土曜日、午後、晴れ。
約束していた男は、毎度のことながら1時間遅れでやって来た。

 

 

 

『デートでGO!』

 

 

 

「遅い」


暢気に歩いて来た長身が、破顔して手を上げたところで、開口一番言ってやる。
時計は既に指定された時間を一回り程過ぎていた。


「いや〜ワリワリ。横断歩道渡ってるオバアチャン助けてたっしょ」
「嘘付けやコノヤロウ」


バリエーション豊富な言い訳もそろそろベタの上にマンネリ化でウザいことこの上ない。
まったくこの男の遅刻癖は、唯一の欠点にして最悪の癖だ。
人が何度注意してもダメだし時間前に充電一個なくなるくらい電話してもダメだし
パイナップル攻撃もまるで歯が立たず、何しても直らないからもう困りもので。


「もういいから、早く行くぞ!」


今更言ったってどうにもならないことぐらい判ってるし
残り僅かな時間を、さっさと本来の遊びの為に使うべく
わざわざ遠い華武からバスでやって来た、徒歩の男を乗せる為
唯一の移動手段の銀ママチャリのケツの上がった荷台を指差した。
今回漕ぐのは俺だ。
二人乗りする時、前で漕ぐのと後ろで座るのは交互と決めている。
御柳は、「遅刻してきたのに悪いね〜」なんて事を言いながら、しっかり後ろに跨った。
本当にそう思うなら、是非とも前に座って欲しいもんだ・・・。


「・・・カラオケでいんだろ?」
「おー」


どうせ頼んだって、この男が無条件で代わって漕いでくれるハズもないから
無駄な足掻きはせずに、行き先を確認する。
昨日のメールでカラオケに行きたいと言っていたから
一番近くの店でいいだろうと考えながら、些か重いペダルを踏み込んだ。

暫く無心にチャリを漕ぎ漕ぎしてると
不意に通りすがりの女子達の視線が気になり
振り返って確かめると、何事か耳打ちし合ってキャーキャーと騒いでいた。


「・・・?」


何がそんなにツボだったのかと首を傾げつつ、ああ、それもそうかと思い直す。
だって、男二人でデート、しかもチャリンコに2ケツっつー寒い構図だ。
・・・まぁ千歩譲ってそれはOKだとしよう。
問題は、後ろに座ってる男の手の遣りどころで・・・・。


「っだー!もーっ触ンじゃねーよ、バカ・・!!」


さっきから人のニャンニャンを撫でまわす
背後のバカの手を片手で払い除けようとしながら、もう片方の手でグラグラとハンドルを握る。
何度やめろと言っても、当人は「危ないから掴まってるだけ」、の一点張りで、離す気配すらない。
第一、普段ケータイ片手にチャリ運転してる様なヤツが言うセリフじゃねーよな?
この間の雨の時なんか、俺後ろに乗っけて傘差し運転してやがったんだぜ?


「、、っ、あ・・・!」


衣服越しでも、的確に弱い所を押さえて来る手管に耐え切れず
思わず熱っぽい声を洩らしてしまうと
腰を抱き込んだ御柳が、掠れた低い声で、


「そこの公園入れよ天国・・・」


その低音に弱い俺は、言われる儘に車止めの隙間を通り抜け
適当な場所で自転車の速度を落として止める。
御柳はすぐに立ち上がって後輪にカギを掛けると
俺の腕を引っ張って歩き出すから
ズルズルと引き摺られるようにして大人しくついて行くと
奥にある公衆トイレへ連れ込まれた。


「・・・ぁ、御柳・・?」


だんだん意図が掴めて来て、まさかそんな筈ないよな?と遠慮がちに名前を呼べば
その通りですが何か?とばかりにニヤリと口端を上げた御柳が
一番奥のカギ付き個室のドアを躊躇いなく開き
俺はあっという間に中に押し込まれる。


「、っちょ、マジでやるつもりか・・?!」


例え個室とは言え、いつ誰が来てもおかしくない。
御柳と違い人並みの常識とモラルがある俺は、必死に覆い被さる長身を押し返そうと踠く。


「楽にして欲しいンしょ?」


そう言われてしまえば、確かにその通りで
歩く度に布地に擦れて結構な硬さに勃ち上がっていた俺の息子ちゃんの状態は
正直、ヤバい。
それを煽り立てるようにスルリと撫で上げられたら、もう、泣くしかなくて。


「・・・っあ・・、」


待ち侘びていたかのような甘い声に自分でも愕きつつ
腰砕けになり御柳の腕にしがみ付くと、しっかりと抱き留められた。
その儘壁際に凭れ掛かるように立った姿勢でいると
慣れた手付きで外されたベルトのバックルの次に、ジッパーを下ろされ
下着ごとズボンを太腿の真ん中あたりまでずらされる。


「ッ、みやな・・ぎ、、」
「黙ってろや」
「・・・ん、・・・・っ、!」


露になった俺のモノに、御柳の指が絡みつき、ゆるゆると揉むようにした後
芯が通ってきた所で、扱き上げるかたちに切り替える。
相変わらず、巧い。
時折括れの辺りを細かく擦られると、膝が震えた。
思わず強請るように御柳の服を掴み、鼻に掛かった吐息をつくと
薄く哂った御柳が、俺の粟立った首筋に顔を埋め
チロチロと舌先で舐めつつ軽く歯を立て、絶妙な愛撫を施す。
堪らない。


