『仲良くしよう』

 

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

気まずい。
何で俺がこんな肩身の狭い思いしなくちゃならないんだ。
コイツか、コイツの所為か?

「・・・ナニ?」
「いや、別に・・・」

合同合宿なんて初めてなのに、相手は毛嫌いしてる埼玉強豪校の私立華武高校で
やり難いったらないのに、練習試合だけならまだしも
どうして同じ部屋で寝泊りせにゃならん?
しかも、やれ空き部屋の都合だ、やれクジ引きだとか何とかで
一番一緒の部屋になりたくなかった、御柳芭唐と二人部屋だったりする。
これは、アレか?
日ごろのコゲ犬の祟りかなんかか?
セオリーでいけばお前が因縁のライバル〜とかでコイツと一緒になるのが当たり前だろ?
なぁ、オカシイだろこの状況。

「・・・・・で、どうする・・?」
「何が?」
「だから、ホラ、さっき監督とかが言ってた・・・」
「あー」

ぶっちゃけ一秒でも早くこの部屋から退散したいんだが
それはついさっき両校の監督から出された提案もとい命令に逆らう事になる。
俺等以外にも、十二支・華武のそれぞれが相部屋になってる一触即発状態の中
何を血迷ったか、いきなり
「明日の朝までに親睦を深めろ」
と二人揃ってのたまったのだ。

ボケたかジジイ共・んな事できるかと皆して散々ごねたが
お面の下の目がキランとか光ったり
羊の毛でも刈れそうなバリカンとかチラつかされたら
テラ恐ろしくて誰も文句言えねーよ。


「とりあえず、自己紹介でもやっとくか・・・?」
「・・・・あー、ってか、とりあえずとか言うなや、ウゼェ」
「ンだとテメ」
「どこぞの駄犬の口癖とか癇に触るンだよ」
「あーそっか、仲悪いもんな、お前ら」

敵校の同じポジションのヤツと距離を縮める方法なんてすぐに思いつく筈もなく
妥当な所で自己紹介を提案したが、素気無くスルーされた上
何故か犬飼の方に話が流れる。
よっぽど嫌いらしい。でも俺にとっちゃそんな事どうでもよくて
何とか朝までに「お友達」と言える辺りまで進展しておかないと
あの不気味な監督とセクハラ親父にナニをされるか判らないから
必死に会話をしようと試みる。
正直こんな色男、いやいやいや、すかした野郎と居たら息が詰まるけども
ハゲは嫌だし死にたくもない。

「嫌だったらもう言わねー、悪かった。ンで、自己紹介もいい。どうせお前の事知ってるし」

有耶無耶になった自己紹介をもう一度やると言う気にはなれず
というより元々俺はコイツの事知ってるっつーか、嫌な意味で印象に残ってるから
名前も顔もキッチリ覚えてたりする。
だから自己紹介なんて意味無いんだよな、実は・・・コイツが俺の事覚えてるかどうかは知らんけどな!

「ふーん。オレも、オマエの事覚えてンよ?」
「・・・・へ?・・・マジで?」

だからこれは心底意外だった。
だって会ったのってこの間の練習試合の時だけだったし
あの時だってコイツは俺らの事バカにしかしてなかったから
てっきり名前どころか顔も覚えてなくて、眼中にしてないんだと思ってた。
なのに覚えてるとか言うから、正直愕く。

けど次の言葉で、硬直した。

「確かユニホームの尻破れてトランクス丸見え状態の癖に、オレらにデカい口叩いてた変態ちゃんだよな?」
「っう・・・」

そう言えばそうだった気もする、、でもアレは力の入り過ぎというか不可抗力というか・・・・・
ってか何でそんな事いちいち覚えてンだよ!
何か知らんけど今めっちゃバカにされた気がする・・・!!

「う、うるせーな・・!ありゃズボンの方が俺の筋力に耐えられなかったんだよ!」
「ンなどこぞのマンガキャラみたいな不思議現象が起きるワケねーっしょ」
「いやいや、ガチでソレだって!」
「はぁ?」

とか何とか、結構会話続いてんじゃん。スゲーよマジで。
やっぱ俺って誰とでも仲良くなれる天才?
最悪明美あたりで勝負しようかと思ってたんだが、どうやらやらなくて済みそうだ。

「ハッ・・・オマエやっぱ、おもしれーっしょ」
「そりゃ、どうも・・・」
「番号とアドレス教えろよ」
「!お、おう」

やー、意外とトントン拍子に事が運びますなぁ。
いきなり連絡先まで交換だよ。どうしようコレ。
・・・女子相手に売ったら1万円は軽いんじゃねーか・・・?
なんて商売感情働かせる俺をそんな冷たい目で見ないでね?
だってコイツの女子ウケ半端ねーんだもん。
他校まで実しやかに流れてる色んな噂だって、
(例えば埼玉一モテるとか埼玉一手が早いとか埼玉一女泣かせだとか云々)
それもまぁこのお綺麗な顔とか野球の実力とか見たら、妙に納得できてしまうから腹が立つ。
アラヤダ、別に狙ってるワケじゃありませんのよ?明美はもっと硬派が好みですからv

