※流血・暴力的表現、性描写あり。ご注意を


 

 

『鬼ごっこ』

 


暗闇を闇雲に奔る。
後ろを振り返るのがとても恐ろしくて
焼き切れそうに苦しい肺になんか構ってられず
ただ前だけを見て、
奔る。

異常に冷たい汗が背中を何度も伝った。


「っは・・・ぁ! ・・っ」


気持ちばかりが焦って脚がついていけずに
無様に地面にひっ転ぶ。
咄嗟についた両腕が擦り切れて血が滲んだ。
けどそんなことはどうだっていい。
今、重要なのは、逃げること。


「見ィつけたァ」
「・・ッ!」


倒れ込んだ背後から、囁きかけてきた、低い声。

・・追い付かれた・・!!

恐怖で心臓が跳ね上がり、慌てて立ち上がろうとしたが
その前に背中を踏みつけられ、
強かに上体と頬を地面に打ちつける。


「、ッひ・・・・!」
「捕まえたぜ・・?」


苦痛の呻き声ではなく絶望に近い悲鳴を上げると
愉しげな声が上から垂れてきた。
俺はあまりの恐怖で一気に力の抜けた情けない躯で、なんとか這いずろうとするが
少し爪で地面を引っ掻いた程度で何の意味もなく
それを嘲笑うかのように、声の主が小さく咽喉で嗤う。
とても恐ろしかった。


「・・っあ、・・・助け・・・!」
「誰にタスケテもらうんだよ、一護」
「ッ!」
「いいぜェ?叫んでみろよ。助けてママー、ってな!」


ハハ!と嗤って、背中から脚が退かされる。
俺は揶揄された屈辱もへったくれも無く、慌ててそこから這い出し
転ぶように立ち上がってから、奔りだす。
何故一度捕えたのを逃がすのかという疑問すら持たず
兎に角この男から一歩でも遠く、離れたところへ。それだけだった。


「10数えるまで待ってやる。精々その内に逃げとけな?」


背後の声がいかにも愉しげに言って、「イーチ、ニーィ・・・」と秒読みが始まり
俺は一体どこに逃げたらあいつを撒くことができるのかと、左右に視線を廻らせるが
今までどの路を奔ってきたのか既に解からなくなっていたから
絶好の退路なんて探し出せる筈もなかった。
でもだからと言って、ただ真っ直ぐに奔っていたんじゃすぐに捕まってしまう・・・・


「・・・っ」


俺は壁に手をつき、ヨロヨロと横道に入った。
選んだのは細く狭い場所への逃避。
本能に任せるままに路地裏へ逃げ込む。
それが正しい選択かなんて知らない。


「っはぁ、っ・・はぁ、・・・・く・・っ、」


ゼェゼェと肩で息をしながら壁伝いに奥へ奥へと進んでいるうちに
いつの間にかあの男の声は聞こえなくなっていた。
でも、たった10のカウント中に早く逃げなければならない。
俺は今にも崩れてしまいそうになる躯をなんとか支え
まるで終わらない鬼ごっこをしているような感覚に陥りながらも、逃げ続ける。

ただし、相手は鬼より厄介なものだ。

捕まれば何をされるか判らない。
それこそ御伽噺のように頭から喰われるかもしれないし
いや、それよりも確実に、残酷で非道で異常なことをやってくるのは間違い無い。
そんなことは誰よりも良く理解している。
だからこそ、早く逃げないといけないのに・・・・・・


「・・・・あ、・・ウソ・・だ・・・!」


運が悪いことに、目前は行き止まり。
不慣れな土地鑑が禍したか、己の不運さに眩暈を起こしそうになった。
今から引き返したりなんかしたら、下手するとあいつと鉢合わせになる。

俺は見事に袋小路に自ら入り込んで、退路を断った愚か者だった。

それでも往生際悪く、他に逃げ道は無いのかと周囲を見回すが
元来た路以外は、乗り越えられそうもない高い壁がグルリと取り囲んでいて
為す術は無い。


「あーあー、行き止まりじゃねーか。どーするよ?一護」
「ッ?!」


どうしようもなく、立往生していたところで
すぐ真後ろからあの低い声が聞こえたと思った瞬間、目の前の壁にドンッと叩きつけられ
一瞬息が止まり、悲鳴を飲み込む。
背後から覆い被さるように俺の躯を壁に押さえつける男の気配を背中越しに感じ
慌てて首だけ振り返ると、ニヤリと哂うサックスブルー。

・・・あぁ、捕まった・・!!


