霊圧とは、身体の奥から湧き出る泉のようではないのか。

 

なぜ、この男のソレは、こんなにも圧し掛かるように重く

暗く、枯渇しているように乾いているのか・・・。

 

 


『闇に呑み込まれる速度で』

 

 


ヒタリと、アスファルトの路に降立った長身は

まだ、遠かった。

 

逃げれる。

 

普段なら考えつきもしない次への行動。

そうだ、俺には無理だ。

あの男は、倒せない。


・・ルキア・・!!

 


「逃げろッ、一護・・!!」

 


敵を目前にして後ろに振り返るなんて、自殺行為の筈なのに

切羽詰った顔して言ってくれたって、

 


「ッルキアァ!!」

 


華奢な身体を貫く手刀は、今、始めて、見えた。

レベルが違いすぎる・・!


・・あぁ、解かっているのに・・・・・


どうして動かないんだ、俺の脚は・・!!

 


「どーした、動けねーのか?」
「・・ッ!」

 


笑みを浮かべた男が歩いて来る、近付いてくる、

こんな恐ろしいことはないのに

ガタガタ情けなく震える手は斬月さえ握っていられなくて。

 


「・・ぁ、・・あ・・!」

 


噴き出る冷や汗が背中を伝うのを感じても

どうしていいか解からないから

馬鹿みたく突っ立っていることしか俺には出来なかった。

 

「助けて」なんて、今まで思ったこともなかったのに。

 


「・・・・っ、」
「あー。顔はまぁまぁな」
「?!」

 


ギリギリまで近付いて、目と鼻の先で言われた言葉の意味なんか理解するヒマなく

横のブロック塀に叩きつけられ。

 


「ッかは・・!」
「・・・ンだよ?超脆ェし・・・」

 


肋骨の一本でも折れたか打ち所が悪かったか、

迫上がって来た血痰を吐き出して噎せる。

それを見て男が不思議なものでも見るみたいに覗き込んでくるのを

歯を食い縛って痛みと一緒に耐えた。

 


「・・ふーん。鳴かせてくださいってか? クク・・いいぜェ?」
「・・・?ッ、!っぐ・・あ・・・!!」

 


口端を吊り上げた男の意図を計る前に

鳩尾に激痛が走り

めり込んだ男の拳が重く胃に残る。


ヤバ、吐く、、

 


「ぐッ、ぅおぇ・・!・・・ッ・・!かは・・っっ」
「ハハ!汚ェ悲鳴だなァ、オイ。もうちったぁキレイな声で鳴けよ」
「・・!!ぐあっぁぁあっ・・!」

 


血液混じった胃液を嘔吐したところで

髪を鷲掴まれて上を向かされ、曝け出しの首筋に噛みつかれる。

食い千切られると思った。

 


「はぁっ、!・・い、・・あ・・・ッあぁァ・・!」
「・・イィ声出すじゃねェか」

 


薄い皮膚を食い破られ、その食い破った傷を広げるように舌先を捻じ込んでくる痛みに

俺は只管悲鳴を上げた。

こんな無様で聞き苦しい声なんか、どんな傷をつけられたって上げたことはないのに。


この男の恐ろしさと言ったら・・!!

 


「あッ・・!あぁ・・っ、、ぅぐ・・!!・・・っ!」
「ぅわ、テメェの血と肉、最高だわ」
「・・っ、あ・・・、・・・あぁ・・・・・・ぁっ・・・、、」

 


至極満足げに、溢れて伝い落ちる血の筋に赤い舌を這わせ

一滴も逃さず舐め取る男の唇が弧を描く。

鬼道を使われたワケでも霊力を吸われたワケでもないのに、

俺の身体は力を失った。

歯痒くも男の腕はそれを支える。

 


「・・・・っはな・・・せ、・・・・ッ」

 


触れられた場所から闇に侵食されていくような気がして、離れようと腕を突っ張る。

得体の知れない恐怖が背筋を這い上がり続ける。

男は、不意に愉しげな笑みを浮かべると、何を思ってか、いきなり俺の唇に喰らいついてきた。

血の味がする舌が無理矢理捻り込まれる。

 


「っん・・!、ふ・・・っ・・・、ひぐ・・ッ!!」
「・・・・・・・・・・」
「・・・ぁ・・、く・・・・っ」

 


引っ込める前に強く噛まれた俺の舌は、悲鳴を上げることすら許されず

温い血を流し始めた。

痛みで滲みでる唾液と一緒に混ざり合い

次々と男に飲み込まれていく。

グビりと上下する咽喉が悍ましい。

氷みたいな目と視線が合うと、逸らすことは出来なかった。

 


「・・・・ン・・、・・んっ・・・・・」
「・・美味ぇ・・」

 


唇を離し、口許から漏れた血を舐め上げた男の霊圧は

俺の霊圧を喰らったみたいにデカくなっていた。


・・もう、呼吸すら儘ならない・・・・

 

「・・・・・ぁ、、」

 


出血の所為か霊力不足か、それともこの男の所為か

狭い視界はジワリと霞みだし、意識はまるで遠のくように揺らぐ。


・・何も考えられない・・・。


男は口端を吊り上げ尖った犬歯を見せて哂うと

ゆっくり俺の耳元に薄い唇を寄せ、

 


「・・・オレは、グリムジョー・ジャガージャック・・」
「・・・・っ・・・、、」
「一生覚えとけよ、死神ィ・・」

 


粘り付くような低音で、ドロドロの蜜を垂らし込むように囁く掠れ声が

どこまでも俺の思考と脳内を犯した。


・・こんな奴、俺は知らない・・・・・

 


「また会おうぜ?なァ、死神ィ・・?」

 


毒のような声をこれ以上聞きたくなくて顔を背ければ

その瞬間、重く圧し掛かっていた男の霊圧は掻き消えた。


俺の身体は支えを無くしてズルズルと地ベタにヘタリ込む。

 


「・・・・・あんな奴・・・、俺は、知らない・・・・・・・・」

 


いつの間にか溢れていた涙は

ぬるく頬を濡らして、アスファルトに落ちていった。

 

 



【終】


BLEACH小説一覧へ戻る




あとがき

初ブリーチ小説です。
今まで手を出せそうで出せなかったのですが
NO,6 グリムジョー氏に、軽く虚閃で心臓をブチ抜かれ
ものすごい勢いで惚れたあげく、とうとうカプ小説に手をだした所存でございます。
あ、はい。キャラ萌です(笑)

2006/08/30  いた。