いつから始めたのか、二人ともハッキリとは覚えていなかった。
ただ、異様な快楽を感じる。
だからこの、異常ともいえる行為をやめられなかった。

 

 


『二人玩び』

 


 

グリムジョーは虚圏の自宮で、一体の破面を呼びつけた。
大した霊力もないクセに、十刃である自分の側近として傍に仕えている虚で
補佐も糞もなく、いつも面倒な雑用ばかりを押し付けているばかりの、利用価値の少ないゴミ。
大虚の中でも最上クラスのヴァストローデだが、グリムジョーにとっては視界に映る塵に等しかった。


「・・・オマエ、現世行って来い」
「はい、一体どのような件で・・?」
「黒崎一護」
「・・・」
「行って、殺してこい。殺せたら、喰わせてやる」
「・・は、それはしかし・・・」
「大丈夫だ。オレもついて行ってやるよ」


と口角を上げて言われても、直接仕える主はこのグリムジョーであるが
その更に上の人物からはそのような命令はなかったので、当然戸惑う側近破面。
しかし、この恐ろしい主はとてもとても気が短く
命令に逆らえばすぐにでも殺されてしまうということを
前任の今は亡き上級破面の無残な姿を見て良く解かっていたので
跪いて「御意」と言うしかなかった。
折角、崩玉の力で破面となりヴァストローデ級にまで進化したのに
一瞬でこの世から消されたくはなかったのだ。
それだけ、この十刃であるグリムジョーとの力の差は大きい。


「さぁ、行くぜ・・?」


ニヤリと哂うグリムジョーの意図など知る由もなく
コツリと指で裂かれた空間は現世へと通じる。


約束の時間まで、あと少しだ。

 

 

 

現世上空に降り立った虚が二体。
一方は頭上の空のように鮮やかな髪の色をしている。
目許にも同じ色のメイクが施してあり、見ていて清々しいほどに綺麗で。
この特徴的な男、グリムジョーは
静かに、けれど意識してある人物に向けて、己の霊圧を放ち、待っていた。


「・・・ん、そろそろか」


程なく、こちらに向かって来る一つの霊圧。
時間通りだ。


「オラ、来たぜ?構えろ」
「はっ」


グリムジョーは連れてきた側近破面を前に押し出し戦闘態勢を取らせると
自分は後ろで腕を組み、ほくそ笑むように目を細めた。

次の瞬間、目の前に死神が瞬歩を止めてヒタリと立つ。

霊圧は濃厚。明るいオレンジの髪。
きついブラウンの眸。白い四肢。

グリムジョーに負けず特徴的な容姿である、黒崎一護だ。


溢れ出している巨大な霊圧は、非常に惹かれるものがある。
美味そうな匂いがするのだ。
側近破面はゴクリと咽喉を鳴らす。
例え破面といえど、その実、飢えた虚である事には変わりない。
目の前の一護を喰うべき対象、ご馳走としか思えないのか
己の斬魄刀を引き抜くと、グリムジョーの「行け」という命令と同時に
餌に集るハイエナのように勢いよく飛び掛かった。

一護は斬月で応戦。刀を切り結ぶ。


「・・・クソ!」


力で圧し負け弾き飛ばされた一護は、低く舌打ちをした。
その間にも破面の斬魄刀が一護の髪を掠めて数本オレンジを散らす。
一方的な防戦を強いられ、だんだんと一護の額に焦りの脂汗が滲み出してくる。
傍から見ても、あきらかに一護の方が不利に見えた。