「・・っ、ぁ・・!」
「折角逃がしてやったのに、そんなにオレに捕まりたかったのかよ?」


耳に掛かる吐息が背筋を凍らせる。
押し付けられた壁に爪を立てても後ろの男は離してくれない。
ガチガチと歯が鳴った。


「ンな怯えんなって、取って喰いやしねーよ」
「・・ッ」
「ま、犯すけどな」
「?!」


囁かれたのと同時に、ベルトが外され引き千切るように下着ごとズボンが下ろされる。
目を見開いて背後の男を見ようとしたが
いきなり曝け出しの尻に指が触れ
押し分けるように穴を探り当て、一本か二本無理矢理捻り込まれた。
驚くなんてもんじゃない、思考が止まり、呼吸も停止する。


「うっ、!・・・・く!! っ・・や、め・・!!」


引き攣る痛みと、異物が中にあることが気持ち悪すぎて、髪を振り乱して拒絶するが
構わず其処を左右に広げるように二本の指が両側に開く。
閉じようと力を入れるが更に強い力で割り開かれていき
どうしようもない恐怖と不安に駆られ、只管女のように「いやだいやだ」と悲鳴を上げた。
この先にある行為が容易に想像できたからだ。
強姦される。


「、いや・・だ!っ頼む、、やめ・・・っ・・!」
「その声、すげぇクるぜ・・・。・・もっと啼けよ・・・」
「・・ッヒ?!」


愉悦を含んだ声が呟きながら俺の項を舐め上げ、耳朶を転がしていると
尻に生温かくて硬いものが当たる。
それが何であるか見えなかったが、男の勃起した性器なのは間違い無かった。
ゾッと躯中が総毛立つ。


「・・・・ッヤメ・・!!っぁ、あ・・っ!!」


二本の指が作り出していた隙間に、ぬめった先端がゆっくりと侵入してきて
指をだんだん抜いていきながらその分塊をギチギチと入れてくる。
そのあまりの気持ち悪さと痛みに歯を食い縛って拳を握るが
次の瞬間、一気に貫かれた。


「っあ゛、ぁあああッッ・・・!!!!」


想像を絶する痛みと同時に、温かなものが太腿を伝い落ちていく。
裂けたのだと、理解するには十分だった。
痺れ、麻痺する。
なのに中のモノは嫌というほどハッキリと感じられ、とてつもない吐き気が込み上げてきて
けどその感覚も落ち着かないうちに、ドクドクと中で脈打つ男がズルリと動き出し
俺は冷たい壁に縋りついて、嘔吐感と一緒に悲鳴を呑み込んだ。


「・・・っぅ・・、・・・ぐ・・・・っ、、」
「おーおー、頑張るねぇ」
「・・・ッ・・」
「加減なんかしねーぜ?」


小さく咽喉で嗤った男が、背後から俺の手を掴んで壁に押し付け
ゆるやかに腰を前後させ始める。
俺は目を閉じ耐えようとするが
次第に大きくなる動きに、だんだん息が上がっていく。
頬が壁に擦られて痛い。


「・・・ふ・・、 ・・・っう・・!」


唐突に強く突き上げられ、押し殺した声が零れてしまう。
それに気を良くしたのか、男は続けて何度も俺をメチャクチャに突き上げだした。


「ひっ!あ・・! 、ぅぐ・・ッ!!」


堪らず苦痛の声を上げると、首筋を噛まれ、舐められる。
犯されながら喰われているのだと、錯覚させられる。
怖い。
恐い。
コワイ。
嫌だ・・!

