※失禁・嗜虐行為・性描写有り。ご注意を


 



『鬼ごっこ#6』

 

絶望していた。
薄暗い路地裏で、座り込んで、項垂れる。
グリムジョーが去ってから、一時間以上、俺はずっとそうしていた。
隣には、冷たくなった恩人が横たわる。
俺が、巻き込んだ。
その事実はどうやっても逃れようが無く、
凄まじい自責の念と後悔が巨大な渦となり襲い掛かる。


「…ちく、しょう…ッ」


吐き捨てた悪態は己自身へと宛てたものだ。
俺がもっとちゃんと上手く立ち回っていたら、こうはならなかった筈だった、と。
グリムジョーが言う通り、こんな『鬼ごっこ』という名の地獄に
他人を関わらせては駄目だったんだ。
…それが、狂った鬼事が始まってから三度目に捕まった時に悟った、絶対的なルール。


「…っく…」


ボロリと零れた泪の粒が微かな音を立ててアスファルトに落ち
暮れる陽を告げる冷たい夜気が、頬や顎に伝う泪の筋を冷やす。
俺はノロノロと立ち上がって、充電の切れた携帯を捨てるに捨てられずポケットにしまい直し
公衆電話へと脚を向けかけ、やめる。
芳賀の事を通報しようかと思ったが、人目につきたくなかった。
それに、正直今の精神状態でまともな話が出来るとも思えない。

(……大丈夫、だ……きっと誰かが、見つけて、くれる……だから、、)

だからごめん、と、誰も聞く事のない謝罪を呟いて、酷く重い足取りで此の場を離れた。

 

―――――――――――――

 

明くる日の朝。
殆ど仮眠に近い、ごく浅く短い眠りから醒めて一番最初にした事は、欠伸ではなく周囲の気配を探る事。
無論グリムジョーの霊圧だけでなく、他の誰かが近くに居ないかどうかだ。
もう二度と、無関係な人を危険に曝さない為に。


「…っ、、」


その二重の警戒が、殊更に神経を磨り減らす。
空きっ腹にこの過度な労力がもたらす疲労感は半端ではなく
つまる所、心も躯も音を上げてしまいそうだった。

無断で入り込んだ5階建て廃ビルの2階
運がいい事に、捨て置かれた壊れかけのパイプベッドと
鍵のないロッカーには着られそうな男物の服があった。
電気も水道も止められているが、隠れ場所としてはなかなかだと思う。
一晩明かせばすぐに出て行こうと考えていたけれど、もう暫くは此処で身を潜めたい。
と言っても、いくら隠れた所で、グリムジョー曰く、殺しきれない霊圧があるらしいから
遅かれ早かれ確実に見つかってしまうのは目に見えている。
だったら逃げ回るのは甚だ無意味なんじゃないのかと、この鬼ごっこそのものに疑問を感じたが
グリムジョーが毎度飽きる事無く俺を追い詰める事をやめないから、
こっちも必死で右往左往するしかない。
結局は絶対に逃げ切れないと判っていても…


「…は…ぁ…」


本当に、あいつは一体どういうつもりなのだろうか…
考えてみても、その思惟や意図など理解出来る筈もなく
そうこうする内、うつらうつら、
睡魔の手に泥土へ引きずり込まれるように、いつの間にか深い眠りに落ちた。

―――どれぐらいの時間、意識を手放していたのか、、
何にせよ、致命的だった。


「よォ」
「ッッ!?」


不意に大きく沈んだマットレス、次いで、降った低い声と恐ろしい霊圧に
愕いて飛び起きようとした躯はしかし、真上から右の肩口を踏まれベッドへと押し戻され
瞠目し見上げた視線の先に居た男を認識した瞬間
自分がしでかした最悪の迂闊に気付き、
一気にドッと冷や汗が噴き出して、バクバクと心臓が動悸を打った。


「…あ、、グリム…ジョー…!、ぅぐっっ」
「熟睡たァ余裕じゃねェか、一護」


厭味にせせら笑い、肩から左足を離したグリムジョーは
いきなり其の足で俺の股座を脅すように軽く踏む。
体重をかけていないとはいえ、いつ強く踏み抜かれるとも知れない恐怖心は途方もなく
ゾッとし慌てて逃げを打とうとすれば、すかさずゴリと睾丸を圧迫され
息を呑んで硬直し、竦み上がった。


「今更遅ェよ、バカが」
「ッ!」


悔しいが返す言葉もなく、俺は俺自身が本当に信じられなかった。
あれだけ気を張っていたのに、グリムジョーの凶悪な霊圧に気付けないほど眠りこけていたとは…
でも躯が限界だったのは事実で、急所を圧する男の片脚を退かせようにも、ピクリとも動かせなかったし
死に物狂いで逃げ出したいのは山々なのに、手足はその意思を拒絶するかのように果てしなく重かった。


