「大人しくヤらせろ…!」

猿野天国16歳、なんとしても主導権を握りたかった。

 

 


『環水平アーク』

 

 


御柳宅、その寝室のベッドの上で、ガタイの良い男が二人、縺れ合っていた。
吐く息は荒く、言葉もなくお互いを見つめ合い…
とか何とか雰囲気的な言葉を並べ立ててみたが
実際のところ、現状は情熱的とか性的などとは程遠く
あえて言うなら、乱闘に近かった。

「テメッ、いい加減諦めろや…!」
「うっせぇ!お前が先に諦めろっ、ンで観念して俺に突っ込まれろ!」

さっきからこの押し問答を繰り返し、小学生のようにジタバタと取っ組み合いを続け、何も進展していない。
そもそも、何故こんな状況に陥っているかと言えば
15分前に放たれた御柳の余計な一言である。

「オマエ、このままだと絶対一生童貞」

そんな痛くてしょうがない、本人が常日頃から気にしまくっていた心配事を、笑い混じりに突かれれば
さすがにどこぞの何やらの紐がブチ切れた。
ちょうど事後だったこともあり、ベッドの上で寛いでいたのを跳ね起きて
隣の地雷原を踏んだ男の上に馬乗りになり、シーツに押さえ込もうとしたまでは良かったが
ここで素直に大人しくしているタマなら最初から苦労はしない。
掴みかかった腕を取られ、その反動を利用して反転、今度は猿野が組み敷かれ。
敢え無く、泥沼戦の幕開けという訳である。

「てめぇ、黙って聞いてれば…俺がどんな思いでいっつも突っ込まれてたか知ってンのか?!ああ゛??!」
「ッハ、知るかよ。オレは事実を言ったまでだっつの」
「キイィィッ!!黙らっしゃいこのド鬼畜魔王が…!!」

自称、男の中の男の猿野が、最初の最初にどっちが上か下かで言葉巧みに御柳に言い負かされたことと
惚れた何とやらで下、つまり女役になって、早云ヶ月。
その立場は逆転することもなく続いてきたが、もう我慢の限界である。
自分だって男だ、突っ込まれるより突っ込みたい。
(イヤ、マジで!)
だって相手はあの御柳様。
顔良し・要領良し・性格悪し・女にモテる!
そんな男を組み敷いて、できれば「あんv」なんて喘がせちゃったりなんかしたら
考えるだけでも笑えるっつーか、ゾクゾクするじゃないですか!
なんて鼻息荒く拳を握れるのは、たぶんこの世に猿野天国ただ一人だ。

「なんでいっつも俺ばっかり女役なんだよ!たまにはお前がやれ!」
「は?馬鹿言うなっつの。誰が好き好んでケツ掘らせるか」
「あ゛〜?!じゃどうしたらヤらせてくれんだよ!」
「ハハハ、一生ヤダし。突っ込ませるワケねーっしょ。ってかオマエ、今更女だって抱けやしねーよ」
「っなにぃ!?」

一生童貞発言の次に、更なる爆弾攻撃を仕掛けた御柳は
怒り心頭のあまり顔を真っ赤にしてブルブルと震えている猿野の隙をつき
一気に膝を割り開いて男の最も弱い部分、つまりは急所を押さえた。
途端に猿野はピタリと抵抗を止め、大人しくなる。
まさしく、ぐうの音も出ない。というより、出せれない。

「…っ、卑怯だぞ、てめぇ…っ」
「タチとネコの勝負で手抜きなんかするかって。ってか、オマエさ、ホントにオレに突っ込めるンかよ?」
「当たり前だろ!だってお前超美人だし、オレ様だし、ドSだし、鬼畜だし…!絶対ェ啼かせちゃる!」
「……オマエ」

栗色の双眸を爛々と輝かせる猿野を見て、御柳は半分同情にも似た思いを抱く。
日頃から何となく感じてはいたが、どうやらこの自信満々の恋人様は
自分と同じように征服欲と我が強い、要するに『攻め気質』が充分お有りのようだ。
しかし当の本人がそうでも、御柳から言わせてもらえば「冗談だろ」の一言で一笑するのみ。
何と言っても、猿野は御柳自身がこれまでになく可愛がり、手塩に掛けて開発してきた相手(躯)だ。←笑うところ
精神面がどんなに強情を張っても、一度御柳が意図して触れさえすれば
すぐに快楽に打ち震え、御柳を悦んで迎え入れる。
あの強気な目が、理性と葛藤しながら欲望の泪に濡れていくのが堪らない。
それで気持ち良くてしょうがないという声で喘ぐのだから
どの口が「突っ込みたい」などと、フザケタことを抜かすのか。

「イーから、もうテメェは大人しくしとけ。いいか?オレに突っ込むのは諦めろ。ンで間違っても他の女と…とか考えンなよ?」
「…でもっ、だって…!」

自分の淫乱さを理解していないのか、歯切れ悪く言い募る猿野は
ほとんど言い出した手前の意地と生来の頑固さで、往生際悪く御柳を見上げた。
この拗ねたような顔に御柳は弱かったが、だからと言って「さぁどうぞ」と穴を掘らせてやる程、善人ではない。
それに、さっきも言い刺したが、間違っても自分以外の女、まして男なんかにフラフラと擦り寄って行ってもらっては困る。
こう見えて、御柳芭唐16歳、こと猿野に関しては、大いに嫉妬深かったりする。
元々は淡白な性質で、来るもの拒まず去るもの追わずだったが
猿野のおかげで、ある筈もなかった激しい独占欲を自覚させられたのは、ごく最近のことだ。
適当な相手と思って付き合っていた時期があったのも、今や良い思い出である。

「何でそこまでオレに突っ込みたがる…生憎、オレはオマエが期待してるようにはいかねーぜ?」
「っだから、そんなのヤッてみないと判ンねーって…!」
「ンなことより、この状況。もっと緊張感持った方がいいんじゃね…?」
「…あっ…!」

いい加減、決着のつかない遣り取りに嫌気が差した御柳は
聞き分けのない猿野を早々に黙らせることにした。
つまり、握り込んだ急所を柔らかく撫で擦ったのである。
効果はテキメン。
文句を言っていた口からは、不意を突かれた掠れ声
踠いていた四肢は、ビクリと強張った。

「そう、イイコだ…。最初に決めたろ?オレの言うとおりにするって…」

少し卑怯だとは思うが、それはそれ、昔の約束事まで持ち出して
猿野を大人しくさせた御柳は、イヤらしく撫で回していた手をやんわりと上下に動かし
熱を持ち始めたペニスをまるで猿野自身を慰めるように優しく愛撫する。
猿野は僅かに身悶えながらも、渋々コクリと頷いて見せた。
今回は諦めたらしい。

「…っ…でも、ずっとじゃないからな…いつか絶対…、っん、お前を喘がせてやる……覚えてろよ…」
「はいはい」

どこぞの悪役の捨て台詞そのままを恨めし気に言う猿野に対し
御柳は「ワカッタワカッタ」と宥めて、膝小僧に一つキスをする。
どうやら自慢の恋人様は、まだまだ希望を捨ててないらしい。

斯くて、無事ケツ処女を守り、突っ込む権利を存続させた御柳は、観念して躯の力を抜く猿野に、ゆっくりと覆い被さった。

 

結局いつも、主導権は御柳が握ってしまう。
それは決して歪むことはない、真っ直ぐな決まり事。

 

 


【終】


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あとがき

甘…ッッッ!
ありきたりですか、スミマセ…ッ、、、orz

。いた。

2009/07/26(一日遅れた!スマン猿野…!おめでとう!!)