「俺、何つーか・・・お前の事誤解してたよ。
てっきり手の早い女ったらし・・じゃなかった、もっと気障ったらしいヤツかと思ってた」
「へぇ・・?まぁ強ち間違っちゃいないけどな」
「・・・・は? 、えッ・・!?」

想像していたより、全然話せる奴だって事に安心して緊張を解いたのが間違いだった。
ニヤリと綺麗な顔が哂ったかと思うと、流れるような自然さで俺の頬に手を添え
ゆっくりと近づいて来て、、
気付いたらピントが合わないゼロ距離で、唇に何か当たってた。
・・・わー・・。
頭が真っ白になるとか、ホントにあるんだなー
なんて事を妙に納得してたら、そのまま畳の上に押し倒されて
漸く現実に殴り戻される。

「・・・っん、ちょ・・!」

慌てて押し退けるように抵抗すると、突っ張った両腕を容易く畳みに押し付けられ
思わず悲鳴を上げそうになった。
だって考えてもみろよ!
二人っきりの部屋で男が男に押し倒されてンだぜ?!
寒すぎるわ・・・!!

「・・・お、おい、何の冗談・・・、」
「ンな緊張すんなって、愉しもうぜ・・?」
「・・・っ、あ!?」

こっちがアワ食ってる間に、スルッと下着の間に片手が滑り込んで来て
絶妙な力加減で俺のナニを握り込んでくる。
手品か!!

ってか、

ヤバイ。
ほんと、冗談抜きで、
ここに来て男の俺がまさかの貞操(っつーより処女消失)の危機だ。

「、っう・・ぁ・・!だ、誰か助け・・・!」

狼の前の羊さながらに、逃げようと必死に手を伸ばそうとも、掴んだのは目の前の元凶で。

「さァ、仲良くしようか・・?」

獣のような犬歯を覗かせニィと哂い
俺の咽喉笛に歯を立てるエロ過ぎる男に大した抵抗をする事もできず(明らかに経験値の差で)
再びゆっくりと唇を貪り始めた御柳の舌先に
ヒィィィィィ!という俺の叫び声は綺麗に絡め取られ、奥深くへと消えて行った…。

 

                                       

 


翌朝。


「おはよう諸君!思う存分親睦を深めたかー?!」

朝食を取る為に大部屋の座敷に全員が集まった所で
妙に晴れやかなセクハラ監督とお面監督が現れた。
何が親睦だよ・・・こちとら心労が深まったっつーの・・・・。
何で人生相談も糞もした事もねー野郎に、ケツの穴がっつり掘られなきゃなんねーんだよ・・・・
こんなん絶対俺だけだって・・・
だって他の奴らとか、昨日まで碌に話すらしてなかったクセに
今朝になって仲良さげに喋ってたりするんだぜ?
・・チキショ・・・ッ

「天国、腰引けてンよ」
「・・ッヒ!」

そんな俺の腰を、周りに判らない程度にしれっと撫でながら
御柳が馴れ馴れしく下の名前で呼んできて、俺はもう心臓が口からゲロッちまいそうになるぐらい愕いた。
それをまた御柳が可笑しそうに見て、ククッと咽喉で哂うもんだから
もう恥ずかしいやら悔しいやら腹立つわで、
後で(腰が治ってから)絶対ボコボコにしちゃるっつー毒電波を飛ばしながら
めちゃくちゃ睨みつける。

そしたら、そしたらこいつ、、トンでもねーこと言いやがった・・・!!


「そーゆー目は、オレとヤッてる時だけにしろよ?超煽られる」


なっなっなァんですってぇぇぇぇぇ?!
お前、アレか?!正真正銘の馬鹿かサドか?!
み、皆こっち見てんじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!!!!!
どういう恥辱プレイ?!
痛い!痛いよ視線が・・!!

・・・ってかなんか、半分以上同情と哀れみを込めた視線のような気がせんでもないが・・・・
いやいや、昨日の事は誰も知らんハズ・・・・

「おはよーッス、猿野くん!実は昨日からすごく心配だったんスけど、
無事に仲良くなれて良かったッスね!」

笑顔で言うなや子津。
っつーか全然無事じゃねーよ、俺のケツ処女。
・・・でも、うん、たぶん俺らが一番際どい意味で仲深まったと思うよ…。

 


【終】



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あとがき

そろそろ毎年この時期が苦しい…orz
アイディアがもう浮かばないよぉぉぉ・・・・・・でも誕生日を祝ってあげたい一心で、、

2008/08/11(遅れてゴメンね…毎年だけど)

。いた。