「っく、そ…!離せよ…!」
「ハ!口だけはホント生意気だな…誰に命令してやがる」
「ッ?!、ぅぐああ゛ぁあッッ!!!」


食って掛かる言いようが気に入らなかったらしく、(だってしょうがない、こっちも必死だ)
グリムジョーは嗤みを浮かべるなり、足蹴にしている俺の股間を、いよいよ体重をかけて踏み込んだ。
そのあまりの痛みに絶叫すれば、下卑た薄笑いを浮かべて見下ろす男が
まるで愉しんでいるかのように、容赦なくグリグリと躙り続ける。


「い゛っ!…うッ、ああ…!!」


局部を只管に襲う尋常でない激痛で、限界を迎えた俺は、とうとう、


「ヅあ゛、あ゛…!、ぁあ…ぁ…っ」


漏らした。
堤と同じで、一度決壊したら、もう、止まらなくて
半ば意思とは無関係に溢れ出す小水が、瞬く間に着衣に染み亘っていき
ぐっしょりと濡れそぼった其れが肌に張り付いて、ツンとした臭いが鼻を突く。
気付いたグリムジョーは、片側の口角をこれでもかと吊り上げると
脚をどかせ、まじまじと失禁した俺を眺めながら、


「クク…無様だなァ、一護」
「ッ…ぅ、ぅ、、」
「ったく、テメェの所為で汚れたじゃねェか。しっかり舐めて綺麗にしろ」
「、んぶ…っ」


言い放ち、踏みつけていた所為で当然濡れている土足の裏を、口元へと無遠慮に押し付けて来た。
どんな厳しい死闘の中でも、かつて失禁などした事もなくて
かなりのショックを受けて愕然としている所へ、追い打ちのような鬼畜行為だ。
その威圧的な声は何とか理解できたが、そんな事、全く出来る訳が無い。否、したく無い。
けれど、怒ったグリムジョーが今度は何をしてくるやら見当もつかず
はっきり言って、どうしようもなく、恐かった…


「…っ…ん…、、」


結果、矜持よりも、痛みへの恐怖の方が勝り
そろそろと舌を出して掠るように撫でれば、異様な屈辱感と羞恥が込み上げ
俺はどうしてこんな愚かしい真似をしているのだと、忸怩たる思いで吐きそうになったが
それでも目の前の冷酷で圧倒的な存在に唯々諾々と従うしかない現実に
ボロボロと悔し泪を流して、小刻みに戦慄いた。


「ハッ…そのツラ、堪ンねぇな」


よっぽど人の自尊心を粉々に砕くのが好きなのか、興奮気味にそう溢したグリムジョーは
相変わらず俺に爪先を舐めさせながら、「脱げ」と一言命じた。
捕まった時点で、こうなる事は判りきっていたとは言え
また散々犯されるのかと思うと、嫌で苦痛で、我知らず小さく首を振れば案の定
グズグズするなと口元にあった脚が唾液の糸を続かせて引っ込みざま、鳩尾を狙い済まして踵が落ちる。
う゛っ、と 鈍痛と共に押し寄せる嘔吐感を辛うじて遣り過ごし
ようやっと解放された口内に溜まった唾液を力なくドロリと吐き捨てた後、諾の意思を込めて浅く頷けば
グリムジョーはわざと良く見える位置、つまり俺の足元の方へと移動し、鷹揚に腕を組んだ。


「…ッ…、」


ぶるぶると、羞恥ではなく、怯懦で震える両手をズボンにかけた俺は
一部始終を見詰める目の前で、下着ごと引き下ろし、両脚から抜く。
屈服させられたのだと、否応無しに自覚せざるを得ない瞬間だった。
目を閉じ歯を食い縛って顔を背けると、グリムジョーが低く咽喉で嗤いながら
今度は「脚を開け」と、更に傲慢な事を言って来る。
最低だ。


「…くッ、そぉ…っ」


吐き捨て、でもやるしかなくて、血が出るまで唇を噛み締めながら
嫌々膝を立て、ゆっくりと、ほんの少しだけ左右に開いて、しかし其処で止まる。
どうしても、出来ない。
なけなしの理性とプライドが、己の行動にブレーキをかける。
けれど、従わなければ、痛い目を見るのは必至で、、


「…っう、ぅぅ…ッ」


そうして葛藤する俺を、ニヤニヤと心底愉しげに見下ろす男は
戯れに足先で此方の膝を小突き、厭らしく脹脛を撫で、外側へと拡げるように押す。


「…ッや…、め、、」
「いーから、さっさとしろ。骨を折られてェか?」
「!!」


それが脅しじゃないことなんて、イヤというほど知っている。
しかもコイツの場合、絶対に折るだけじゃ済ませないだろう
それこそ命に関わるような非道い事をやって来るに違いない。
どうして、今までのように無理矢理暴くような事をせず
こんな下衆極まりない行為をさせたがるのか知ったことじゃないが
さっきからずっと味わわされている恥辱と言い
俺の精神面を痛めつけるのが目的だとすれば、大いに効果覿面だ。
何にしろ、


