最近やたらとやって来る、虚圏最強10本指の一人
あえて言うなら NO,6.グリムジョー。
義骸が案外気に入ってるらしく、最近の暇つぶしは現世遊び。
だそうだ。
どうでもいいし、鬱陶しい事この上ねェよ。

 

 

『エンジョイ:偶には遊んだっていいんだ

 

 

眉間の皺が増えた。
周りからも言われたし、鏡を見て自分でもやっぱりそう思う。
原因はアイツに違いない。
ヤンキーまがいの髪型のクセに色はセルリアンブルーなんていうエキセントリックな野郎で
おまけに態度はデカイし言葉遣いも悪いし、なのに無駄に顔が良いから腹が立つ。
そいつが敵同士だっつーのにちょくちょく現世まで俺に会いに来やがるから(義骸で)、堪ったもんじゃねー。
しかも昼夜関係なくだから、碌に眠れやしねーし
ストレスなんかもう溜まりすぎて、いよいよ後頭部に十円ハゲができるんじゃねーかって、心配で心配で。

だからさ・・・・


「現世来ンなって何べん言やぁ判るんだ?このクソ破面」
「来たいから来てんだよ。つーかオレに命令すんな。ウゼェ」
「テメェのが100倍ウゼェよ」


あ゙―、アレか?お前は俺をイライラさせる天才だよな?もしくは沸点知り尽くしてるとしか思えねェ。
そもそも、なんでよりによって日曜にワザワザ来るんだよ。
お前のおかげで疲れてるんだ俺は、せめて休みの日ぐらいゆっくりさせてくれ、、(俺は子持ちの親父か?)


「……帰れ。今すぐ帰れ。3秒以内に俺の視界から消えてくれたら、何も見なかった事にしといてやる」
「あ?帰るワケねーだろ。つーか折角来たんだから、さっさと相手しろや」


だ、そうです。
…うん、判ってた、判ってたさ……コイツがどれだけ自己中か…!
けどやっぱ、俺も一人の人間だ、我慢の限界ってもんがある。
勝手に人ン部屋に不法侵入した挙句、さっさと相手しろだと? 
テメェ一体何様だ。いや、言うまでもねェ、オレ様か。
須らく死ね。


「よし判った。卍解プラス虚化で瞬殺してやっから、表に出ろ」
「へェ?いいのか?家族とか巻き添えになるンじゃねーの?」
「…………」


誰だ、コイツにこんな浅知恵を授けやがったのは。(4番か?4番だろ?嗚呼そうに違いねェ!!)
むちゃくちゃ悔しいけども、確かにグリムジョーが言った通り
俺等がこんな所でガチで闘りあったら、ウチどころか半径500メートル内のご近所様を軽く吹っ飛ばす自信がある。
でもだからって、人気の無い山とかまで苦労して行く気も更々無いし
チクショウ、一体どうすりゃいんだ?


「悩む必要ねーよ。遊ぶのはまた今度でいい、今日は町案内しろや」
「………は?」


テメェにとって俺との戦闘は遊びなのかよ、というツッコミはまず置いといて
ごめんなさい、幻聴ですかね。 今なんて仰いました? 耳の穴かっぽじりますから、もう一度言って下さい。
虚がまさかの物見遊山?むしろ観光??え???
藍染サン、お宅ンとこの6番、オツムの方が失敗してるみたいなんですけど、大丈夫ですか?


「さっさと仕度しろよ。マジで暴れてもイイんだぜ?」
「…ッ!」


ニヤニヤと哂いながら、生意気にも俺を脅す十刃に、一瞬こめかみに青筋が浮かぶ。がしかし
本当に暴れられたら厄介だ、シャレにならん。
もう、ホントやだこの人。
…いやでも、よく考えてもみろ、俺。
無血開城のチャンス、つまり適当に案内さえすれば、闘わずして追い返せるんだ。
ここは一つ、それで手を打とうじゃねェか!
町の平和を守る為だ、俺の休日返上なんて、痛くも痒くもねェ…!
むしろそのぐらいの犠牲で済むなら万事OKだろ!
ってさ、誰でもいいから俺を慰めてくれ…。


「どうしたよ?早く行こうぜ、一護」


そういうワケで、出掛ける事になった。

 

 