「これで終わりだ!その霊力、喰わせてもらう!」
「・・・・・クク・・、」


勝ちを確信した破面が斬魄刀を振り翳し、一気に振り下ろそうとした
しかしその時、一護の顔に笑みが浮かび


「・・・・・・・・・え・・・?」


破面の動きがピタリと止まる。
何故か、胸の辺りに違和感を感じ、ゆっくりと視線をやると
なんと己の躯を、後ろから手刀が貫いていた。


「・・・・・な・・・ぜ・・・、、」


驚愕に見開いた目で背後を振り返ると、味方であるハズのグリムジョーの、整い過ぎた顔。


「・・ヨシヨシ、何も心配せずに死ねや」


優しく耳打ちしたグリムジョーは、反対の手に霊力を集中させ
ヒューヒューとすでに虫の息だった破面の頭を、虚閃でブチ抜いた。
ブラリと一体の死体が出来上がる。


「ほらよ」


グリムジョーはそれを無造作に一護の方に投げて寄越した。
ドサリと両手で受け取ると、べっとりと血がつく。
無残に消失した破面の首。
胸に空けられた穴。
死体。

一護はさっきまでの演技の汗や焦りの表情ではなく
心から嬉しそうに薄っすらと笑んで、湧き上がった何とも言えない感覚に、ゾクリと躯を震わせた。


「・・・来いよ」


それを見ていたグリムジョーが、口端を吊り上げ低く呼ぶ。
顔を上げた一護は、首なし破面の死体をそこらに棄てると
フワリと飛んでグリムジョーの傍に寄り、欲に潤んだ目で意識的に誘うように見上げた。


「・・んっ、」


すると乱暴に後ろ髪を鷲掴まれて、降りてきた薄い唇。
自ら口を開けば、熱い舌が潜り込んで来る。
お互い異様に興奮していて、随分と荒い口付けだったが
頭の芯が痺れるほど気持ちのいいキスだった。


「っは・・、ぁ・・・・最っ高・・」
「キスが?死体が?」
「両方」


哂って、一護はグリムジョーの頬に血で汚れた手で触れると
付いた血糊ごと、赤い舌でねっとりと舐め上げる。
堪らなく欲情した。


「・・次はオマエの番だぜ?」
「・・あぁ、解かってる」
「どんな獲物だ?」
「それは見てからのお楽しみってやつだ」


グリムジョーは、もう一護に与えた。
次は、一護がグリムジョーに与える番である。


「じゃあ、またいつもの時間に」
「了解」


もう一度軽くキスをし、名残惜しげに離れれば
後はどちらも振り返らず、それぞれの帰るべき場所へと戻っていく。

ただ恐ろしい笑みを湛えて。

 

 

 


数日後

 

 

 


一護は死神化して空座町を徘徊していた。
この地区担当の死神を見つけるためだ。
既に何人入れ替わったか解からない。


「・・・あ、いたいた」


丁度町外れまで来たとき、ヒマそうに巡回している平死神を見つけ
ソレ用の笑顔を貼り付け近付く。
すぐに死神は一護に気付いて、怪訝そうな顔をした。


「なんだお前は?何番隊の死神だ」
「・・さぁ?どこだろうな・・?」


質問に答えず一護は妖艶に笑って、相手が辟易したところを懐に入り込む。
そして手慣れたように躯を寄せ、スルスルと死覇装の合せに手を這わせた。
たったそれだけの仕草でも、簡単に落とせる事を知っている。
これまで何度もやって来た事だった。


「うっ、」
「・・・・なぁ、ヒマならさ、俺とイイトコ行かね・・?」


甘えた猫撫で声で囁けば、ゴクリと死神の咽喉が鳴る。


「・・・なァ・・?」
「ッ、わかった」


少しぐらいなら、と肩に手を廻してきた死神に見えないよう、したりとほくそ笑んだ一護は
定められた時間内に定められた場所に着くべく
その死神を連れてフワリと飛んだ。
絶対に遅れてはならない。


「おい、一体どこに行くんだ?」
「・・クク・・、秘密」


鼻息の荒い死神がやたらと躯を触ってくるのを無視しながら
一護はいつもの上空ポイントに到着し足を止めた。
すると、まったく同時にビッと空間が裂けて虚圏への路が開く。

一護は死神が気付く前に、その中へと足を踏み入れた。

 

 

 

虚圏に現れた死神が二人。
一人は夕焼けを閉じ込めたように鮮やかなオレンジの髪をしている。
やけに霊圧が高揚しているのは気の所為ではない。
黒崎一護。

すぐに旨そうな霊圧に誘われて下級虚が群がって来た。


「うわっ!何だこいつら・・!!」


一護が連れてきた死神は大量の虚を見て一人オロオロと狼狽すると
斬魄刀を抜いて一体づつ殺していく。
一護はそれを無表情に見つめていたが
こっちに向かって来る愛しい霊圧を感じ取ると、ニヤリと口端を吊り上げた。