男が激しく動く所為で、切れた場所からまた血が垂れていくのが解かる。
それがグジュグジュと泡立つ音が耳について離れない。
気を失ってしまいそうだった。


「・・なァ、オレの名前、覚えてっかよ・・・?」


出し抜けに、男である俺を犯す男が、低い声で問い掛けてきた。
俺はこいつの顔も声も名前も、あの日会った時から片時も忘れたことは無かったが
馬鹿正直に「覚えている」と言えば、あの時のことを引き摺っているみたいで情けなかったから
覚えていないフリをして、唇を噛んだ。


「ッハ!言わねーってか?いいぜ、言わせてやる」
「・・?!」


けれど男は、ワザと名前を言わないことなどお見通しで
しかもそれに腹を立てるでもなく、逆手に取って
愉しげに囁くなり、さっきまで舐めていた俺の肩口に
今までにない程強く歯を立ててきた。


「ぅああッ!!、ツッ、ぁあ・・!!」


皮膚を突き破り、肉を抉って、深々と噛み切るように顎を動かすから
俺は絶叫して硬い壁をガリッと引っ掻いた。
爪が割れる。


「言え」
「ッ・・、グリ、、ムジョー・・・・!!」
「クク・・やっぱ覚えてンじゃねーか」


ナケナシの意地はいとも簡単に崩され
言うまいとしていたその名前を容易く口にする。
それどころか、強制的に言わされてしまったことで
今まで出ようともしなかった涙が勝手にボロボロ零れ始め・・・
情けなくも俺は嗚咽を洩らして壁に涙を滲ませた。
こんな屈服、したくなかったのに、一度崩れたものは二度と元に戻りそうにない。
悔しかった・・・


「ハハ!最高だぜェ?その顔!悔しくて堪ンねーってツラしてんよ!」
「・・・っふ・・、ぅ・・・・ぐっ」
「やっぱオマエに目ェつけといて正解だったわ」


頬の涙と肩から溢れていた血をねっとりと舐め取り、クツクツと哂ったグリムジョーは
拘束していた俺の手をグッと握り締めると
腰を一層強く打ちつけたと思った瞬間、ドクリと熱いモノをぶち撒けた。


「・・ッは・・!、・・・あ・・」


中を満たす液体に身震いして目を瞑る。
想像以上に気持ち悪くて、拒否反応のように迫上がって来た胃の中身を
今更のようにボタボタと地面に吐きくだした。
咽喉が焼け付くように痛む。
グリムジョーは掴んでいた手をあっさり離し
ズルリと中から出て行った。
その感覚すら不快で、歯を食い縛る。


「・・・・っく・・・ぅ、、」
「そんなに嫌だったかよ、ゴーカンされんの」


含み笑いをしながら耳元に囁きかけてくる低い声。
そんなの当たり前だと睨み上げたいが、依然躯を壁に押し付けられたままなので
どうすることもできなかった。
無性に遣る瀬無くて、また涙が溢れてくる。
でも、嗚咽を洩らすことだけは何とか耐えた。


「だったら、逃げな。オレに捕まらないように」
「・・、、」
「逃げて逃げて、泥塗れになって汗塗れになって血塗れになって」
「・・・っ・・」
「最後まで逃げ切れたら、逃がしてやる」
「・・あ・・・」


躯から、ゆっくりとグリムジョーが離れ
途端に支えを失った俺は、壁伝いにズルズルと地面にへたり込む。
腰が抜けていた。


「ただし、捕まえたら、また犯すぜ?」


背後から俺の顎を引き上げ後ろを向かせ、視線を交わらせると
口端を引き上げて哂う、追跡者。
ゾクリと背筋が戦慄える。
瞬きが出来ない。

・・・助けて・・・くれ・・・!

 


「さぁ、始めようぜ・・・?」

 


準備はいいか?

狂った鬼ごっこの幕が上がる。

 

 

【2へ続く】


BLEACH小説一覧へ戻る




あとがき

た、楽しい・・!!
攻めに追っかけられる受けネタが好きです(真顔)←
止まりません。
できたら続かせたいなー、と。
前に書いた『闇に・・・』の続編的な感じで

2007/02/19  いた。