「なんだよ、人間ばっかじゃねェか」


手っ取り早く町の中心部、繁華街まで来たはいいが
人の波を見るなり、開口一番で宣った6番様に、早くも頭が痛くなる。
日曜の昼間の繁華街だ、人が多くて当然だろ、っつーか居ない方がオカシイ。
でもまぁそんな常識は目の前の存在には通用しないので
無視して先へ進もうとすると、「これは何だ」「あれは何だ」と
いちいち立ち止まっては興味津々に質問を繰り返すグリムジョーに
俺も律儀に立ち止まって、一つ一つ答えてやる。
図体はデカいクセに、なんか小さい子供みたいで、可愛い。
…ッじゃねーよ!しっかりしろ、俺!!
こんな奴のどこが可愛いか…!!


「一護、さっきから気になってンだがよ」
「ッあ、あァ!、何だ!」
「あいつら、アレで何やってンだ?」


顎先でしゃくる方を振り返ると、女の子達がキャッキャ言いながら
こっちを指差しつつ携帯で写メを撮り、何やら熱い会話を繰り広げているのが見えた。
忘れてたが、グリムジョーは目立つ、とにかく目立ちやがる。
いつの間にか周囲に出来た人垣の中から
どこぞの芸能人よろしく、「握手して下さいv」と誰かが言った時
さすがにこれはヤバいと判断した俺は
すかさずグリムジョーの腕を掴んで路地裏へと走った。
これ以上悪目立ちしたくなかったのと、「あ゛?」と不快そうに顔を顰めた破面が
何をしでかすか判らなかったからだ。


「オイ、どうして逃げンだよ」
「いいから、もう、」


頼むから大人しくしててくれと頼み、溜息をつく。
コイツはもうちょっと、自分の容姿に自覚を持つべきだ。


「…悪いことは言わねェ…表通りはやめとこう。裏通りだって色々あるから、案内する…」
「おう」


そう提案すると、機嫌を直したのか、文句を言わずついて来るので
ホッと胸を撫で下ろし、少し薄暗い路を通って商店街を目指し歩いて行くと
見るからに不良ですよ的なオーラを醸し出してる連中が
自販機の前で5・6人ほど屯しているのが視界に入った。

(…うわー…嫌な予感しかしないンですけど)

絡まれたら面倒だ、迂回するべく踵を返そうとしたところで


「よぉ、待ちなよアンタら」


とかなんとか声をかけられて、嗚呼やっぱりかとウンザリする。
またいつもの難癖だ。


「待ちませんサヨウナラ。行くぞグリムジョー」
「オイオイオイ、てめぇらシカトしてんじゃねーぞ!」


まともに相手をするのもアホらしい、そのままスルーしようとすると
「上等じゃねェか!」といきなり後ろから肩を掴まれ
反射的にその手を振り払おうとした、その時
パンッという乾いた音がしたかと思うと、不良が綺麗な弧を描いて吹っ飛んだ。
一体何が起こったのか、数瞬理解が遅れるも
グリムジョーの裏拳が、ものの見事に不良の顎先にクリーンヒットしたのだと
ぐしゃぐしゃに変形した顔面を見て知る。


「……あーあーあー…」


骨が砕けただけじゃなく、軽い脳震盪でも起こしたか
グルリと白目を剥いて泡を吹き昏倒しているのを、呆気に取られて見ていると
不機嫌そうに舌打ちをしたグリムジョーが、俺より眉間に皺寄ってんじゃねーかってぐらいの険しい顔で


「ウゼぇ」


吐き捨てるなり、残りの不良達が飛び掛ってきたのを、それはもう完膚無きまでに返り討ちにした。
遠慮も手加減もクソもない。
一人は自販機にメリ込み、その他の悉くは地面もしくは壁と仲良くなっている。
なにがそんなに気に入らなかったのか知らないが
グリムジョーはゴミでも見るような視線でそいつ等を睥睨し
その眼光の冷たさと云ったら、今まで見たこともない。


「ははっ!」


でもまぁ、俺はと言えば一笑し
不良達にまさか同情なんてある訳もなく、「ざまァ」の一言に尽きた。
グリムジョーに拍手の一つでもしてやりたいぐらいだ。
ここまで一方的かつ徹底的なフルボッコなんて、いっそ清々しい。
爽快すぎる。