「…これで、満足…かよ……!」


慙愧に震え掠れる声で吼え、お望み通り、両脚を大きく開いて見せた。
畜生、嗤うなら嗤え…
無用な苦痛を避けたいのは勿論だが、偏に、生きたいが為だ。
以前、いっそ死んでもいいかと自棄になりかけていた時
芳賀のおかげで、生きていて良かったと思えた。
だったら、もう一度そう思えるように、何が何でも生き延びなければ
あいつだって、犬死だ。
例えどんなに無様で、醜悪であろうと構わない。


「っ」


そう決心してグリムジョーを睨み上げると、冷たい双眸に俄か、嬉々獰猛な光色が奔り
弧に歪んだ唇にゾロリと舌が這う。 
まるきり捕食者の其れだ。
ゾッと怖気を感じ後退りかけるも、それより早く
開いていた脚の間へと、覆い被さった男の体躯が割って入り、身動き不能になる。
体勢の不利は言うまでもなく、容易く押さえ込まれてしまう力の差は歴然で
しかも密着した股座にゴリと既に硬く兆しをみせる一物を布越しに押し付けられると
情けない事に腰が抜けてしまった。


「あ…、よせ、、頼む…っ」
「可愛いじゃねェか…それでオレがやめてやると思ってンのか?」
「ッ!、…う゛…うぅっ!!」


グリムジョーに捕らえられた時点で全て手遅れだし
何を言っても何をやっても無駄な事ぐらい十二分に理解しているのに
惨めに懇願せずには居られなかった俺を、嘲り一笑に付した男は
片手で自らの牡を取り出し支え、恐怖に引き攣る後孔へと無遠慮に捻り込む。
堪らず呻き声を上げるが、皮肉な事に、
何度も蹂躙された其処は裂ける事なくグリムジョーを呑み込んだ。


「…ふっ…、は、、…あぅ…ッ」
「だいぶ慣れて来たンじゃねェ?」
「ざけ、、ん!……っ…!、アッ、あ!〜〜っ゛、、」


軽口を叩く男に反論しようとするも、すぐに揺すり上げられ言葉にならない。
慌てて歯を食い縛り、妙な声が出ないよう抑えながらシーツのないマットレスにガリガリと爪を立てる。
それを無駄な努力だと言わんばかりに、グリムジョーはのっけから手加減なしに激しく腰を突きあげ


「ぃあッ、あ゛…!ひぐっっあ!!、ぅう…っ!」


首筋を思わせ振りに舐めたあと、獲物の急所に歯牙を突き立てるが如く噛み付いて来た。
まるで鬼ごっこ初日を彷彿とさせる其の野蛮な行為に
俺は自重しようにも出来なかった喘ぐような悲鳴を上げながら
男の口元へやめろと手を伸ばしたが、触れる前に、逆に指先に喰い付かれ
第一関節と第二関節の間にキリキリと歯列を立てられる。
かと思えば、ヒリリと痛む其処にねっとりと熱く濡れたグリムジョーの舌が這い
指の股から爪の先まで厭らしくねぶり廻した後、
ちゅると卑猥な音をさせて吸い上げながら唇が離れた。


「、、ぁ、っ…な、ん、、」
「テメェはうまそうだ……勿体ねぇから、喰わねェけどな」
「ッ?!…っ、やめ、ッ触ん…!、んあっ、あ…っ」


物騒な科白を吐きながら、再び人の指やら二の腕やらを物欲しげに舐め上げるグリムジョーは
したたかな律動を更に貪るようなものに変え、俺を翻弄する。
おまけに酷いのは、くたりと萎えていた性器を気紛れに握り込んで手荒く扱くものだから
粗末で古びたベッドが大袈裟に軋んでギシギシと如何にもな音を立てる中に
俺のあからさまな嬌声が入り混じって煩く、恥ずかしい。
とても耐えられそうにないと首を振れば、
いつになく苛烈な情火を湛えたグリムジョーの双眸がひたりと俺を見据え


「なァ、さっきの目、良かったぜ…?」


漸く本気で逃げる気になったかと、至極悦に入った声色で囁き


「もっともっと、醜く逃げ回って、精々オレを愉しませてくれよ?」


必死に生き延びようと足掻くテメェを追い詰めるのは最高だ
と、口角を上げ愉悦の笑みを浮かべた。

…こいつは、嗚呼、、本物の……


「…はぁっ、あ…ッ…、お、鬼…っだ…!、、ッ…ア、ぁあ!」
「ハ!」


否定せず、短く哂ったグリムジョーは、既に息も絶え絶えな俺の膝を抱え上げ
更に深く交わり奥まで抉るように貫きながら、底なしの体力で、拷問に近い行為を続ける。

結局俺は意識を失うまで、なすが侭に揺さ振られるしかなかった。

 



【7へ続く】


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あとがき

前話から約3年ぶりの更新て、、長編としてどうなの…orz
しかも、えと、いまだに結末考えてないので、まだ続きます;;;
いやでも、どんどんズタボロになっていく一護を書くのはとっても楽しいので、頑張ります…!

2012/03/31  いた。