉悦・優越・満足感にどっぷりと浸り、耽溺にも近い心地を味わう。
たっぷり血を啜り終えた男が、美味そうに舌舐めずりをしながら顔を上げたのを見遣ると
口許は鮮やかな赤に汚れ、隻眼には爛々とした欲望が滾っている。

嗚呼、やはり堪らなかった。

「…っあ…、政宗殿……っ」
「…何だ」
「…何故、辻斬りを繰り返すようになったか、…訊いても宜しいか…?」
「ああ゛?…云っただろうが、斬りたくてしょうがねェと。飢えを満たすのと同じで、どうにもならねェんだよ…」
「…されど、某の血を飲んだ時は、治まったでは御座らぬか…」
「…!」

瞬間、躯をまさぐっていた伊達の手がピタリと止まる。

「某の血が、政宗殿の辻斬りの衝動を抑える為に、必要とあらば
 この血を、いくらでも飲んで下さって構わぬ……その代わり、、」

この幸村だけのモノになって下され…と云う浅ましい願望を、寸での所で呑み込み、

「…もう二度と…、辻斬りなどということは、おやめ下され……」
「……Hum、小十郎にでも説得されたか? But、アンタ判ってねぇな…
 確かにオレはあの時、アンタの血を飲めば落ち着くとは云ったが、それだけじゃねェ」

ならば他に何があるのだと見上げれば、ニヤと不敵に男が哂う。

「血だけ飲んで満足してりゃ、苦労しねェよ。
 オレはアンタが傍に居ねェと、どうにも歯止めが利かねェのさ」

逆に、傍に居さえすれば、いくらでも耐えられる
そもそも、その衝動すら湧かないと云い切る伊達は、幸村の長い髪房を指先で玩ぶ。
伊達にとっては、血があろうがなかろうが、どっちでもいい。
ただ、最初に覚えた満足感以来、癖になっているのは事実であり
それを今更やめるという愚をしないだけだ。
そんな惜しいことをするぐらいなら、勘違いされたままでいい。と。
問題は、さっき云ったように、幸村が傍に居ない時である。
居なくなった途端、それまでの安定が嘘のように、症状がぶり返して激しく表れ
日に二人は斬り殺さなければ落ち着かなかった。
やむにやまれず、幸村を求め、逢えればそれこそ優れた特効薬のように衝動は治まるが
別れれば、僅か三日と経たず再発。
その繰り返しだ。

「……ならば、某に一体どうせよと…」
「簡単なことだ。オレと死ぬまで一緒に居ろ」
「…っな…!」
「あ?勘違いすんなよ?誰も辻斬りをやめてぇが為に云ってンじゃねぇ…
 オレはアンタに惚れてる、好きでしょうがねェんだよ…」

この際辻斬り云々は置いておけ、と隻眼をゆると細めた伊達は、愛しげに幸村の頬に触れた。
その時、幸村の胸中を駆け巡った、発狂しそうな程の驚喜と云ったら無い。

「……某も、お慕いしております…」

声を震わせながら答えた途端、熱い口付けがあり、再び伊達の手が蠢きだす。
汗ばむ肌を撫で、痛々しく尖った乳先を捏ね
半ば以上に勃ち上がっている幸村の牡を絶妙に愛撫した後
久方ぶりだと頑なに引き締まっている菊座へと指を伸ばす。

「…あ…、…っ…、政宗殿…」
「オマエさえ、居ればいい…他には、何も要らねェ…」
「…ッ、ん…!」
「オレだけの、Tranquilizer…」

うっとりと囁いた伊達は、慣らしていた指を引き抜き
幸村の両膝裏に手を入れ、大きく左右に割り開く。
その言葉の意味する所は判らなかったが
何を云わんとしているのか、幸村は気付いていた。

(…嗚呼、また、この目……)

まるで捨て犬が身の寄せ処を得た時のような、心安らかな光を燈し
同時に、絶対に手放さまいと決意したその次には
誰にも取られて堪るかと、強い執着の色に変貌する。

(……某、ようやく判り申した……)

他人を寄せ付けぬ刃のような鋭さを持っていながら、誰よりも人の温もり、情というものを欲しているのはこの男だ。
されど哀れむべきはその不器用さか。
これまで誰にも気付いてもらえず、抱いた孤独を隠し続け
根底の渇望は葛藤の境地から絶望に、更にそれが続くと身を苛む飢餓へと歪み
訳も判らず駆り立てられる飢えを満たさんが為、凶行を繰り返し、もう後戻りできない所まで進んで来たのだろう。
つまりは、自分で自分を追い込んだのだ。
「寂しい」と、一言云えばいいものを、、

(…然もありなん、政宗殿は、鬼のような辻斬りなどではなく、)

まこと、初めて会った時に感じた通り
差し伸べられる手を待ち、町で彷徨う野良犬と何ら変わらぬ。と、幸村は今、確信を持って眸を閉じ
最初に四つ辻で出逢えて良かったと、安堵をすら覚えた。
同時に、辻斬りの裏に隠された、この男の本当の素顔を知っているのは
己一人しか居ない事に気付き、不謹慎ではあるが、抑えようの無い悦びを感じ

「…っふ、…あ、、」

まるで密やかな秘め事を胸に隠すが如く、小さく笑みを浮かべ
捻じ込まれる熱い伊達の一物を、キュウ…と切なげに締め上げた。

 

 

【8へ続く】


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あとがき

とりあえず、ユッキー、云わせて欲しい。オマエは一体どうしたいんだ…!
筆頭を独り占め?そうですか、判ります判ります。
要するに精神描写がうまくできませんorz 
もう少し続きます。

2009/11/10  。いた。