「あーまっくにv」
「なんだよ」
「あまくにあまくにあまくに〜!」
「だからなんだって」
「愛してる」
「おう」
「・・・だから、、、」

 

 


『死んでくれる?(生きてくれる?) / 殺意の行方』

 

 


雲がうざくて堪らない。なんてことはなく、
オレのキライな太陽を隠してくれて、寧ろ感謝。
初夏が近付くこの蒸し暑い日に 
あんなものに照らされちゃ地獄ってもんだ。


「お〜い御柳ー、待ったかー」


立っているのは駅のホームに程近い小道の端。
待ち合わせなんて柄じゃないのに
愛しの誰かさんの為なら、待たされるのも何のその。
駆け寄ってくる可愛い恋人の顔を見るだけで
むちゃくちゃ癒されちゃったりして?


「で?どっか行きたいトコあるのか?」


息を弾ませ首を傾げるのが可愛くて可愛くて、
汗が一筋流れていくのを生唾飲み込んで見惚れてんの必死で隠しながら
ああ、と適当に相槌を反す。
マジ余裕ねぇのオレ。
何処に行きたいんだって聞かれても お前が行きたいとこに行けばいいし
お前が行く所なら、何処へだって行く。
それにしたって回らないオレの思考回路は返答に困り、暫く沈黙が続いた。


「ま、どこでもいいや!行こうぜ!」


そんな虚しい間を気にもせず、天国はオレの腕を引っ張ると
笑って歩き出した。
そんな些細なことに一々胸を高鳴らしつつ
引き摺られる儘に付いて行けば、ウザい筈の光が真上から突き刺さった。

 

 

「・・・カラオケでも行くか」


ぶらぶらと、行き先を言わなかった所為で歩いていたが
隣りを歩く十センチばかり小さい恋人に、
さっきから殺人的なまでの視線が集まってきて、心底気分が悪かった。
だからとは言わない、けど、こいつに視線が集まるのは我慢出来ないし
日が照ってきて、何処か涼しい場所に避難したかったのも事実。
今からでもフリーならそこそこ歌える筈っしょ?


「なーんだ、お前カラオケ行きたかったのかよ。 
 んじゃーサクッと行くぜ。たくさん歌いたいからな!」


糞暑い中、他人の視線に気付いてすらいないのか
天国は元気に笑ってそう言うと、行き成り走り出した。
未だ腕を掴まれた儘でひっ躓いてこけそうになる。


「、んな急がなくても満室じゃねーって、たぶん」
「確証はナイ!だから早く行くぞコルァッ!!」


・・・何て元気君。
オレ時々付いて行けないよ、お前のテンションに・・・。

とか思ってたらもう目的地に着いちゃったよ。
どんな速さで走ってたんだオレら。


「二名様参上!フリーでバチコイ!!」


走り込むなり受付の店員にそう怒鳴る恋人は、さも満足げに親指を立てた。
面食らう店員の顔がなんとも面白い。が、
天国の言ったことが何とか理解出来たのか少々引き気味に会員証の提示を求めた。
それから決まりきった流れで部屋番を教えられ
マイクを受け取り、カラオケは最高じゃー!とか何とか言って
猛ダッシュで先に行ってしまったせっかちさんを追い掛ける。
避暑の為に逃げ込んで来たのに、これだけ汗を掻かされるとは
流石というか何というか、無駄に疲れさせんじゃねーって話で・・・


「何やってんだー、御柳ーー!!さっさと来いやぁ!」


でも、そんな事気にならないぐらい天国のこと愛しちゃってるから?
他の客の迷惑も考えず怒鳴り散らす恋人の、額を小突いて部屋に入った。

 


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


何時間もノドを酷使した所為か声帯が引き攣ってんじゃねーかってぐらい痛い。


「いや〜、久々に歌いましたな御柳さん」


オレと違い満足げに鼻歌なぞをしている天国に連れられ公園に入る。
目的のブランコに乗った恋人は立ち漕ぎでガンガン漕ぎ始め。


「んな漕いでっと落ちるっしょ、」
「ハハ!大丈夫だっつのー!猿野様を甘く見るなー!」


とか言っちゃってる元気君もとい無茶無謀くんは、更にスピードを上げた。
もしかしてその儘飛んでいっちまって落っこちてポックリ逝っちまうんじゃねーかって、
オレは心配で心配で・・・。

心配で、不安に駆られる。
疑問が、浮かぶ。

それはいつも頭の片隅に確かにあって、
時折思考を奪い、支配するように浮かんでくる。
現状の持続へのソレと未来の不透明さへのソレ。

いつまでこの関係が続く?
この先オマエがオレから離れていかないと云う保証は?

これが出てくるともう、ハゲそうじゃねーかってぐらい不安で
死ぬんじゃねーかってぐらい怖くて。
もう、いっそこんな感情に惑わされ正気を保てないぐらいなら
その元となる原因を消してしまおうかとか、考えたり。

 

でも、
その原因の存在が、
居るおかげで、
今、
幸せで、
とても満ち足りているのも、

事実。

 

 

 

ブランコを漕ぐ天国の後ろに廻り、背中に向かって両手を伸ばした。



 

【終】


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あとがき

突き落としたのか、ただ背中を押したのか…

。いた。

2006/04/10