時間通りだ。


「・・おーおー、まった好き勝手やってくれてンじゃねーか」
「?!、なっ、なんだお前は!」
「あァ?破面bU、グリムジョー・ジャガージャックだ」
「・・っひ!!」
「ヨロシクなァ?・・死神ィ」


雑魚虚を倒すのに必死になっていたせいか、近付くグリムジョーに気付かなかったらしく
けれど今漸く、そのあまりに大きな霊圧に中てられ
死神はガチガチと歯を鳴らすと、その場に崩れ落ち地面に膝をつく。
破面と言われても、所詮平死神なので何の事か解かっていないし
ましてbェ一桁で、躯に番号入りの十刃だとは知りもしない。
哀れなものだが、目の前にいる虚が特別だと言う事は、理解できているようで
恐怖に引き攣った顔で後退る。

しかし、如何せんグリムジョーの霊圧が暴力的に高すぎた。


「・・オイオイ、なに逃げてンだよ」
「ひっ!よせ・・!俺に近付くな!!」


完全に畏縮した死神は情けなく尻餅をつき、ガタガタと震えながら後ろに下がっていき
グリムジョーは興を削がれたようにそれを見下ろしていたが
その死神の背後に一護が居るのを確認した途端、面白いものでも見る目付きで口角を上げると
ワザと追い詰めるように、ゆっくりと間隔を縮めていってやる。


「っやめろ、来るなぁ!!」


死に物狂いで死神が後退る内に、ドンと背中が何かにぶつかって
それ以上は逃げられなくなった。
慌てて背後を振り返ると、見惚れるほどに満面の笑みを浮かべている一護。
思わず現状を忘れて、「あぁ、綺麗だ・・」と惹き込まれた瞬間
脳天から尻の終わりまで斬月によって真っ二つにされた。

ブシューッと勢い良く鮮血が噴き出す。
血の雨というよりは、噴水だった。


「あはは!すっげ綺麗!」


その返り血を避けようともせず頭から全身に被った一護は
二つに分かれて別々に地面に倒れる塊を見て
恍惚と目を細めると、可笑しくて堪らないという風に声を上げて哂う。
半分ずつのその死体は、周囲に居た涎を垂らす屑虚によってすぐに喰いつくされた。
それを見て、また一護は狂ったように哂う。

狂気そのものだった。


「一護」


グリムジョーは未だに哂っている一護を呼び、卑猥に舌舐めずりをした。
一護はすぐにグリムジョーの傍に寄ると、腕を絡め
そしてどちらからともなく、競うように口付けを交わし
深く舌を絡めて唾液を与え合い角度を変える。
すぐ近くに食べ残された死神の死体の一部分が転がっているのが視界の端に映り
更に興奮してお互いに唇を貪りあえば
今度は躯を繋げたくなった。


「青姦でOK?」
「今更だろ、ってかココ虚圏だし」


それもそうだと哂ったグリムジョーは
熱い吐息を吐く一護を血溜まりの赤い地面へと押し倒した。
一護は自分の死覇装にさっきの死神の血が染み渡るのを感じ
ゾクゾクと背中を悦びに振わせる。
頭がオカシクなりそうな程の興奮と快楽。
死と性が交じり合い、混沌としている。
一護もグリムジョーも、こう言った状況下でセックスをするのが堪らなく好きだった。
相反するものが愛おしい。
死を与えた場所で生を与えるのが好きだ。
汚いモノの中で綺麗なコトをするのが好きだ。
ウソをついて本当のことを言うのが好きだ。
くだらない時間の中で楽しいことをするのが好きだ。
理想と現実が好きだ。
敵の中の恋人が好きだ。
好きだ好きだ好きだ。

最後に二人で死ねればそれでいい。


「・・・また、ヤろうな?」


だから、一護とグリムジョーは、この危険な玩びを心から愛し、愉しんでいた。
相手の為に味方を殺して供物のように差し出し
そして創り上げたその異常な状況の中で裏切りに陶酔しながら、そこで一番不釣合いな行為をする。
全てがありえない程心地良かった。
安心したし興奮した。

もう、やめられない。

 

 


「次は、誰にする?」


 

【終】


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あとがき

もっと濃ゆい話にしたかったんだけども。
またヒマな時に書き直そう…

2007/03/05  いた。