あぁ、まさか今この場所で
あの目が痛くなるようなセルリアンブルーの頭を見るなんてな。

 


『GOエスケープ:偶には抜け出したっていいんだ

 


日和よろしく晴天。
そろそろ腹も空いて来た4時限目の半ば、
何とはなしに窓の外を見ていた。

退屈な授業もいい加減飽きてきて
あわよくば雑魚虚でも通りかからないかとか、
ルキアあたりが聞いたらケリが飛んできそうなことを思ってみたり。

いやまぁ実際虚なんか出てきてくれたら困るんだけどさ。
言い訳が。


「・・・・あー、つまんね・・」


周りに聞こえないようボソリと呟いて、溜息をつく。
授業といっても今は自習で
皆好き放題に喋ったり遊んだりして暇を紛らわしている。
騒がしいのが嫌いっつーかムカつく俺は
只管窓の外に意識を集中していた。

だから、

廊下の方からだんだん近付いてくる霊圧にも
その霊圧の主が誰なのかも
全然わからなかった。

――ッガララ!


「何だァ?ウッセェなここは」


突然教室のドアが開け放たれる音と、ガラの悪い声。
騒がしかった教室内が水を打ったように静かになった。
驚いた俺は反射的にドアの方を見る。


「・・・、お前!!」
「よーォ、一護」


見覚えのあり過ぎる長身の男は
どこからパクッたか知らないが、この学校の制服を着ていて
ズボンのポケットに両手を突っ込んだ格好で、ニヤリと大きく口端を上げてこっちを見た。
根限りヤンキーみたいな見て呉れの所為でもともと恐ろしい顔が、もっと恐ろしく見える。
できれば俺の名前を呼んだことは聞かなかったことにしたかった。


「・・な、なぁ黒崎、あいつお前のこと呼んだけど、知り合いなのか?」


やったぜバッチリ聞こえてやがる。
ってか、いやいやいやいやいや、
あんなヤンキー知り合いに居て堪るかよ。
つーか何でお前あいつ見えてんの?
普通見えな・・・
あ、そうか、義骸に入ってるからか。・・・・・って、

何所でどうやって手に入れたんだよ?この糞ヤンキー。

まさか浦原にツテがあるとか言ったらブッ殺すぞ。


まぁそれはさておき、マジ最悪だよコノヤロウ。
何でワザワザ見える義骸に入って俺に会いに来る?
新手の嫌がらせか何かか??
この間も5・6人の死神共が同じ方法で来やがったし!


「・・さ、さぁ、どこのどちら様でしょうね・・」


ハハ★なんて引き攣った笑顔でとりあえず軽く笑っておくが、
おいおいおいおいおい。
これヤベーッてマジで。
俺は記憶置換なんて便利なモンは持ってねーぞ。

・・・・こーなったら・・・、


「・・・・・・ちょっと俺、腹痛いから保健室行ってく、、」
「オイ、一護、なに逃げよーとしてんだ?コラ」


面倒なことが起こる前に逃げてしまえと、適当に言い訳してから席を立って回れ右したところで
いつの間に近付いて来ていたのかグリムジョーに腕を掴まれて寸止めされる。
ガチでうぜーッス。
こんなことならさっさとこいつが教室に来る前にトンズラこいときゃよかった・・。
つってもギリギリまでこいつの存在すら感知できてなかった俺の自業自得なんだけどさ・・・。


「・・・・・別に、逃げようとかしてねーよ・・。何?」


今や教室中の注目の的になっている俺等には
遠慮の無い興味の視線がグサグサ突き刺さってくる。
痛ってェ。
何って、視線と掴まれた腕が。
こいつ手加減ってモンを知らねーのかよ。


「ヒマだから遊びに来た。相手しろや」
「・・・・・ハッ?!」


すいません、ごめんなさい、絶対イヤです勘弁して下さい。
だって俺ヤンキー違うもん。
タダでさえ一緒に居るだけでも変な目で見られそーなのに
テメェなんかとウフフアハハで仲良さ気にしてたら、俺が今まで築き上げてきた優等生像がバブル崩壊だろ。

ってゆーか、一体誰だよコイツに暇な時は俺の所に来るよう教えたバカは。
藍染か?もしかしなくても藍染なのか??…うん、後で殺す。

と、ありったけの殺気を毒電波で送ったところで、


――キーンコーンカーンコーン・・・


タイミングが良いのか悪いのか
4時限目の終了と同時に昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴る。
途端にガタガタと席を立ちあがったクラスの連中は
我先にと俺とグリムジョーの周りを取り囲むと、一斉に質問責めを開始。

なんかスゲー女の子達の鼻息が荒いのは何でだろう?


「っねーねー黒崎君!この人誰なの?!」
「・・や、誰って言われても・・・」
「何でうちの制服着てるの?もしかして転校生?!」
「え?まさかだろ、」
「じゃー何で黒崎くんに会いに来たの?」
「や、それさっきヒマだからって・・」
「それより二人って一体どんな関係なの?!」
「へっ?、どんなって」
「友達?親友?それとも恋人?!」
「・・・・は??」
「キャー教えてよーvvvこのカッコイイ人黒崎くんの彼氏なんでしょー?」
「ッはああぁあああ??!!?!」


勝手に黄色い声を上げて騒ぎ出した女子について行けず
眉間の皺を増やしまくる。
なんで俺とこいつが恋人同士?
ありえなくね?
オツムの方は大丈夫ですか??
俺等どっからどー見ても男だろ?