散々グリムジョーを邪険にして来たけど、ちょっと構ってやってもいいかな
と思い直し、近くのお気に入りのゲーセンに連れて入る事にした。

 

 

「ここのな、格ゲーが最高なんだよ」


店内に入ってすぐ、喧しい音楽がワッと鼓膜を襲い
俺はかなり多きい声で、きょとんとした顔で周囲を見回すグリムジョーに話しかけたが
果たして聞こえているかどうか。
とりあえず、この凶悪ヤンキーが迷子にならないよう服の裾を抓んで
目的のアーケードゲームを目指してずんずん奥へ進んで行く途中
クレーンゲームコーナーに差し掛かり。
そこで俺が持ってる死神の代行証によく似た、ドクロモチーフの可愛いぬいぐるみが偶然目に入った。


「うわ」


欲しい、と うっかり思ってしまったんだけども
いい歳してクレーンゲームなんて、ちょっと恥ずかしい。


「あん?ソレがどうした、一護」


いや待て、コイツが居るじゃねェか、よし、コイツにやらせよう。


「この中にあるモノ、このクレーン使って取るんだ」
「フーン?」
「ただし、そのボタンの矢印の方向にしか動かせないから、結構難しいンだぜ」


俺はこの手のゲーム苦手だ、と言うと
途端に目の色を変えたグリムジョーは、「やる」と即答。
興味無さそうな返事が一転、俄然やる気である。
どうやら俺のセリフの中に、スイッチとなるキーワードがあったらしい。


「ほら、これで遊べるから」


しめしめと内心ほくそ笑みつつ、100円硬貨を入れてやると
腕捲りまでしたグリムジョーが、普段の横暴さとは似ても似つかない慎重な手付きで、ボタンを押す。
ジリジリと動くクレーンを、瞬きもせずに見ながら、だ。
その姿がそれはもう真剣で、クレーンと睨み合う男にバレないよう、俺はプッと噴き出した。
だって、虚が、それも天下の十刃様が、ゲーセンでクレーンゲームだぜ?
冷静に考えれば考えるほど、かなり笑える構図と状況だ。
これは是非とも皆に見てもらいたい。(俺も写メろうか…)


「…一護、取れねェ」


低く呟いた声に、慌てて取り出しかけた携帯を引っ込めてゲーム機の方を見ると
あらぬ所で爪を広げ閉じたクレーンが、空気を掴んで元の場所に戻ってきたところだった。
その時のグリムジョーの不服そうな顔ったらない。


「当たり前だろ、初めてやって一発で取れたら神だっつの」
「…あァ?」


うるせェ、もう一回だ。
とムキになって言うので、仕方ねーなと100円玉を追加した。
が、結果はやっぱり失敗で。
それで闘争心に火が付いたのか、「次」と短く吼える声に
更に100円を提供してやる俺の財布の残りの戦闘能力は、あと7回が限界だ。
(いや、両替すればもっとあるけども、こいつの為に諭吉様を細かく崩す気なんかサラサラ無い)

さァ、後何回で成功できるか。
気長に見守ること暫く、グリムジョーはあっと言う間に5回のトライをしくじった。


「ンだコレ、全然取れねェじゃねーか」
「?!」


次の瞬間、終に痺れを切らした男はそう言うなり
巨大なクレーンゲーム機を、あろう事か、ズガーン!と蹴り飛ばした。
轟音を立てて壁に激突してブッ壊れたゲーム機から、ボロボロとぬいぐるみ達が散乱し
グリムジョーは足元に転がって来た、可愛くデフォルメされたドクロのソレを無造作に拾い上げ


「ん」


欲しかったンだろ?と俺の目の前に差し出した。
対する俺は、「ありがとう」ましてや、「なんで判ったんだ」、なんて言える訳もなく
ヒクと顔を引き攣らせながら受け取って
事の重大さを理解していないグリムジョーに、かつてない殺意を抱く。
修繕費、修理代、弁償代、言い方は何でもいいが、一体いくら掛かるんだと
目の前が真っ暗になった。

 

テメェはやっぱり二度と来ンな、グリムジョー…!

 

 


【終】


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あとがき

微妙に「GOエスケープ」とリンク。
ちょっとおバカなグリムジョー氏も、なかなか萌えかと存じますv

2010/05/08  いた。