「、、はっ・・・・、ぁ・・っ・・・」
「声、抑えなくていいのかよ?」


指摘され、慌てて口許に手の甲を押し付け、赤面する。
言われて初めて声を殺し忘れていた事に気付かされた。
最悪だ、恥ずかしい・・・
まるっきり俺一人溺れていたみたいだ・・・・
反して御柳はと言うと、何とも憎たらしい事に涼しい顔で
俺は悔しくなって唇を噛み、上目で睨み上げた。


「ンな睨むことないっしょ?折角教えてやったってのに、なァ?」
「・・っあ、!」


意地悪く口端を上げた御柳が、今度は耳の穴に濡れた舌を突っ込みながら
完全に勃ち上がりきった俺のモノを音がする程激しく扱き立て
空いている反対の手で亀頭やら尿道やらを、指の先で強く刺激してくるもんだから
いよいよ透明な先走りが滲み、糸を引く。
その様があまりにも厭らしくて淫らで、無意識に咽喉が鳴り、意図せず腰が揺れた。
・・・ヤバイ。
マジで、見境なくなりそう・・・・

 

―――でよぉ、ウザくねぇ?」

 

夢中になりかけていたその時、
いきなり飛び込んできた男の声に、サァと血の気が引いた。


「・・・?!」


慌てて俺は中断するよう御柳の手を掴むが
捻るようにしてあっさりと逃げられ、逆に両手を一纏めに頭上で拘束されてしまうから、愕いて目を見開く。
一体、どういうつもりなんだ・・!


「・・・おいっ、みやなぎ・・!」


小声で非難するものの、離してくれるどころか、途中止めにするつもりも毛頭ないらしく
意地悪そうに片方の口端を上げた御柳が、ワザと乱暴な手付きで俺のモノを扱き上げてくる。


「、、っ、!」


思わず短く息を吸い込んでしまい、「しまった!」と硬直すると
案の定、一人ではなく数人の男達の足音が、こっちに近付いて来た。


「なぁ、誰かシケこんでんじゃねぇ?」


冗談まじりに言われた一言らしかったが、まさにその通りの状態で
俺の心臓は正直に強く脈打ち、背筋にはさっきまでとは違う嫌な汗が流れる。
息を呑んでじっとしていると、何をトチ狂ったのか
御柳が薄く目を細め、濡れた俺の性器の先端に指を掛け、裏筋をツツ・・と撫で上げてきた。
堪らず身じろぐと、膝に溜まっていたズボンがカサカサと衣擦れの音を立てる。


「ねぇ、マジでヤッってんですかー?」


下卑た笑い声の後にガンとドアを蹴られて、思わずビクリと身を竦めると
そこで初めて御柳の動きがピタリと止まった。


「・・・・?」


不審に思って顔を上げると、悪魔のような笑みを浮かべた男が
氷点下の眼差しで、ドアの向こうにいるであろう連中を睨んでいた。
そのあまりの恐ろしさと言ったらない。
俺でさえヒィィと叫びそうになった。
どうやら、個室の状況を他人に知られるのは構わないが、邪魔されるのは許せないらしい。


「・・・ちょっと待ってろや」


一言言い置いて、俺から離れた長身が、バタンと個室を出て行く。
呆気に取られて立ち尽くして居ると、次の瞬間、

 


「ぎゃああぁああぁぁあ!!!!!」

 


天地が裂けるような壮絶な叫び声がトイレ中に響き渡った。
愕いて瞠目していると、続けて死にかけの今にも消え入りそうな、悲痛すぎる別の声が

 

「・・ホント、すんませんでした、俺らが悪かったです・・・お願いだからそれだけは、、

 

 、、、っう・・・!

 

 


そして最後に、「ヒィィィィッッッ!!!!」と、まさにさっき俺が上げようとしていた叫び声がした後
まるで何事もなかったかのように、シーン・・・と静かになった。

一体何が起こったのか想像したくもないが
そこは覗いてみたいというのが人の性。
俺は溢れ出る好奇心が促す儘に、ゆっくりとドアを開き、隙間からこっそりと外の状況を窺い見る。


「・・・・!?」


そこに広がる光景は、悲惨すぎた。
恐ろしい程ボッコボコになった野郎3人が、便器の中に顔を突っ込んで、ビクビクと痙攣している。
どうやら見てはいけないモノを見たようで、俺は音がしないようゆっくりとドアを閉め
「何も見なかった、何も見なかった、、」と自分自身に何度も言い聞かせた。


「よ、待たせたな。・・・ん?何震えてんだ??さて、続き続き〜」


何かを遣り遂げた感満載の御柳が、鼻歌でも歌いだしそうな程機嫌良く戻って来て
いそいそとさっきの続きに取り掛かる。


「・・・も、好きにしてくれ、、」


この男には敵わない・・・。
観念して躯を預けると、甘ったるいキスをくれた。

 


【終】


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2008/04/13

↑すみません、ちゃんと2009年度御柳誕生日ssは書いていたのですが
気に入らないので、昔に書いたものにて代えさせて頂きますorz

。いた。