つーか、心持ち所々の単語で声がデカくなった気がするんだが、気の所為か?


「私、絶対黒崎くんはカッコイイ人とくっつくと思ってたんだぁvv」
「そーそーそれも超美形の!」
「だ・よ・ねーっっっvvv」


―――この時は知らなかったが、
これが世に言う腐的な女子達だったということは、大変不本意なことに後から知った。


「っ、オイ、グリムジョー!何かウゼェから行くぞ・・!」
「あ?いーぜ?」


ヤバイ、このままだと明らかに面倒なことになりそう、ってかもう既になってんだけど
腕をグリムジョーに掴ませた儘、二重三重もある人垣を必死こいて掻き分け
教室の外に抜け出す。(これが思いのほか重労働だった)
ところがやっと廊下に出たと思ったら
騒ぎを聞きつけたらしい隣りのクラスの奴等が新たな人垣を作っていて、また質問責めに遭い。
しかも勢いはさっきの連中の比ではなく、あっと言う間に窓際の壁に追い詰められる。
さすがに背中を嫌な冷や汗が伝った。
こーゆー時に死神化したら、どんなに楽だろうかと半分現実逃避したくなる。


「・・・・・なぁ、一護。鬱陶しいからコイツ等ブッ殺していいか?」
「あぁ、俺もそーしてぇ所だが・・・ッていいワケねーだろ!つい本音言っちまったじゃねーか・・・!
 っとにかく、どーにかして逃げんだよ・・!」
「逃げていーのか?、じゃ、行くぜ?」
「・・・え・・?、っうわ!」


言うなり後ろを振り返って窓を開け放ったグリムジョーは
いきなり俺の腕を引き寄せ横向きに抱き上げると
タッと身軽に4階から飛び降りやがった。


「どおおォおああぁあぁあああ゙ッッ!!!!!!」


魂魄化してねぇ生身の身体で紐無しバンジーを味わう羽目になった俺は
必死にグリムジョーの頭に縋りついたと同時に
落ちて死んで虚になったら先ず最初にテメェを喰ってやる・・!!!!と、
0コンマ5秒で胸に十字を切り誓いを立てた。


「・・・・・っ・・・、・・・・・?」


ところが、衝撃に備えて身を硬くしていても、待っても待ってもそれは来なくて。
恐る恐る目を開くと、そこはもう地面の上だった。


「あれ??」(ここで未だにグリムジョーに抱きついているのは見て見ぬフリしてくれ)
「なに?そンなビビッたかよ?」


言われて、自分が脳漿ブチ撒けても内臓破裂で複雑骨折してもない、
つまりカスリ傷ひとつ無く、全くの無事であることに気付く。
バッチリきっちりグリムジョーが守ってくれたらしい。
・・っち、グリムジョーの野郎、義骸に入ってる癖にこの身体能力ってどーゆーことだよ。
着地した衝撃ゼロとか、ありえんのか?
もしかしてそのボディ特注?
藍染の。笑(いや笑えねーよ)


「で?ドコ行くよ、一護」
「・・・・その前に降ろせよな変態魔王」


ニヤニヤと哂いながら、お姫様抱っこのまま歩いて行こうなんて素敵なことをしようとする野郎の胸板を(ここで漸く)押す。
恥ずかしいったらありゃしねぇ。(いや、今の今までビビッて抱きついてたの自分ですけどね?)ハハッ。


「とりあえず腹減ったからメシ。どっかファミレス行こうぜ」


案外素直に下ろしてくれた両足が地面についた時、学校の上履きなのに気付いたが
履き替えるのも面倒臭いし、その儘それで歩いて行く。
グリムジョーは普通に靴履いたまんまだったから、ウザかった。
ってか土足で学校に不法侵入かよ。
ホント最悪。


「あー?なんでそんな不機嫌なんだよ」
「うっせ。ってか早く行くぞ」


でもまぁ、偶にはこーやって学校を抜け出すのもいいかもしれない。
虚退治とかそんなんじゃなく、ただ学校に居るのが退屈だからエスケープ。
案外、それが初めてのことで、何だか新鮮だった。
自慢じゃないが俺は真面目キャラを地で通してきたんだ。
サボッたことなんて一度もねぇ(まぁ、虚退治は別として)。


「ってか、お前金持ってンの?」
「あ?持ってるワケねーだろ」
「威張るなバカ」


虚が現世の、しかも日本通貨なんか持ってたら逆に恐ぇよ。


「仕方ねーから奢ってやる。あとで返せよ。バイトして」


きっちり利子つきでな。
確か近所のコンビニでバイト定員を募集してたハズだ。
ついでに俺の小遣いも稼いでもらおう。

 

―――翌日、そうやって仲良さ気に歩いていた所を、クラスの例の女子にでも見られていたか
延々質問責めになった挙句に俺がホモだとか何とかいう
不名誉極まりない噂が学校中に出回ったのは、言うまでもない。

 


グリムジョー、てめぇはもう二度と来ンな。




【終】


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あとがき

ギャグ苦手ですが勢いで書きました←

2006/08/31  いた。